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【第一印象の科学②】第一印象を決める顔の特徴、好感度ギャップ、第一印象が機能しない場面、第一印象を一瞬で見抜く法etc.

引き続き、「第一印象」に関わるデータをダーッと並べておきます。ちなみに前回は、

  • あとから本当のことを教えてもらっても最初の印象は変わらない!

  • 半年たっても97%は第一印象が変わることはない?

  • 1枚の写真を見るだけで性格を見抜ける

  • 初デートの時一瞬で性格を見抜ける人の特徴

  • 写真で見た時と実際に会った時の印象の違い

といったところを紹介しましたんで、気になる方は前回のエントリをチェックしてみて下さいませー。

一番第一印象を左右する顔の特徴って何?

アムステルダム大学などの研究(R)では、「初対面の他人の性格を予想するとき、人は顔のどんな特徴を利用してるの?」ってところを調べてくれております。

まずは研究チームの問題意識を見てみると、

第一印象のいいところは、直感的に思い浮かぶことです。例えば、電車で見知らぬ人を見かけたとき、すぐに「この人は信用できない」と感じることがあります。このような直感がどこから来るのか、理解したいのです。人の外見の何が、私たちに信用できない、知的、支配的と思わせるのでしょうか

言われてみれば確かに、何も知らないくせに顔だけ見て「あの人はちょっと怪しい」って感じた時に友達も同じ感覚を感じてたりってことはありますよね。この研究ではその感覚を生み出す顔の要素って何なの?ってところを調べてくれたわけです。

これがどんな実験だったかといいますと、まず597人の顔写真を1087人に見せて、顔の魅力、異常性、童顔度合い、支配性、信頼性のほか6つの感情表現(幸せ、悲しみ、怒り、嫌悪、恐怖、驚き)にどれだけ合致しているかを評価してもらったそう。そんで人口統計学的な特徴や顔の幅と高さの比(fWHR)等を調べて信頼性と支配性を予測する要素はどれなのか?ってところをチェック。その結果、以下のようなことがわかりました。

  • 「幸せそうな顔に似ている」と評価されることが信頼感の最もつよい予測因子だった

  • また、「魅力的である」という評価とアジア人であることは信頼感を強く予測し、一方「怒っているように見える」という評価は信頼感を下げる方向に作用していた

  • 一方、支配性の観点では、「怒っているように見える」という評価が最も強い正の予測因子で、女性であることは最も強い負の予測因子だった

  • fWHRは信頼感、支配性のいずれもほとんど予測しなかった

って感じで、顔のカタチとかよりも顔を見て「どんな感情に見えるか?」っていう印象に基づいて信頼できる人か支配的な人かって判断をしていたみたい。まあ分散を見る限り性格の印象に寄与する他の要因が存在してそうだしもちろんこれだけで決まるわけではないですけども。

研究チーム曰く、

第一印象に自信を持ちすぎてはいけない。それらは簡単に、楽に思い浮かぶかもしれないが、それは私たちが他人を判断するのが得意だからではない。むしろ、私たちの過敏な感情検出システムが、他人の顔で「物事を見る」ようにさせているようです。相手が何の感情も発していなくても、口角が少し上がっているだけで微笑んでいるように見えることがあるのだ。そして、私たちは感情の状態から心理的特徴まで過剰に一般化する傾向があるため、相手が今幸せであるというだけでなく、一般的に幸福で外向的で信頼できる人であると考えるのだ

とのこと。人は、顔から確認できた一部分だけを見てその人の普遍的な性格とかまで過剰に汎化してしまいがちなんだぞー、と。初対面の相手の信頼性とかを判断したい時にはこのバイアスには注意しときたいですが、逆に言えばちょっと口元が緩んでるだけでも幸せそう→信頼できる!って評価につながる可能性もあるんで、プロフィール写真を選ぶ際なんかには参考にするといいかもっすね。


【好感度ギャップ】人は自分が持たれている第一印象を正しく判断できていない

人は第一印象だけで思ってるより他人を正確に判断できるんじゃない?ってのは前回も紹介しましたが、自分のことが絡み始めると判断がブレブレになるのは人の常。

てなところでハーバード大学などの研究(R)では、「初対面の相手が自分にもった第一印象をどのくらい正確に当てられるか?」ってところを調べてくれておりました。見知らぬ相手を客観的な視点から判断する場合には性格とかまで見抜けるかもしれないけど、自分のことが絡むと変なバイアスがかかるせいで精度が悪くなっちゃうんじゃないの?っていう話っすね。

この研究は一連の5つの実験から構成されてまして、その結果をざっくり紹介するとこんな感じです。

  • 初対面の参加者をペアにして「出身地は?」「趣味は?」といった一般的なアイスブレーカー的な質問を含む5分間の会話をしてもらったのち、全員に「会話のパートナーにどのくらい好感を感じたか?」「パートナーは自分にどのくらい好感を感じたと思うか?」といった質問に回答してもらった。

    その結果、全体的に参加者は相手が自分に対して抱いている好感を過小評価していた。実際、ビデオの分析では、参加者は相手の興味や楽しさを示す行動シグナルを考慮できていないことを示唆された

  • また、この好感度の差は会話時間の長さ、リアルでの会話か否かといった要素によらず確認され、大学のルームメイトを対象にした研究では、この差は数か月にわたって持続していた

研究チームはこの現象を「好感度ギャップ」と読んでまして、こうコメントしております。

社交や会話となると、人はしばしば躊躇し、他人に与えている印象がわからず、自分のパフォーマンスに過度に批判的になる。他の領域においては人々が非常に楽観的であることに照らして、人々が自分の会話について悲観的であることは驚くべきだ。

要するに、病気や運転技術といった文脈では「自分は人よりも健康で病気になる確率は低い」「俺の運転技術は平均以上!」って考えがちなのに、殊会話で自分が持たれている印象って問題ではより慎重かつ自己批判的な態度になるってことですな。

まあ人間関係が人生に及ぼす影響は個人的にも集団的にも甚大なんで、思い込みが真実だとわかる前に自分のことを好きだと決めつけるのを避けたいっていう心理は人類が進化する上で非常に重要だったことは想像に難くないっすね。


第一印象が機能するのはコンテクストが一致しているときだけ?

第一印象の力は強力!ってのはよく聞くところですが、ウェスタンオンタリオ大学の研究(R)では、「第一印象は特定の文脈でのみ機能するぞ!」って結論になってて面白いです。

実験の概要はこんな感じ。

  1. 被験者にはコンピュータ画面上で知らない人に関するポジティブまたはネガティブな情報を提示する

  2. その後同じ人に関する新しい情報を提示するが、最初の情報とは対立的な情報を見せる(つまり、最初にポジティブな情報を見せた人には2回目ではネガティブな情報を見せる)

  3. さらに文脈の影響を調べるため、被験者が画像の人物を見ているときのコンピュータ画面の背景色を微妙に変えてみた

って感じで、ある人物を見るときの状況をちょっと変えても第一印象の支配は持続するのか?ってのを調べたんだそうな。その結果、

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