怖いこと
2024.4月
子供の頃、死ぬのが怖かった。
怖くて怖くてたまらなかった。
あの頃死ぬ事は、ママとパパと(ついでに兄にも)会えなくなるということだった。
次に怖かったのが誘拐される事で、誘拐も会えなくなるから。
-完全に母に見せられていた火曜サスペンスの影響だったと思う。火サスは私の人間形成に大きく関わっている。-
子供の時、だから私はいつも毎夜、死神にも悪い大人にも見つからない様に、布団を頭まで被って寝ていた。布団にそっと潜り込む、両手両足を伸ばして布団の四つ隅をピンとして、人なんか居ませんよというフリをして、そして眠る。火サスでは毎週毎週、悪い大人が出てきていた。
たいていは寝落ちてすぐに足掻き足掻いて180度回転したりして、だいたいは顔だけに布団をのっけたまま、顔以外体ズル出しで寝ている事になっていたのだけれど。
さて私、2月にコロナに罹患して、今月(4月)のはじめに耳の帯状疱疹になった。そのすぐ後に片側の顔が動かなくなり、顔面神経麻痺と診断された。
1月は父が死にかけて、3月は母が坐骨を骨折したりして、ワオ散々な2024年だ。
顔面神経麻痺、原因としては帯状疱疹からの水痘ウイルスに重なったストレス、又は脳の疾患とのこと。
「水痘ウイルス起因だと思うけど、それほど広範囲の帯状疱疹じゃなかったのにね…脳…頭のMRI撮ったことある?」という耳鼻科医のなんとも不穏な言葉が耳に残る状態でとりあえず投薬治療を開始した。
ステロイド剤(副作用の強い薬)を処方されて家に帰り、本日分の薬を飲んでベットカバーの上にダイブ、コロリと転がった視線の先に2月に買った父へのプレゼントと、先週買った母へのプレゼントが並べられていた。具合が悪くてなかなか届けられてないやつ。
…いやいや、なんかのフラグじゃ無いんだから。(私が死んだ後プレゼントを発見して泣き崩れる父と母が頭に浮かんだ)。
水痘ウイルス起因の顔面神経麻痺ならば、治癒率が低く治らないかもしれない、表情がほぼ無くなることも十分あり得ると散々脅された私の顔面神経麻痺。けれども私のスンと動かなくなっていた顔の片側は10日のステロイド剤の服用でのろのろと動き始めた。
火曜日再診。
「びっくり、90%治ったじゃん。いやー治って無いだろうから電気流そうと準備してたんだよ。後はそのうち自然になると思うようよ」先生の驚きと共に終診となった。うれしい。
水曜日、すっかり健康体として眠りについた私は夜中に吐き気で起こされた。すんごく気持ち悪い。
木曜日、気持ち悪いまま起床、鏡をみたら麻痺した方の目が真っ赤、白目の毛細血管が切れていた。そのうえ下瞼が痙攣を繰り返す。
あなたこないだまで動かなくなってたのに今度は痙攣てどういう事よ。と思う。
仕事中、思い立って『下瞼痙攣』と調べたら、ストレス、又は脳の疾患。とまた怖い言葉が出てきた。
夜。リビングのソファーで寝落ちした夫の横にクッションを並べてそっと眠りについた。
寝室で1人で死にたく無い。
死ぬのは怖い、夫に、ついでに父にも母にも会えなくなるから。
死ぬのは怖い、けれど、死ぬのと死なれるのどっちが怖いだろうか、と1日続いた吐き気に眠れぬままふと考える。1月父が死にそうになって、私はその死に耐えられそうになかった。では夫だったら?誰にも会えなくてひとりで残されたら?
死ぬのは怖い、けれど、死なれるのはもっと怖い。
怖いこと。
死ぬこと。
死なれること。
1人で死ぬこと。
死んだことに気付かれないこと。
ひとりぼっちで生きること。
朝起きて、隣にいる私に驚いた夫に、「死んじゃうかと思って」と言ったらなんだか複雑そうな顔をされた。
リビングの床に毎晩寝るのはしんどい、けれど夫はほぼ毎晩ソファーで寝落ちする。
そんな夫にお願いをした。
毎朝仕事に行く前に寝室を覗いて欲しい。
「そっと寝室の扉を開けて確認してほしいの、わたしが生きているかいないかを」
下瞼の痙攣は治った。
吐き気は続くけど、おそらくステロイド剤の副反応だと思っている。
もう死神からも悪い大人からも隠れてないけれど。
毎朝、私は布団を顔にだけのせて体ズル出しで寝ている。
(下半身丸出しだねって夫に言われる(服は着ている))
(写真は今年の桜とわたし)
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