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GO! GO! Dr.ハインリッヒ / 妄想と寛容の双子漫才師

「もしもタイムマシンができたら、どこに行き、何をしたい? ......わたくしはね、どこにも行きたくないし、何もしたくない。どうかタイムマシンが発明されませんように」

「......今のが小説の出だしやったら、玄人をグッと惹きつけてたわ」

 Dr.ハインリッヒの漫才『タイムマシン』の掴みである。

 ボクは、けっして”玄人”ではないけどだいぶ惹きつけられちまった、と感じたのをよく覚えている。ネタを見続けていると、ところどころに文学性を感じるセリフ回しで、”あるある”の反対を行くような、”ないない”の独特の世界観を展開していき、じりじりとそのワールドに引きずり込まれていく感覚があった。Dr.ハインリッヒすげぇ! 

 で、話は変わって、「M-1グランプリ2020」。15年目のラストイヤー、準々決勝で敗れたものの、ワイルドカード枠をかけたGYAO配信で見かけたネタがこれまたワールド炸裂で良くて。

「エアー太宰治にもっと自信持って生きろ!ってビンタ」

 関西弁のお姉ちゃんが太宰治にビンタとか想像しただけでもうおもろすぎるでしょ、と最高すぎた。これを会場を見れた観客の人うらやましい。

 ネタの全体像としては、「エアー○○」というテンプレートに乗っかり、M-1グランプリ2001で笑い飯のダブルボケを彷彿させるようなボケ合戦。

 笑い飯と違うところはハイテンションで後半にたたみかけるようなスピードがない点。というスローテンポににもかかわらず、その世界観で笑わせにいくストロングスタイルなところ。 

 また、『タイムマシン』などの他のネタでもそうだけど、基本的に、どちらかがボケたときに的確にちゃんと「それは違う」「それは変だ」とツッコむわけでもなく、「なんでそうなったん?」とか「ええなぁ」と面白がる姿勢でダブルボケを成立させちゃってる感じもある。こういう相手の話の面白がり方ってじつはコミュニケーションにおいてはわりと大事なことなんじゃ? ともふと考えさせられっちゃたりしたりして。寛容性の鬼。

 さてさて、ワイルドカードは、”視聴人数”によって決定するので、”人気投票枠(つまり知名度&ファン数の影響を受ける)”として考えられたりもする。そういった意味では、テレビ露出が多い吉本勢&四千頭身らが濃厚か(あとはYouTube活動がどう影響するのか?)

 ......とか最初は考えていたけど、言うてもまだ準々決勝である。世間的な注目度の高い”敗者復活枠”ではそうかもしれないが、全体で考えると、大会自体を認知をしてる人も少なく、お笑いファンの視聴率も高いだろうし、その中でどう投票されるかで結果はだいぶ変わってくるはずだ(そういえば、去年のワイドカードは金属バットだったわけだし)。

 ということで、ワイルドカード視聴投票は25日まで。どうにかなってほしいなぁ。どのコンビが勝ち上がっても楽しくなっていくのは間違いないと思うけど、個人的には、決勝でDr.ハインリッヒか、たくろうのキョドり勘違い漫才か、トム・ブラウンの人生に1ミリも役に立ちそうにないアホネタがまた観たいっす。


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