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明大前で降りて、大学生と並んで食べた家系ラーメン

社会人5、6年目の頃、京王線と京王井の頭線で、渋谷の会社まで通勤していた。
さすがに学生気分は消えけていたけれど、学生時代の思い出にまだ少し後ろ髪を引かれていたような時期だった記憶がある。
仕事が忙しくて終電やタクシー帰りをすることも多かったけれど、会社で仕事をするのに疲れてしまった時は、途中で切り上げて家に持ち帰ることもあった。

ある日、会社を出て井の頭線に乗り込んだ時に、無性に家系ラーメンが食べたくなった。久しく食べていない。
CLUB Queの側にあるラーメン屋に行くかどうかを、下北沢までの数分間で頭の中で議論する。
いや疲れているし、家でまだ仕事しないといけないことを思うと、乗り換え駅の明大前までは行ってしまいたい。
スマホで調べてみると、明大前に武蔵家があることがわかった。
地元の街や、大学時代通っていた街で、散々お世話になったラーメン屋だ。

明大前で降りると、小雨が降ってきてしまっていた。
傘を持っていないので、小走りでスマホの地図を頼りにお店まで向かう。
歩道橋を渡って、明治大学のめちゃくちゃ近くに武蔵家はあった。
閉店時間が意外と早くて、ちょっとギリギリセーフという感じだった。

店内の壁には、大学生のサークルや部活仲間で撮った写真が貼られていて、自分が通っていた大学の街にあった武蔵家の雰囲気がして、懐かしかった。
しばらくあの街には行っていないけれど、今も変わらないのだろうか。

あの頃と変わらず、麺固め・味濃いめ・油多めにライスを付けて注文してラーメンをじっと待っていると、横にいた大学生の男女グループの会話が耳に入ってくる。

誰と誰が付き合っている、明日バイトだるい、授業サボろうぜ、あいつ嫌いだわ、、

ラーメンが手元に来ると、僕はそれらをBGMにがっついた。
店舗によって味は少し違うのだけれど、久しぶりに食べる家系ラーメンの味は格別だった。

数分で食べ終えて、横にいた大学生集団を置いて外に出る。
彼ら彼女らも、そのうち大学を卒業して働き始めて、いつか懐かしく思って違う街の武蔵家に足を運んだりするのだろうか。

それからまた数年経って、僕は大学時代に通っていた、武蔵家のある街に住み始めた。
たまに大学生と並んで、家系ラーメンを食っている。
もちろん注文は、麺固め・味濃いめ・油多めだ。

ラーメン食べたい / ORANGE RANGE

<太・プロフィール> Twitterアカウント:@futoshi_oli
▽東京生まれ東京育ち。
▽小学校から高校まで公立育ち、サッカーをしながら平凡に過ごす。
▽文学好きの両親の影響で小説を読み漁り、大学時代はライブハウスや映画館で多くの時間を過ごす。
▽新卒で地方勤務、ベンチャー企業への転職失敗などを経て、会社員を続ける。
▽週末に横浜F・マリノスの試合を観に行くことが生きがい。

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