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練馬の環状8号線でチャリに乗っていた高校生は高円寺に行かないそうです

環状8号線を走っていて練馬あたりを通るとむずむずする。それは高校生の頃の恥ずかしい記憶がいまだにちらつくからである。

私は高校生の頃、本格的に古着文化が好きだと自覚した。そして、古着を買うためにいろいろな街に繰り出すようになった。練馬あたりに住んでいた私は、古着屋の多い高円寺にチャリで行くようになったのだった。

しかし、中学生のころと打って変わって古着が好きだとしっかりと自覚すると、雑誌を読んで知識がためるようになる。そして、知識がたまればたまるほど、自分の今持っている洋服のだささに打ちひしがれるようになった。

そして古着が好きで買いに行きたいんだけど、おしゃれな人が集まる街に行くのが恥ずかしいという気持ちが謎にたかぶり、なんだかよくわからない感情が自分の中に渦巻くのである。

部活が休みの日、親友とチャリに乗って高円寺へ向かう。大好きな古着を買うために、今できる最大限のおしゃれをしてきたつもりだった。

しかし、この日は父から借りた真っ青のナイキのスニーカーがどうしても全体の色合いから浮いてしまっているように思えて仕方なかった。パーカーの青と微妙に彩度が違うことも気になり、練馬駅から南下して環状8号線あたりに差し掛かったときに、その違和感がピークに達した。

「なあなあ、きょうの俺の靴ってなんか変じゃない?」
「え?全然変じゃないよ〜早く洋服買いたいな〜」
「それ本心?なんかダサい気がするんだよね」
「本心だよ。うそついてもしょうがないじゃん」
「うーん」
「なに、どうしたの」
「ごめん、やっぱいかない」
「は?冗談でしょ?ははははははは」
親友はちゃりを漕ぎ進める、私は止まる。
「やっぱ、いかね〜!!!!!」
「は?なんでだよ!こら、逃げんな」 

私はチャリで家の方向に爆走した。
あとで親友と合流してゲラゲラ笑ったが、結局高円寺には行かなかった。

多分、その親友への嫉妬もあったんだと思う。親友はお兄ちゃんがかなりいけてる人で、私よりもファッションセンスが磨かれていたし、おしゃれだった。そいつと並んで高円寺に行ったら、なおさら自分のセンスの無さが目立つだろうなと思った。そういうしょうもない見栄があの頃は渦巻いていた。

今も高円寺が大好きだ。周りからどうみられるとかはどうでもよく、自分の好きな服を好きなタイミングで好きなように着ている。そして、それが一番良いのだと思っている。

でもあの環状8号線に乗って高円寺に行けなかったときの自分も、偽らざる自分なのだ。いまだに恥ずかしくはなるが、それはそれで面白い。

そして親友よ、あのときはごめんね…(笑)


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