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言えない理由は

 何十年たってからの告白というものがある。
 黙っていないといけなくて、口に出すことができずにいた問題。言えないけれど、忘れることができない自分にとっての事件。
 最近になって、世間を騒がせているニュースを見て思った。過去にも何度か話題が出たようだが、結局「なかったこと」になった。今回はどうだろう。
 週刊誌は、取り上げてはいるが、様子見なのか大々的な取り上げ方はしていないように見える。テレビの情報番組ではニュースとして発表するが、その話題で時間をさこうとしないように見える。
 何か困ったことがあったら、きちんと話してね。家族からそう言われて育った。楽しかったこと、学校であった出来事など話はしたが、怒ったり、悲しかったり、これを話したら怒られるんじゃないかという事は言わなかった。いま、学校楽しくない。嫌と思うとか、親が心配しそうな事は言わない子供だった。
 その性格もあったのだと思う。「被害」というと大げさだけど、誰にも「話せない」と思うことが起こり、いまだに誰にも伝えてないことがある。
 小学校のころ、親類に体を触られたのだ。こたつに入っていて、私はスカートだった。足に誰かの手が当たったと思うと、そのままスカートの中まで手を滑らせてきた。とっさに足をばっと閉じたら、それ以上はされなくなった。その時は2人でいたのではなくて、他にも何人かいたはずだった。そこで、何をするのと言うこともできず、母に言おうかと何度も思ったけど、言えなかった。
 これが、全く知らない人だったら大騒ぎだが、自分のよく知っている人、近い人となると、とたんに言えなくなる。こういう性質の持ち主が、被害にあうのかもしれない。嫌な記憶は消えないし、その人に対しての不信感も消えない。
 「性被害」というのは、このようなことをされたと告白するのに勇気がいる。話す時に思い出すし、聞く人の目の色が変わるような気がするからだ。
 ここではこういう決まりだからとか、誰もそのような発言をしたことがないと知ると、1人で違うことができるかと諦めの気持ちが出てくるのかもしれない。ただ、絶対に1つしかない答えも無いと思う。どこかで吐き出すことだって、自分を守ることにつながると思いたい。


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