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Writing 20: City Living(1)

ハーバード大学のWriting 20 の課題をやってみることにした。Michael Allenが講師をつとめるCity Living のクラスである。この講義はシラバスが公開されている。アメリカの授業はどのようなクラスになるかのコースディスクリプションがシラバスの頭にあるので、まずそれを読んでみよう。

このコースでは、Vivian Maierの率直であるが啓発的な写真から始め、地域や通りのデザインがそこで行われる社会的な生活をどのように形作るかを考えます。都市は最大限の匿名性と最大限の共同体の場所であり、都市理論家がその逆説をどのように説明したのかを探求します。理想郷の明日の都市や、都市の通りを再び制御するための草の根運動も検討します。そして、Le Corbusier、Jane Jacobs、Mike Davisの古典的なマニフェストや分析と現代的な議論を一緒に読みます。このコースの最後のユニットでは、学生は都市美術作品(映画、テレビシリーズ、小説、詩集など)を選び、他の研究との対話の中で、その作品の都市生活に対する概念について論じます。学期の間に、以下のような質問を考えます:都市生活は必要な悪なのか、あるいは望ましいライフスタイルなのか?都市は気候変動やリモートワークの中で持続可能なのか?地域や学区の境界は、経済的・人種的な格差をどのように形成するのか?都市は秩序正しく計画すべきなのか、あるいは自然発展させるべきなのか?都市は自分たちの過去をどのように記憶し、将来をどのように想像すべきなのか?

なかなか楽しそうだ。18歳のフレッシュマンが大学に入学して最初にとる授業であり、課題が多くで非常に大変なコースとされている。

課題を見てみよう。

Works Studied:
Street photography by Vivian Maier
The City of To-Morrow and Its Planning by Le Corbusier
The Death and Life of American Cities by Jane Jacobs
City of Quartz by Mike Davis
Relations in Public by Erving Goffman
“The Metropolis and Mental Life” by Georg Simmel
“The Idea of a Home: A Kind of Space” by Mary Douglas
Unit 3 Options:
Roma directed by Alfonso Cuarón
The Apartment directed by Billy Wilder
Open City by Teju Cole
A Street in Bronzeville by Gwendolyn Brooks The Wire (season 1) created by David Simon

大学一年生向けなので、都市論の基本となるコルビジュエの都市論とそれに異をとなえたジェーン・ジェイコブスの都市論の二冊が課題になっている。Mike DavisのCity of Quartz: Excavating the Future in Los Angelesもまた古典で、ロサンジェルス論である

このテーマに切り込む理論として
Relations in Public by Erving Goffman
“The Metropolis and Mental Life” by Georg Simmel
“The Idea of a Home: A Kind of Space” by Mary Douglas

が上がっているがかなり特徴的だな。ゴッフマンは人間関係は即興劇のようなものであって、出会ったときのインタラクションで構成されるとした。ジンメルの“The Metropolis and Mental Life”は書籍では手に入らないが、ネットで公開されている文章で、容易に読むことが出来る。ダグラスは人類学者である。三人の研究者とも社会的相互作用に注目する学者である。

以上を踏まえて、最終課題として
Roma directed by Alfonso Cuarón
The Apartment directed by Billy Wilder
Open City by Teju Cole
A Street in Bronzeville by Gwendolyn Brooks The Wire (season 1) created by David Simon

から一つ選び、その分析があげられている。wiki によると、 Romaは、アルフォンソ・キュアロンが脚本・監督・製作・撮影・共同編集を手がけた、2018年のドラマ映画である。1970年と1971年を舞台に、メキシコシティのコロニア・ローマ地区で育ったキュアロン自身の半自伝的な視点から、中流家庭の居住型先住民(ミシュテカ)の家政婦の生活を描いている。映画は、ヤリッツァ・アパリシオとマリーナ・デ・タビラが主演を務め、メキシコとアメリカの国際共同制作である。これはNetflixで見ることが出来る。

The Apartment directed by Billy Wilder これは有名な映画だ。

Open City by Teju Coleはボストンを舞台にしたナイジェリアからの移民の小説。

A Street in Bronzeville by Gwendolyn Brooks は1945年に出版された詩集。それをもとにDavid Simonが犯罪小説として The Wire (season 1)を制作。2002年から2008年までHBOで放送されたという。

さて、このリストだけでもかなりわくわくする。都市論が錯綜する中で、個別のコンテキストで都市経験が語られ、社会的相互作用の社会学や人類学の理論をフレームワークにして考える。

課題をみてみると、

ユニット1
ヴィヴィアン・メイヤーによるストリートフォトグラフィー(http://www.vivianmaier.com/gallery)
スパーキングテキスト:Erving Goffmanによる「Relations in Public」(抜粋) ...個人は、他人が読んで予測できるものに自分自身を変えることで、適切な戦略的な場面でこのデバイスを使用することによって、彼の示されたコースが挑戦ではなく、約束または警告または脅威として認識されるときに、自己尊重を失うことなく適応できる何かになります。 - Erving Goffman、「Relations in Public」

最初のエッセイでは、都市環境の中で(人間によって形作られた景観の要素)、ヴィヴィアン・メイヤーのストリートフォトグラフィーにおいて、建設された環境が社会的相互作用をどのように形作っているかについて、オリジナルな論点を立てます。このエッセイは、階段、道路、フェンスなどの人工的な特徴が、都市環境で人々が持つ関係の種類にどのような影響を与えるかを考えさせます。少なくとも3つの写真の証拠を分析する必要があります(より多くの写真を検討することもできます)。

 なかなかいい設問だな。戦略としては、テキストを読んで都市の見方を整理して、その枠組みでメイヤーの写真を分析する。3枚以上使いななさい、ということだね。都市論の枠組みとしては機械的な摩天楼が未来の都市とするコルビュジエとそれに対抗してダウンタウンの町並みこそが都市だとするジェーン・ジェイコブス、この流れをぶっ飛ばすようにスプロールする都市を論じたMike DavisのCity of Quartzがあげられている。どんな議論を組み立てることが出来るか、資料の読み込みが楽しみな感じだ。


ユニット2
Le Corbusierによる「明日の都市とその計画」(抜粋) 「Fortress L.A.」Mike Davis(「City of Quartz」から) ジェーン・ジェイコブズによる「都市の問題の種類」(「アメリカの都市の死と生」から) エッセイ2では、このユニットの中心的な2つのテキストを比較分析して、5-7ページの論文を書きます。すべての3つのテキストは、都市空間がどのように組織されるべきか、そしてその組織を誰が担当すべきかという問題に取り組んでいます。 Le Corbusierは、都市はよく構築された機械のように設計されるべきだと主張しています。異なる機能(住宅、オフィスワーク、交通、製造など)は分離され、全体がより論理的かつ効率的に機能するようにする必要があります。ジェイコブズにとって、都市の組織は、それを形成する様々な種類のストリートライフと地域から有機的に生じるべきです。デイビスは、アメリカの都市の公共空間がますます民営化され、貧困層に対してますます敵対的になっていると主張しています。 エッセイ1と同様に、このエッセイは、証拠の分析に基づく明確で具体的で議論可能な論点に沿って導かれるべきです。エッセイ1とは異なり、他の作家の論点を評価しながら、独自の論点を展開していく必要があります。比較分析の目的は、それぞれのテキストを単独で見た場合には気づかなかった何かを発見することです。

 と課題が出ている。楽しそうだな。アメリカで学部生にアメリカ文化史を教えていて、こんな感じの問題を出したことを思い出した。何をどのように主張してその根拠はなにかを読んだ書籍の中から見つけていく。

ユニット3
このユニットでは、芸術作品(映画、小説、詩集)を選択し、他の研究との対話の中で、その作品の都市生活に対する考え方について論じます。 あなたの論文は、以下の作品のうちの1つに焦点を当てます。 アルフォンソ・キュアロン監督による「Roma」 ビリー・ワイルダー監督による「アパートメント」 Teju Coleによる「Open City」 Gwendolyn Brooksによる「A Street in Bronzeville」 David Simonが制作した「The Wire(シーズン1)」 エッセイ3では、選んだ作品を適切な文脈に置き、その学術的な議論に意義深く貢献する機会が与えられます。文脈は、批評的、歴史的、理論的、またはその3つの組み合わせのいずれかである必要があります。すべての場合において、文脈はあなたの論点を支援する必要があります。

 なるほどね。文学や映画、テレビドラマを一つ選び、自分の都市論のフレームワークをユニット1とユニット2の課題のエッセイから構築して、その視点から、具体的な作品を論じるという訳だ。とても刺激される。

さて、これが学部の作文の訓練である。僕がやるのもなんだが、ちょっとChatGPT とやってみようかな。
(続く)





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