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お金にならないと分かっているのに、FTM総合サイトを作る理由【後編】

前編はこちら

時の流れが止まったような世界


AID治療で悩み始めた私がFTMの情報を再び情報を漁り始めた時、10年前と変わらない世界がそこに広がっていました。

・ホルモン注射はどこで打てるのか
・SRSをしたいけどどうしたらいいのか
・アテンド会社はどこを選んだらいいのか
・カミングアウトをどうするか
・このパスグッズは使えるのかetc

私が10年前に悩んで収集していた情報を、同じように集めながらリアルでも誰かから話が聞きたいと悩んでいる姿がそこにはありました。

そして、FTMに向けたパスグッズの商品が変わり映えしない事にも驚きを感じました。
それこそ戸籍変更をする前くらいでしょうか、
排尿用のエピテーゼを何個か試したことがあるのですが、全く使えずにお金の無駄だったと思う事があり、未だにそういった商品が相も変わらず軒を連ねているのです。

10年という時間をどう考えるでしょう。
この10年で私たちの生活は格段に変わりました。
Amazonの翌日配送は当たり前になって、メルカリなどのCtoCビジネスモデルが一般化して、Netflixで映画が見放題、UbereatsでTakeoutの幅は広がりました。
人との関わり方もリアル、電話、メールからSNS中心に変わりTwitter、Imstagram、Youtubeなどでもっと個人を発信するようになっています。

これだけ生活に変動があった10年に、FTMの世界にはあまり変化がない事(変化が微細な事)に驚いていました。

10年も経ってたくさんの前例が出ているにも関わらず、後進の人々は同じ問題に対して個別に解決策を探さなければならないのだろうかと疑問が浮かびました。

なぜ圧倒的なFTMの総合サイトが存在しないのか


FTMの問題は個人によって様々とは言え、共通項が少なからずあります。
カミングアウト、ホルモン注射、SRS治療、戸籍変更、etc...
まだこれからも共通する問題はたくさん出てくるでしょう。私が抱えたAID治療という問題も然りです。

現在、情報収集をTwitterなどSNSでする方も多いと思いますが、SNSにおける情報収集の難しさは、範囲が限定的な上に、情報がフローしていくので探しにくく、且つ個人的な意見が大半という点にあると思います。

また、ネット検索を見てみるとFTMの課題に対して総合的に解決策を載せているサイトがない為、結局様々なサイトを訪れ情報を集めて行く作業が発生して、非常に手間です。
しかも、治療が終わり戸籍変更するとほとんどのFTMは私と同じように情報を漁らなくなるためTwitterから離れる人も多いでしょう。過去の体験者の情報のストックがない事も問題だと考えています。

ただ、今までにもきっと、情報をまとめておけば次の誰かの為になると考えた人はたくさんいたでしょうし、今もされている方もいらっしゃると思うのですが、何故、ユーザーも必要としてるはずの総合サイトがないのでしょうか。

理由は単純で、収益性を確保して継続的に事業を存続する事が出来ないからです。
ある程度いいところまで総合サイトを作れたとしても、収益性がなければ事業は継続できず途中で頓挫します。
継続出来ないと、情報が劣化していきますから、結果として古い情報になっていくし、範囲が広く情報の網羅も出来ない為、総合情報サイトになる前に途中で沈没していってしまったのではないかという見解です。

個人的な情報をまとめて情報提供するのにも非常に手間がかかりますが、n=1ではなく、もっと多くの人から情報を手に入れてまとめたり、逆にサービス提供者側の意見を聞いたりしているとその比ではないくらい時間も労力もかかります。
FTMの抱える問題は範囲が広くそれを網羅するだけでも非常に時間がかかるのです。
そこに収益性を確保できない場合、いいコンテンツを作ろうにも息切れしてしまいます。
これは私が12月から実際にYALLAH!を運営してみて体感したのですが、(せめて自分の最大限の力で)良い記事を上げようと考えれば考える程、手間と時間且つお金がかかってしまうのです。
「お金にならないと分かっていて」と言うよりも、「お金がかかると分かっていて」とタイトルした方がいいかもしれませんね。

コロナ禍になって、SNS含め良質な情報を提供してくれる人は増えましたが、やはり情報の網羅性が難しいのと、n=1の情報だけではなくいかにして多くの情報から共通項を見出して汎用性を持たせるのかという点においては、私たちも同様ですが難易度が高いのです。

私としては、FTMに関する情報を個々で発信するだけではなく有益なものはまとめていけるように、同じく情報を集約してくださっている方々と連携が取れればいいと考えておりYALLAH!の目指す姿の一つとして挙げています。

良くないと分かっている商品に頼らざる得ない状況の私たち


また、埋没している私にとって捨て置けない状況のものがあります。
それはパスグッズの前進です。
商品によってはパスグッズは10年前から変わっていません。

私は以前、排尿用エピテーゼを購入して、10回くらい練習したところで、これは外で利用する事が難しいと判断しました。
元々外出時に利用したかったのですから目的を果たさぬままお蔵入りしていますが、その商品は未だに堂々と高値で販売されています。

社会ではもう完成系だと思う商品ですら日々進化を続けています。
それなのに、未完成と言わざるを得ないパスグッズに改善が見られないのは何故なのでしょうか。

そこには、利用者と販売者(製造者)のつまり需要と供給のバランスが圧倒的に供給側が強い事が挙げられます。
利用者から販売者に進言する人が少ないもしくは進言しても影響力がない事から、製造者(販売者)が商品を改良しなくも買ってくれる環境が続いているのです。

この製造側が強い理由に、単純にFTMの全体数が少ない為、競合他社が出てきにくい事もあります。(競合他社が出るとお互いに切磋琢磨するので商品の価格含め良くなっていきます)
そして、利用者側の期待感が元々低い為、使えなくて当然でパスグッズを購入している人が多いのではないかというのは予想です。
商品の使用感などに問題点を見出したとしても、その事を企業側に直接進言する事は中々ないのだと思います。

一方、Amazonや楽天で商品を買う時には、ほとんどの方は口コミや評価を見て商品を検討すると思います。
そうなってくると販売者側は口コミを捨て置けず、それを見て改善していくという形になっていきます。

パスグッズの前進にもこの口コミが必要だと考えています。
一人の声では届かなくても、多くの声が集まれば企業も捨て置けない問題になってくると考えています。

ここを改善していきたいと考えており、
近日中にYALLAH!で口コミサイトをOPENします。
その為、多くの方に口コミが欲しい状況です。
企業の商品を良くしていくのは企業努力しかありません。企業努力を誘発するのはユーザーの声であると思っています。
後進の為にも、是非ご協力頂けると幸いです。

以下のQRコード、もしくはURLからYALLAHの公式LINEにアクセスできます。
【エピテーゼ、その他パスグッズ、アテンド、病院】の4つのカテゴリーで口コミが出来るようになっていますので、何卒宜しくお願いいたします。

エピテーゼ】◀口コミはこちら
その他・パスグッズ◀口コミはこちら
アテンド】◀口コミはこちら
病院】◀口コミはこちら

YALLAH!公式LINE

自分の為にしている事が、誰かの役に立つかもしれないくらいでいい


結局、YALLAH!を立ち上げた理由は、自分の為です。

私は私がFTMである事が嫌いです。
正直、戸籍変更が終われば悩みはなくなる(少なくなる)と思っていました。
そういう面は確かにありますが、戸籍変更が終わって埋没をしても、FTMである事で起こる問題は死ぬまで続くのだと分かった時、私はその問題を誰かが解決してくれるのを待つのはもう辞めようと思いました。

前編でもお伝えした通り、私たちは問題の前線にいるので解決策がない問題がたくさんあります。
その為に、労力がかかると知りながらも、情報に一番近いところにいて、皆と解決していきたいと考えるようになりました。

始める前は、YALLAH!する事で、誰かの為になりたい!と息を巻いていたと思います。
その時、戸籍変更が終わった時につけたノートをふと見返しました。
そこには、私の前にSRSや戸籍変更をした先達に対して感謝の言葉がありました。

「あなたたちが自分の為にがむしゃらに切り開いた道のおかげで、私はその道に沿って歩くだけで戸籍変更が出来ました。本当にありがとうございます。」

私がガイドラインに沿ってこの戸籍変更を出来たのは、私の前にその問題を解決した個人がいたからです。
その個人は後ろに続く誰かの為を思って、道を切り開いたのでしょうか。きっと自分の為に戦ったのだと思います。
それが、結果として誰かの為になったのです。

今は私もそうありたいと思っています。
誰かの為と大義名分を掲げるよりも、自分が必要だと思うからした事が、結果、誰かの役に立つかもしれないくらいでいいと思っています。

ただ、自分の為にする事と、自分だけでする事は全く違います。
私が必要だと思う事を成すために、一人の力では限界がある事も事実です。
12月にYALLAH!を立ち上げて3か月が過ぎました。
その間、出会った方はまだ20名くらいでしょうか。
出会った方々には、このような無名なサイトにご協力いただき感謝の気持ちしかありません。
そして、これからももっと多くの人と会って話てそれを伝えていく仕事を続けていきたいと考えています。
一人の100歩より、100人の一歩。
何かが動くときはきっとそうだと思っています。

長くなりましたが、これからも多くの人と協力しながらYALLAH!を育てていき、いつかFTM総合サイトと言えば「YALLAH!」と呼ばれるくらいたくさんの方と繋がって、良い情報を発信できるサイトにしていきたいと思います。
大きな事を言ってはいても、まだまだ未熟なサイトですが、長い目で応援して頂けると嬉しいです。

用語集

FTM:Female to Male transsexual。女性として出生し性自認が男性である人、または、女性から男性へ性別移行を望む人

ホルモン注射:FTMの場合はSRS手術前は男性化を進める為に、SRS手術後は体内で生成されない男性ホルモンを補充する為に投与する

SRS手術:性別適合手術。性別の不一致、性同一性障害を抱える者に対し、当事者の性同一性に合わせて外科的手法により形態を変更する手術療法。FTMの場合は、乳腺摘出、子宮卵巣摘出などがある

アテンド会社:SRS手術を行う際に病院と患者の仲介をする会社

カミングアウト:これまで公にしていなかった自らの出生や性的指向等を明らかにすること

パスグッズ:自認する性別で社会生活を希望する際に身体的な部分を補足する商品

エピテーゼ:医療用具として体表に取り付ける人工物のこと。顔面、四肢、の欠損を補う物や、様々なものがある。義手や義足も含まれる。

AID治療:不妊の原因があって妊娠できない時に、第三者の精子または卵子を用いて妊娠する治療法。

埋没:身体的な性別を公表せず、自認する性別で社会生活を希望する人

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