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フォロワー600人到達記念作品 600文字ショートショート『あの日見た灼熱の炎』

お気に入りのマウンテンパーカーを着て出歩くには肌寒く、かと言ってダウンジャケットを羽織ったならば、たちまち汗ばんでしまう。

今年の冬はとても過ごしやすい気候である。しかし、あの人肌恋しくなる様な寒さも捨てがたいものだ。

そんな今年の暖冬とは対象的に、あの日はとても寒かった。

小学生の頃の出来事。幼ながらに、松過の日常に戻る一抹の寂しさを物憂げに感じていた。

友達の家から自転車を漕ぎ、帰路につく途中の事。偶然にも通り掛かった一反ほどの田んぼの真ん中では、とても大きな炎が燃え上がっていた。

『ボク史上、こんなにも大きな炎は見た事が無かった』

本当に炎が柱となっているではないか。その轟轟と燃え上がる灼熱の炎は力強く、それでも時折、ユラユラと躍っている様にも見えた。

先程まで自転車のハンドルを握っていた指先は、冬のイタズラにより切り落とされたかの様に感覚が無くなっていた。しかし、その灼熱の炎を見上げる顔は燃えるように熱かった。

メラメラと

不思議な感覚だった。

メラメラと

顔から体内に入り込み、このままボクの全てを焼き尽くすされる恐怖さえある。

メラメラと

いっそこのまま、学校の机に隠した憂鬱な気持ちもまとめて燃え尽して頂きたいものだ。

沈みゆく夕陽を背中に感じて、あっと言う間に過ぎ去った年末年始を糞餓鬼ながらにも懐かしく想ふ。

その灼熱の炎を目に焼き付けて、再び帰路についた。

ボクの地域では『鬼火だき』と呼ばれている。

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