オクノモト

好きなもの:山椒魚は悲しんだ。の書き出し、喫茶店の硬いプリン、5月の公園。 40代、…

オクノモト

好きなもの:山椒魚は悲しんだ。の書き出し、喫茶店の硬いプリン、5月の公園。 40代、(小さな)医療法人役員、毎日が少しだけ楽しければいいなと思ってる☺︎

マガジン

  • エッセイ𓆸こういう事を考えている

    何も考えず生きていくのは楽で怖いので、時々考えるようにしている。 思いつくまま。エッセイ。

  • 日々のこと

    年齢や仕事など、もろもろに折り合いを付けながら、ジタバタとした日々を。

  • 生きるのに必要、と思えるnote

    いっぱい笑えたり。いっぱい泣いたり・いっぱい学べたり出来ます。電車の中では読まない方が良いでしょう。

  • 短歌にまつわる

    短歌にまつわる事のエッセイなど

  • ショートストーリー

    短歌小説。

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それってほとんどアイラブユーじゃん。(散文)

ある火曜日。2023.7.25  クリニック(職場)の休憩室のエアコンは直した3日目にまた壊れた。  昼。灼熱の休憩室か、ついさっきまでコロナ陽性者を診ていたクリニックの片隅か、悩んでクリニックの片隅でサンドウィッチを齧る。  最高気温37度だって。  発熱外来の予約電話が鳴り止まない。  1日1人は必ず「(電話つながん無くて)来ちゃった」っていう発熱患者がいて、「遠距離恋愛中の彼氏じゃ無いんだから」って思う。ご本人に「遠距離恋愛中の彼氏じゃ無いんだから」っていっても

    • 旅に出た。ビュッフェで相手をかわいいと思ったら、たぶんもう愛しちゃってる。

      2024.9.16 旅に出た。 「旅行に行こう」って言われたのは旅行のたった4日前で、その場で夫がとってくれたホテルは、夕食も朝食もビュッフェの修善寺の温泉宿だった。 温泉宿は露天風呂付きの部屋で、食事は部屋出しが最上と若い頃は思ってきたけれど。まあそうなんだろうけど、この歳になってビュッフェ、めちゃくちゃに楽しい。 好きなものだけ食べれば良いっていうのが良いのかもしれない。 コース料理の前菜の、小箱に入ったよくわかんないちまちましたやつは(なんとビュッフェに小箱ごと

      • パピコ片方分の束縛

        2024年 盛夏 「結婚て、パピコの片方を与え続けるって約束でしょ!」 ソファーに座ってパピコ(茶)を齧っていた夫に「パピコのかたっぽちょうだい」って言ったら、奪い合いになった。 冷蔵庫までの4メートル程をふたりでドタバタと走る。 「やった!」聖火みたいに掲げたパピコを突きつけ、上記の言葉を言ったら、「そんな約束してない!」ってやけに大きな声。 「まったく、もう」やれやれと夫は呆れた風情を装い、冷凍庫からパピコをもう一袋取り出しながら肩を震わせているから、もうこれは全

        • 終戦の日に

          2024.8.15 終戦日。 暑さに負けて5日程家から出ていなかったので、リハビリがてらカフェへ。明日は嵐だって言うし。 家から少しだけ遠い、ちょっとおしゃれなカフェにて、桃のレアチーズケーキを頼んだ。おしゃれなもん食べるなって思う。 おしゃれなチーズケーキの上におしゃれに乗せられた丸い生クリームを見て、おしゃれだなぁって思うのに、祖父の戦争の話を思い出した。 いや、本当は今日は朝からずっと思い出している。 祖父の母親、曽祖母が最後に食べたのは茹で卵だったらしい。

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        記事

          [8月6日 AM 8:15]ありきたりな願い

          8月6日AM8:15 𓆸子供の頃 毎年「黙祷をしなさい」と母に起こされた。 かろうじてこじ開けた目をすぐに「つぶれ」って言うなんて、大人って本当に不可解。と思いながら目をつぶり、うとうしてしまうのが常で、半覚醒の状態で微睡んでいた。 クーラーの効いた部屋、布団と夏がけのやわらかな肌触り、そばにいる母の体温。ふわふわと幸せな記憶。 灯籠流しに参加した事がある。 元安川に浮かぶ灯籠は怖いぐらいに美しく、白とピンクの灯篭が暗い川のより黒い方に吸い込まれていった。 祖父母は

          [8月6日 AM 8:15]ありきたりな願い

          思えばあれは愛だった(スペースマウンテンが終わった日)

          ゲリラ豪雨にやられてパンツ(ティの方)までびちゃびちゃになった。 雨の中、ものの3歩で余す事なくびちょびちょになった赤いパンプス型のレインシューズを、防水すぎて水を運んでるなってぐらいにタポタポになってしまったレインシューズを、諦め気分で水の中をじゃぶじゃぶ歩いたレインシューズを、帰ってきてじゃぶじゃぶ洗った。 靴をじゃぶじゃぶ洗いながら、靴でじゃぶじゃぶ歩くのも、靴をじゃぶじゃぶ洗うも久しぶりだなぁと思う。なんだか学校の上履きを思い出した。懐かしい子供の頃の気配がした。

          思えばあれは愛だった(スペースマウンテンが終わった日)

          ボルシチを知らずに彼は死ぬでしょう

          2024年5月なかば 「あれって女の子の店でしょ」と、夫が言った。 スープストックトウキョウの好きなスープを聞いた時だ。 「行ったこと無い」という夫に最初に思ったのは、へ?(スープストック)東京なのに?店名に東京ついちゃってるし、あなたは東京出身なのに?で、「女の子の店でしょ」と言われてまた、へ?っと思った。 けれど確かにあの店で男性1人客に出会ったことが無い。かも…いや…今日いた…あれは…あれは…モデルみたいな外国人男性! 夫と付き合って16年、今となっては同じ人間

          ボルシチを知らずに彼は死ぬでしょう

          怖いこと

          2024.4月 子供の頃、死ぬのが怖かった。 怖くて怖くてたまらなかった。 あの頃死ぬ事は、ママとパパと(ついでに兄にも)会えなくなるということだった。 次に怖かったのが誘拐される事で、誘拐も会えなくなるから。 -完全に母に見せられていた火曜サスペンスの影響だったと思う。火サスは私の人間形成に大きく関わっている。- 子供の時、だから私はいつも毎夜、死神にも悪い大人にも見つからない様に、布団を頭まで被って寝ていた。布団にそっと潜り込む、両手両足を伸ばして布団の四つ隅をピ

          私きっと慣れないよ。

          ちょっと振り返って2月のこと 「ここに骨壷でいてもおかしくなかったなぁ」 炬燵で寝転がりながら父が言った。 …本当だよ 私にもリビングに骨壷が置かれている光景が容易に想像できた。 「神様がパパを返してくれた。最高のプレゼント。」 2日後が誕生日の母が涙ぐみながら喜んでいる。 同じリビングで、同じ日のことだ。 …カオスだ。 ※ 1月突如入院した父は、家族に大きな打撃と数えきれない恐れを植えつけたまま、「このままだと精神的に死んでしまう」となかば主治医を脅す形で、ま

          私きっと慣れないよ。

          頭の中の蜘蛛の糸

          2024.1月末 白い半透明の糸が1本、左右に渡っている。 その糸は時にピンと張ったり、だらりと垂れ下がったり、太くなったり千切れそうな程に細くなったり、朝露をたたえたり、カラカラに乾いたり、変容していく。 ああ、蜘蛛の糸だ。と思う。 横に張った、蜘蛛の糸。 という情景がもう1週間頭の中に浮かんでいる。「切れないで欲しいと」ずっと。ずっと。ずっと、 原因不明の発熱で父が入院してから約2週間。コロナ禍から続く面会制限で会いにいけず、かといって父のLINEに既読もつかず

          頭の中の蜘蛛の糸

          水玉の世界を生きている

          2023年、年末 あれ、あの人最近見かけないな。 職場に向かうバス停で、ふとそう思った。 朝、テレビで目にした『今年亡くなった有名人特集』のせいかもしれない。 1年を振り返るみたいに思い返す。 クリニックで働いている。 患者さんの中にはやっぱり印象的な方もいて。 祖母に瓜二つのあの方や、おばあちゃん役の片桐はいりさんにそっくりなあの方や、来たことを忘れて日に何度も来ちゃうあの方や、笑い方が可愛らしいあの方や…中には、理不尽な事で1度怒鳴られたあの人や(案外忘れないもの

          水玉の世界を生きている

          それってやっぱりアイラブユーじゃん?(散文)

          12月の、たぶん今年最後の満月の日 四分の1ほど残ってた綿棒を落っことして全部ダメにしちゃったのはクリスマス前で、ひとり大騒ぎしていたら夫に「俺、綿棒使わないしな」って言われた。 クリスマスを何日か過ぎた夜、会社から帰ってきた夫が「買ってきたよ」って渡してくれたのは綿棒だった。 毎日毎日買い忘れて帰ってくる私に気がついていたんだって。 それってやっぱりアイラブユーじゃん 「愛してるってこと?」 綿棒を両手で掲げて感動に打ち震えている私を夫は呆れ顔で見ていたけれど。

          それってやっぱりアイラブユーじゃん?(散文)

          それはもう綱渡りをする人みたいに

          12月末 すごく年の瀬。 遅い通勤、駅までの道を俯いて歩いていたら視界に靴下が入った。 靴下? ちょっと色褪せた水色地、側面に沿って白い線が一本入った靴下がすいすい視界の左上を出たり入ったりしている。 え?と思って顔を上げたら2メートルほど先で若い男の子が右足の靴を脱いで逆さまにしていた。バランスをとる靴下の右足は器用で、綱渡りの人のそれの様で、何度かすいすい、すいすーいとした後に一度も地面につくことなく、またすいっと靴に吸い込まれていって、素晴らしかった。 私だっ

          それはもう綱渡りをする人みたいに

          もう味がないガムを噛み続けるみたいに

          2023年12月、今年もあと1週間ちょっとの水曜日。 仕事帰り夫にLINEをした。途中駅にいた夫から「おんなじ電車になりそう」とLINEが返ってきて、少し嬉しい。 同じ電車になったって駅からのほんの10分弱の帰り道が一緒になるだけだ。だけなのに一緒はうれしい。 毎回毎回、なぜだか突然の一緒はワクワクするのだ。 唐突に一緒の帰り道、いつもの倍は饒舌になる私は、たぶん後ろから見たらはずんでいるだろう。相手はただ、夫なのに。 夫が乗り込む駅で本当に同じだと確認しあった、電車

          もう味がないガムを噛み続けるみたいに

          たこ焼きを丸くしてよ

          2023.12月のある週 Aさんは旦那さんの強引なところが本当に嫌なんだって。 Bさんは、旦那さんの優柔不断なところが嫌だし、Cさんは旦那さんの愚痴っぽいところがたまらなく嫌らしい。 (今週のスタッフとの会話より。) 「でも、結婚前からそうだったでしょう?」 当たり前の質問をしてみたら、結婚前はそこが好きだったんだよねってみんな口を揃えて言った。 「男らしいと感じたんだよね(強引さ)」 「優しいと思ってた(優柔不断さ)」 「可愛いなぁと思ってさ(愚痴)」だって。 「

          たこ焼きを丸くしてよ

          call and response.(明日はデート)

          2023.12.8 職場で出た今日のお弁当はオーベルジーヌだった。オーベルジーヌにはじめて出会った。 オーベルジーヌ、芸能人がよくロケ弁No.1とかって褒めているカレー屋さん、テレビでよく見る。今日のお弁当はそこのカレーで、(テレビでよく出てきたものとは弁当の形状が少し違って)立派などでかい箱に入っていた、どでかい箱は横にちょろっと紐が出ていて、紐を引いたら湯気が出て自力で温まってくれるやつ、温まる装置まで付いていて、つまり、どでかくて立派で、すごく重い。 お弁当が余っ

          call and response.(明日はデート)