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ちくわの天ぷら

 そうめん、ひやむぎ。夏の定番だが、子供の頃の私は好きではなかった。暑いからご飯は入らないと母は言ったが、毎回うんざりした。麺つゆの匂いも嫌だった。
 年をとってからは、そうめんやひやむぎ、そばを夜ご飯にすることも、嫌ではなくなってきた。暑くて疲れた体に、すっと入ってくる。つけあわせのおかずは、どのような物が世の家庭で多く出されるのだろうか。
 うちは、ちくわの天ぷらをすることが多い。揚げ物が苦手だし、レシピを見ながら作るのも嫌い。一度作っても、衣のタネの分量も忘れてしまって適当に作るから、家だけで食べる天ぷらになる。ちくわに味がついているから、特に天ぷらには味付けしなくていいし、1本を切らずにそのまま使うので楽だ。そして子供たちも気に入っているので、あっという間になくなる。
 暑かった夏の日の夜、冷たいものと揚げ物を食べる楽しさが、ようやく分かってきた。作っているときは暑いのだが、食べる時の幸せの方が勝る。

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