なぜVTuberや企業のロゴの画像はWikipediaに投稿できるのか?

みなさんはふと、こんなことを思ったことはないだろうか?

なんでウィキペディアには、ロゴやキャラクター、VTuberの画像がアップロード出来るのだろう?
違法ではないのか?

と。確かに、中には本来であれば削除されるべき画像は多数存在するが、中には権利上真っ当な理由でアップロードされているものもある。
今回は、そんなウィキペディアの画像の権利の話。

そもそも、ウィキペディアの画像は基本的にウィキペディアを運営する財団が運営するメディアサイト、ウィキメディア・コモンズから引っ張ってきています(※直接ウィキペディアにあげることもできます)。
このウィキメディア・コモンズのルールに、「ライセンスフリーの画像しかあげてはならない」という規定があります。
我々が普段目にする作品には、著作権で保護されたものと保護されていないものがありますが、ライセンスフリーとは、作品を自由に使うことを認められたものと考えてください。

例えば、クリエイティブ・コモンズ(CCライセンス)というライセンス。ルールを守ればその作品を誰でも使うことができます。他には、パブリックドメインやCC0といった著作権放棄や著作権切れ、著作物と認められないものは、著作権の法の上では誰でも使用が出来るのです。
(なお、商標権や肖像権など別の権利がありますので一概にすべての画像が自由に使えるわけではありません。)

さて、基礎的なところを解説したので、「なんでウィキペディアには、ロゴやキャラクター、VTuberの画像がアップロード出来るのだろう?」という疑問に答えていきましょう。

ロゴに関しては、概ね理由が一緒で「単純な文字スタイルは著作物と認められない」という著作権法の観点から、その多くがパブリックドメインとしてウィキメディア・コモンズでは取り扱われているためです。
(個人的にはルールとしてはかなり横暴な気もします。)

中には、にじさんじをはじめ、イラストやマスコットなどがロゴに付随しており、単純な文字スタイルといえないものもアップロードされています。これらは自分の観点から見れば、日本法の「思想又は感情を創作的に表現したもの」に当たると思いますし、本来削除されるべきものであると考えています。(ただ、専門家ではないので本来どうであるかはわかりません。)

一方で、ウィキメディア・コモンズには不思議なルールがあり、著作権法で筆字は著作物として認められると規定されていることから、なぜか筆字で書かれたロゴは削除対象になっています。謎ですね。

さて、なぜVTuberの画像があげられるかの話に移りましょう。その主な原因はYouTubeにあります。YouTubeは、投稿する際にライセンスを選択して、動画を公開する設定が存在します。

画像2

ここで実は動画をCCライセンスでの公開することを選択できるのです。前述の通り、CCライセンスはこれはルールを守れば誰でも使うことができるというライセンスです。このCCライセンスで動画を公開するの設定を適用した動画のライセンスは、ウィキメディア・コモンズでファイルを公開できる設定となっているのです。

下記は実際にクリエイティブ・コモンズ表示ライセンスで公開された動画の説明文にある表記です。皆さん気づかないだけで、一度は見たことがあるかと思います。

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CCライセンスは、「この作品はCCライセンスで公開しました」という事実さえあれば、本来著作権に保護されている動画であったとしても、それが自由に使えてしまうようになってしまうのです。
この設定を誤ってか、故意につけているのかVTuberの多くがこのCCライセンスで公開する設定を適用し、その結果ウィキメディア・コモンズにスクリーンショットをアップロードされるという構図が出来上がっています。

このCCライセンスには「バージョン」というものがあって、内容の更新が何度が行われています。最新バージョンの4.0では、このCCライセンスを誤ってつけてしまった際に1週間の取り消し期間が認められていますが、YouTubeで適応されているそれより前のバージョンのCCライセンスでは、この取り消しは出来ず、永久にCCライセンスで公開されることが決定されてしまうのです。
ですから、その多くの場合ウィキメディア・コモンズの削除基準に見合ない限りはそのスクリーンショットは残り続けるわけです。

また、この点についてはいくつか問題点もあります。1つが権利問題。もう1つがコラボ。
1つ目としてあげた権利問題とは、主に企業に所属するVTuberが動画をアップロードしたり、配信をした際にCCライセンスで誤って公開してしまいまい、本来会社に帰属すべき著作権および隣接権が正しく機能しなくなるというものです。先述のとおり、CCライセンスは他者にライセンスの条件の元、好きに利用できるものであり、このライセンスを守る限りは提訴などは出来ません。ですから、権利を管理していない、いちバーチャルタレントが動画をアップロードするだけでかなり特殊かつ稀な事例になりますが、対タレント・企業の問題になりえるかも知れません。
また、2つ目の問題点コラボにおいては実害と実歴がある事象で、ヨメミがアップロードした動画がCCライセンスで公開されてしまったがために、月ノ美兎をはじめ、多数のVTuberがウィキメディア・コモンズにスクリーンショットをアップロードされる結果となってしまいました。


画像3

File:Tsukino Mito.png
(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Tsukino_Mito.png?uselang=ja)
 CC BY 3.0

コラボしたVTuberとその運営が不満を言ったところでどうすることも出来ませんし、取り返しがつきません。
ですから、もしこの文章を見ている物好きなVTuberの方がいれば、1度自分の動画説明欄を見てください。前述のようにクリエイティブ・コモンズの文字列が入っていればアウトです。必ず次回以降は意図的でないなら、ライセンスを変更しましょう。今回はここまでです。

続編↓

※本稿は、いちWikipediaおよびウィキメディアコモンズの利用者が執筆したものであり、ウィキメディア財団やYouTube意向を汲んだものではありません。また、法律の専門家ではありませんので、諸般の内容については誤りが生じている可能性があります。ご了承ください。

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