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山籠もりしたい会社員の山本君。


出来るだけ山に籠って、静かな生活がしたい同級生の山本君はバリバリの会社員になっていた。
久々に再会した彼は、「まだ、山籠もりは出来てない」と苦笑いをした。

仕事がそこそこ出来る。ゆえに、色々と目につく。けれど、その指摘について、周りは想像が出来なかったりするので、山本君は酷く傷ついていた。
「余計なことを言いたくないな」と、落ちんでいた。
そして、そもそも言わなくていいのかもしれないと思い始めていた。

「それは本当に正しい指摘なの?」
と、僕は聞いた。
「分からない。気が散っているだけかもしれない。だからさ、まず、出来るだけ口を開かないようにって、ゲームをしている」
「ゲーム?」
「ああ、思い浮かんだことを、すぐに口にしないこと。言わないことが不親切だと思わないこと。もう少し、自分を傷つけないことに意識的になること」
「まあ、意見言って、傷つくくのなら、言わなくなるのは当然だよね。それは君の責任じゃない。言いたくないのなら、言わなきゃいい」
「うん。まあ、きっと曖昧を求めているんだと思う。目の前のゴミがあったら、隣に移動しておけば、目に見えなくなるみたいな」
「ふーん」
「だけど、今日は、二回ほど提案しちゃったんだ。あまりにも、それまずいだろって思ったから。けど、あ、しまった。提案しちゃったって、反省したんだ」
「ふふっ」
「これは、自分の弱さかもしれないって思って。僕にとっての心配事をただ、ぶつけているのかもしれない」
「なんだって、うまくいくかもしれないし、うまくいかないかもしれない。成り行きを見守るっていうのもまた、勇気がいることだよね」
「そう、今日は、七回回避して、二回失敗した。グッと我慢して、仕事に集中していたんだけれど、たまに、悔しくて、なんか、涙が出てくるんだ。僕は何を我慢しているのだろうって、凄く考えた」
「何を我慢していたの?」
「たぶん……」
「……」
「きっと、ここは離れた方が良いんだろうなって知っちゃったからさ」
「ふーん」
「山に行こうかね」
「まあ、ゲームに負けたらそうしなよ」
「そうだね、もう少し頑張って、黙ってみるよ」

僕は山本君と別れた後、彼は、その会社にいたいのか、山に籠りたいのか、どっちなんだろうと、しばらく考えた。
「まあ、幸せになりたいんだよな」
と呟き、コンビニの灯りを眺めながら、溜息を吐いた。




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奥田庵 okuda-an
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