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歌集『寝惚亭笹風艸』

スキー、登山、テニス、ほかその他のスポーツの短歌。
三重県北勢、牟婁の短歌。
母、旅、春夏秋冬、その他雑歌など日常を歌う短歌360首。
短歌の概念を日常に引き戻す試み。生きる故に歌う。


鈴鹿なる入道岳に昼寝する低き熊笹風にそよげり

スキー

妻と来て雪にまみれし焼額山(やけびたい)今この時も消えてゆく夢
風強し吹雪に頬をたたかれて切らるるごとき痛み感じき
御在所の猫の額のゲレンデを中学生がうじゃうじゃ滑る
谷回り見せんとしても踏みすぎて山回りするヘボスキーヤー
立山の極楽坂に深雪を漕ぎ分け進むラッセル滑降
氷点下一〇度雪上寒からずコブの小回り大汗をかく
八方のコブコブ斜面挑戦すままにならざるゆえ面白し
新緑の中半袖のTシャツでスキーを滑る残雪深し
雪まみれスキーはちょっと適当で景色と酒を楽しんでいる
コブコブを自分で板を走らせて滑るあたわず体遅れき
入りたきころよきコブを見下ろしてためらう膝の痛み悲しむ
夕暮れに吹雪かれ雪にまろげつつ滑り降りけり赤倉温泉
奥志賀を出でて昼食サンバレー帰り来たればすでに夕刻
初春の雪降る野辺に日は落ちてスキー走らす宿の湯恋し
暮れかかるゲレンデの上早や止まるリフトに乗れとひたすら滑る
妙高にさよならを告げ積雪の中より出づる道は圧雪
雪深き野沢の里に安らいて冷えし体を熱き湯に入る
七月も乗鞍ならば雪のあり板を担ぎて登り滑るか
急逝の師(子)の母の泣く声響くこれ以上無き悲しみの声
雪山に立たば必ず泣きぬべし亡き師思わず滑るあたわず
雪山に立たば必ず笑うべし亡き師思いてスキー楽しめ
八方のザラメの雪を蹴散らしてリーゼン下る軸線保て
ニュートラル迎え角踏み強く押せ谷回りから板を踏み込め
立山の極楽坂はオフピステ力抜きつつ横滑りする
寒中の野沢温泉晴れ渡るスカイラインをとばす喜び

登山

夕暮れの鈴鹿山脈茜なるスカイラインが来よと呼びたり
新緑の光満ちたる木木の中山桜咲く御在所の道
御在所の地蔵岩やらおばれ岩横目に見つつひたすら登る
晴れ渡る御在所山頂風強しカッパ着込んで握り飯食う
天城山万三郎は伊豆なれど一四〇〇の標高のあり
蜩(ひぐらし)の山の彼方に鳴きければ里住む人は山行きて聞く
苦労して登る山道四時間半燕岳の山頂に立つ
伯耆富士大山山頂雲の中強風すさび下山を急ぐ
一面のすすき野原の日に光り風に揺れつつ銀に輝く
伊勢湾も琵琶湖も同じ地点から眺むる高み足にて登る
曽爾高原見晴らす限りすすき原風の吹く見ゆすすき揺るれば
一面にススキ広がる高原を風吹き渡る足上げ歩け
清流の大杉谷は鮮やかにもみじ色づく歩き入りたし
雪渓に軽アイゼンを食い込ませ目指す白馬登り楽しめ

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