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しずかな行列

 2つしかないATMは混んでいた。連休が始まる前の夕方しか行けなかったのだが、同じ状況の人が列を作っていた。銀行の支店がなくなっていくことが増え、何かと不便になった。通帳に記帳する時も、あとでメモするので何度も入れたりするので、時間はかかる。でも、人が並んでいると、時間をかけたくないので、いつものようにはしない。
 私の番になり、機械の前に行った。隣にいた方は、何か独り言を言っていて、私が隣に立つと、こちらを見た気がした。持っていた通帳の最後のページの印字が終わり、新しい通帳が印字されて出てくる。それにかかっている時間が長いように思われた。隣の方は立ち尽くしていて、何か機械を操作しているように感じられなかった。並ぶ人は増えてきて、空気が張り詰めているように思われた。まだ終わらないのかという空気に思われ、すぐ終わらないことに焦りを感じた。私が終わる少し前に、隣の方は立ち去った。何かトラブルがあったのだろうか。もしかすると、暗証番号を忘れてしまったのかもしれない。困っている様子は感じたが、話しかけられなかったので何もしなかった。
 私が帰る時、並んで待っていた方達の視線を冷たく感じた。並んでいたのは、全員女の人だった。仕事をしながらも、家のことを何もかもしなくてはいけない。ここで、こんなに時間をとりたくなかったのに、という雰囲気だった。
 銀行のATMまで来なくても、出来ることはある。でも、これまでやってきた通りのことを私はやってしまう。銀行の支店の数が減ってくるのは不便だが、希望していないのに変わってしまうのは仕方がない。臨機応変さが必要になってくる。
 隣にいた方は、問題は無事解決したのだろうか。後ろでイライラしながら待っていた人も、知らないふりをした私も、少し先の未来に同じようなことで困るのかもしれない。


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