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暁光に導かれて - シッダルタの道第五章:永遠の光

長い歳月が流れ、ブッダは80歳という高齢を迎えていた。かつての若々しい輝きは失われていたが、その瞳の奥には、揺るぎない慈愛と、深い英知の光が宿っていた。

ブッダは、最後の旅に出発した。それは、かつて故郷を出て以来、幾度となく巡ってきたガンジス川の流域を、北へと向かう旅だった。

道中、ブッダは最後の教えを説き続けた。老いも若きも、貧しい者も裕福な者も、ブッダの言葉に耳を傾け、その教えを胸に刻んだ。

「生まれたものは必ず滅する。怠ることなく、精進せよ」

クシナガラという小さな町の郊外にさしかかった時、ブッダは激しい疲労感に襲われた。死期が近いことを悟ったブッダは、愛弟子アーナンダに告げた。

「アーナンダよ、私は疲れた。サラの木陰に、休ませてほしい」

静かなサラの木立の中に、簡素な寝台が用意された。ブッダは横たわり、静かに目を閉じた。弟子たちは、深い悲しみに包まれながらも、ブッダの最後の瞬間を見守っていた。

「アーナンダよ、悲しむことはない。私が説いてきたように、この世の全ては移り変わるものだ。形あるものは、いずれ滅する運命にある。大切なのは、永遠に変わることのない真理を、心に刻むことなのだ…」

ブッダは、静かに息を引き取った。その顔は穏やかで、まるで眠っているかのようだった。サラの木々からは、白い花が静かに舞い降り、ブッダの最期を優しく包み込んだ。

ブッダの死後、その遺骨は荼毘に付され、弟子たちによって各地に分骨された。そして、ブッダの教えは、経典としてまとめられ、弟子たちによって世界各地へと広められていくことになる。

ブッダは、この世を去った。しかし、彼の残した教えは、2500年以上経った現代においても、色あせることなく、多くの人々の心を照らし続けている。

苦しみから解放され、真の幸福を手に入れるための道。それは、ブッダが身をもって示した、永遠に変わることのない、人間にとっての普遍的なテーマなのだ。

暁光に導かれるように、ブッダの教えは、これからも永遠に、人々に希望と勇気を与え続けるだろう。

終わり

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