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【最新研究から考える】5つの学習ブースト戦略!

近頃、学習に関して興味深いデータがたまってきたので、ここらでまとめておきましょう。THINK AGAINでは知識のアップデートが大事!って書いてありましたけど、そのアップデートの方法すらアップデートしておくと、より効率よく学び、知識やスキルを身につけられるようになるんじゃないかと思っております。昔は寝ないで目の下にクマを作ってまで勉強するのが偉いと信じられてたけど、今ではちゃんと寝るのは大前提で起きてる時間をいかにうまく使うかの方が大事って方向にシフトしてきた、みたいに科学的にわかってきた最新の知見を取り入れてく方が賢い生き方じゃないの?って話っすね。まあすべてを実践すべき!とは言わないまでも、いくつか試し、アレンジしながら、ご自身にとって最適な勉強法を見直してもらえればと思います。

退屈しちゃうなら最初にアレを探すべし!

講義を受けるにしても本を読むにしても、途中で退屈しちゃって最後までやり遂げられない!ってのはあるあるでしょう(私もよくあります)。となると、退屈感を小さくできれば勉強や読書も続けやすくなるのでは?と考えるのは自然な流れですが、最近のデータによると、「勉強前の先入観」を見直すことで、勉強に対して感じる退屈を軽減できるかもしれません。つまり、「これからやる勉強はきっと楽しい!」って思うと本当に勉強を楽しく感じるかもよ、と。〇〇グランプリで優勝したコンビだよ!って言われると、予選敗退したコンビの漫才より面白いと感じる、みたいな現象が勉強にも当てはまるんじゃない?ってわけですな。

こちらは香港大学などの研究で示されてる話でして、研究の内容はこんな感じ。

  • 121人の学生に心理学の講義を受講してもらうが、その5分前にその講義がどのくらい退屈だと思うかを予想してもらう。また、講義終了後に実際どのくらい退屈だと感じたかを再度評価してもらう

その結果、

  • 講義に対する退屈の予想値が高いほど、実際に講義後に退屈だったと報告する確率が高かった!

ってことで、ある種の自己成就予言みたいな現象が確認されたらしい。まあ当然といえば当然な気もしますけどなかなかおもしろいっすね。

ただし慎重な人なら「それって本当に授業が退屈だっただけじゃない?」って指摘をしたくなるでしょうが、当然研究チームはそこらへんも探っております。つまり、ビデオを見る前にその講義が「最も退屈な講義」または「2015年で最も面白い講義」に選出された!って事前に知らせたうえで同様の実験を行ったらしい。その結果はというと、

  • これから退屈な講義を見るんだ、という印象を与えると、対照群に比べて強い退屈を予期し、実際講義後に高いレベルの退屈を報告した!

だったそう。やっぱり実際の学習内容にかかわらず、これから学ぶ内容はつまんなそうだなーって感じるだけで本当に面白さを感じなくなってしまうみたい。

てなわけで、どうしても退屈を感じて続かない!もっと楽しみながら学びたい!みたいな人はあらかじめこれから学ぶ内容の面白そうな部分を探すところから始めてみるといいかもしれないっすね(イラストのとこだけ目を通しておくとか)。


睡眠学習の注意点

「睡眠中に音を流しておくと記憶に定着しやすくなる!」みたいな話があるじゃないですか。データ主義の皆様であれば、ちょっと怪しい雰囲気を感じるかもしれないですけど、最近では結構この説に対してポジティブなデータもあって私もちょこちょこ試してみてたりします(あんまり効果は実感できていませんが)。

しかし最近の研究では、「睡眠学習はちょっとやり方を変えるだけで忘却の方向に働いてしまうぞ!」みたいな話になっててちょっとビビりました。記憶を強化するためにやってたことが実は真逆の方向に機能してるかもってわけですね。

で、具体的に何をやるとよくないかというと、「一対多」の情報に対して睡眠学習を実践すると記憶の低下につながってしまうみたい。つまり、have という一単語に対して「持つ」「食べる」「過去分詞」みたいな情報を睡眠学習で習得しようとすると思うような効果が得られないかもしれないらしい。より正確に言うと、「have & 持つ」みたいな一つのペアの記憶は強化されるんだけど、一方で「have & 食べる」「have & 過去分詞」といった他の組み合わせの記憶は弱くなってしまう可能性があるらしいんですな。

実際、これはヨーク大学の睡眠研究所の研究で報告されてまして、29人の参加者に「ハンマー&オフィス」「ハンマー&カルディB」のような単語のペアを学習してもらった後、その後の睡眠で(ステージ3の時に)「ハンマー」という音声を聞かせたところ、「ハンマー&オフィス」の記憶は強化されたんだけど、「ハンマー&カルディB」の方は何もしなかった場合の方がよく覚えてた、みたいな現象が確認されたらしい。つまり脳が自動的により重要そうな結びつきだけを選択しているのでは?みたいな可能性が示唆されたわけっすね。

この論文の中では、この結果はトラウマのような嫌な記憶を忘れるために使えるテクニックになるのでは?みたいなことが提案されてるんですけど、積極的に何かを覚えたい!って時にはなるべく一対一対応する情報に対して睡眠学習を利用したほうが賢明かもしれないっすね。

ちなみに、起きている時間に何も勉強していない状態で睡眠中に学習しようとしても記憶の定着は期待できないんで、寝る前に一回は頭に入れる、ということをお忘れなきよう(日中haveの意味を3つ学んだら4つ目以降は睡眠中に音声で聞いてもあんま意味ない)。


講義のスライドを写真にとる行為って記憶にどう影響するの?

覚えておきたい内容を写真にとることってよくあるじゃないですか。でも写真にとっちゃったら「あとでスマホを見返せばいいや」って思って(脳がサボって)記憶に定着しなさそうってイメージもあるわけです(いわゆる「Google効果」的な)。

そんななかで最近のカリフォルニア大学の研究では、「講義スライドの写真を撮ったら記憶への定着率が上がったぞ!」って結論になっててちょっと意外でした。

こちらは2つの実験から構成されてる研究で、みんなにはなじみのないテーマの講義を受けてもらうんだけど、「スライドの偶数ページだけ写真を撮る」「自分が撮りたいと思ったページだけ写真を撮る」「他の受講生が選んだページだけ写真を撮る」のように、全スライドの半分だけ写真にとってもらい、その後どのくらい講義の内容を覚えていたかテストしたらしい。

その結果、写真を撮ったスライドの方が写真を撮らなかったスライドに比べて正答率が高く、さらに写真と撮ったスライドが見えてるときに講師が説明した内容(スライドには書いてない)に関してもよく覚えていたんだとか。

まあ写真よりノートにとるほうが記憶に残りやすい!ってデータもあるし、すべてのスライドを写真にとったらどうなるの?みたいな疑問もあるし、まだまだ考えるべき点は少なくないわけですけど、覚えておきたい資料の写真を撮るってのはコストのわりに大きなメリットを享受できるって点で悪くない選択肢なのかもしれないっすね。

絶対覚えるように一回読んだ資料は捨てる、黒塗りにして読めなくしちゃうみたいな勉強法にあこがれた時期もありましたけど、今後は自信をもって写真に収めておこうと思います。


ホワイトノイズの最適な音量

勉強中の音としておすすめされるものはいくつかありますが、中でも有用そうな音の一つが「ホワイトノイズ」でしょう。ホワイトノイズって何!初耳なんだけど!って方は実際に自分の耳で一回聞いてみるのが一番早いかと思いますが(例えばこれとか)、堅苦しい言葉で言えば「全ての周波数で同じ強さとなるノイズ」のことっすね。

実際、ホワイトノイズは睡眠の質を高める!注意力を高める!って報告が複数あるんですが、私のように神経質な人はホワイトノイズを聞きながら作業するとなんだか疲れる!って経験をすることが多め。周りの音で気が散りがちだからホワイトノイズを聞くんだけど、結局ストレスを感じちゃうってパターンですな。これはノイズの音量が原因のことが多いんですけど、最適な音量なんてのは主観に頼るしかなくてなかなかわかりにくいわけです。

そんなところで最近の研究を見ていたら、どうやら45デシベルくらいでホワイトノイズを流すとストレスを感じづらいし認知パフォーマンスも上がるっぽいぞーって話になってて参考になりました。

こちらは南カリフォルニア大学などの研究で、39人の神経質な若者の注意力、ワーキングメモリ、創造性、集中力を測定しているんですが、課題の最中、1)45デシベルのオフィスノイズ、2)45デシベルのホワイトノイズ、3)65デシベルのホワイトノイズのいずれかを聞いてもらったらしい。その結果は、

  • 65デシベルのホワイトノイズを聞くとワーキングメモリのスコアが向上したが、同時にストレス(皮膚コンダクタンスで測定)も上昇した

  • 一方45デシベルのホワイトノイズは注意力と創造性を向上させ、さらにストレスを増加させる効果は見られなかった

だったそう。45デシベルくらいであればストレスというデメリットを抱えることなく認知パフォーマンスを向上させられるわけですな。おもろい。

ちなみに何でノイズが小さい方がいいの?って点については、

  • ある程度のバックグラウンドがあった方が重要な神経信号が目立ち、検出しやすくなる。が、バックグラウンドがでかすぎると信号が埋もれてしまう

  • ドーパミンが低いと神経のノイズが減少し、認知パフォーマンスも低下してしまう

といったところが考えられておりまして、あんまりうるさすぎると認知機能が必要なシグナルをゲットできなくなってしまうのがあまりよくないのではないか、と。ホワイトノイズを試してるのにあんまり効果を感じない!って人はちょっと音量を下げてみるとよいかもしれないっすね。

ちなみに、iPhoneであれば音量はこの方法でチェックできるみたいです(androidとかPCでも同様の機能はあるはず)。


コミュニケーションより効率のいい外国語学習法

とにかく話せ!とか大量のインプット命!とか外国語学習にはいろんな流派(?)がありますけど、最近の研究では「言葉の歴史」を学ぶのって結構有用なんじゃない?って話になってて参考になりました。

(余談ですが、学習の中でも語学学習の分野で科学的な知見が広まらないのってなんか理由あるんですかね、、?)

こちらはブリティッシュコロンビア大学などの研究で、従来のコミュニケーション重視の学習をした場合に比べて、その言葉の意味や音がどのように形成されてきたのかを学んだ方が、単語の記憶力や知らない単語に対する推測力が高くなっていたらしい。

例を挙げると、「sterben」というドイツ語は昔は「死ぬ」という意味だったけど、時間がたつにつれて特定の種類の死、つまり飢えによる死を指すようになった(したがって、今では「飢え」を意味する)、みたいな学習をした方が、数週間後のテストでも単語の意味を覚えている確率が高かったみたい。まあ普通の単語帳みたいに一対一で覚えるより面倒な気もしますけど、一回読んだらなかなか忘れないし派生語も推測しやすくなるって点では結構コスパのいい勉強法かもしれないっすね。

てことで、この英単語がどうしても覚えられない!みたいな人は一回その単語の語源を調べてみるといいかもしれないっすね(語源探しはWikipediaとかのほかにもこんなサイトも使えそうです)。

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