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トットちゃんと向田さん

 黒柳徹子さんの「続窓ぎわのトットちゃん」を読んだ。「窓ぎわのトットちゃん」という本が有名なのは知っていたし、小学校の頃の学級文庫にも入っていたが、読んだことはなかった。向田邦子さんのエッセイが好きで、読んでいる中で、黒柳徹子さんと向田さんは交流があったことを知る。そこから、黒柳さんのことも気になり、彼女のエッセイも読んだことはあった。
 読んでいると、おばあちゃん子だった私には、おばあちゃんが戦争を体験したころの話をしてくれるように感じられた。空襲の話、戦争が進むにつれて物がなくなり、食べ物もなくなっていった。泣いているだけでも咎められるような空気。疎開のこと。満員の汽車のこと。その時代を生きた人にしか分からないことが伝わる。黒柳さんのお母さんが強くて、行動力があって、賢くて、柔軟性のあることに驚く。それに対して、家事をしたこともない『おばあちゃま』も印象的。
 知り合いになってりんごなど送ってもらうようになった農家の方。疎開するときは、母と子供達でその方を頼りに行き、住める場所を見つけて生活を始める。ふとした事で知り合いになり、戦争中という厳しい状況でも助けられるのだったら何でも助け合おうとする温かい人間関係も知った。戦争が終わって東京に戻ると、内職や商売で貯めたお金で新しい家を建てたお母さん。そこから黒柳さんがさらに成長し、新しいコートを何着も仕立てたのに結婚話を断った黒柳さんに「結婚詐欺」と呟くお母さんの話はこの本で2度目だけど、思わず笑ってしまった。
 黒柳さんと向田邦子さんは4歳くらい年の差があるけれど、何か雰囲気が合うものがあったようだ。向田さんのマンションによく行ったが、特に何を話すわけでもなく、自分のやりたいことをしていた、という所があった。
 向田さんのエッセイに、手袋のことを書いたものがあった。自分の気にあるような手袋が見つけられないから、どんなに寒くても買わない。そんな内容だった。
 黒柳さんの「続窓ぎわの〜」の中には、白い靴をペンキ屋さんに頼んで赤く塗ってもらった靴を履くシーンがある。ペンキは乾いてガビガビになったけれど、それでも赤い靴はお気に入りだったという黒柳さん。
 向田さんと黒柳さんの共通点のようなものを感じて嬉しくなった。
 黒柳さんは、まだまだお元気。子供の頃からのことを、細かく覚えてみえるのに驚いたけれど、後に生きる私たちに貴重なことを沢山教えてもらってありがたい。
 窓ぎわのトットちゃんは、映画化されるそうだ。見に行こうかと思っている。

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