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それってやっぱりアイラブユーじゃん?(散文)

12月の、たぶん今年最後の満月の日

四分の1ほど残ってた綿棒を落っことして全部ダメにしちゃったのはクリスマス前で、ひとり大騒ぎしていたら夫に「俺、綿棒使わないしな」って言われた。

クリスマスを何日か過ぎた夜、会社から帰ってきた夫が「買ってきたよ」って渡してくれたのは綿棒だった。
毎日毎日買い忘れて帰ってくる私に気がついていたんだって。

それってやっぱりアイラブユーじゃん

「愛してるってこと?」
綿棒を両手で掲げて感動に打ち震えている私を夫は呆れ顔で見ていたけれど。

こういうのに弱いのだ。

女の(男女差別とか気にしないであえて言っちゃう)、心が女の、その心のやらかい所をぐりぐりしちゃうんだ。(心が男の人にこのやらかいところをがあるかは知らない。)

昔から弱かった。

チョコ嫌いの人の冷蔵庫に入っていた封を切っていないガーナチョコとか(28歳、夫とは違う人)

お菓子を食べない人の家にポツンと置かれていた一袋のラムネ菓子とか(25歳、これはまた別の人)

少し前に私が食べたがったスーパービッグチョコを夫が掲げて帰ってきた事とか(これは、夫)
(すっかり忘れていて胡乱な目で見てしまったけど)

夫が私に降らせた25本のチョコバットの雨とか(ちょっと前なぜかハマっていたやつ)


それってやっぱりアイラブユーじゃん?
って思う。(ほぼチョコじゃん、とも)

そういう景色を覚えている。
あの人がくれた指輪より、あの人がくれた花束より。
夫がくれた財布より、ネックレスより、時計より、高いシワ取り美容液より。それも覚えてるけど。

やらかいところをぐりぐりして
「それってやっぱりアイラブユーじゃん?」って思わず聞いちゃうやつがある。

ニマニマと昨日の綿棒の事を考えながら駅を出たらきれいな月が見えた。「今夜は今年最後の満月です」って言っていたのは今日の朝のニュースか昨日の朝ニュースだったな。

きれいな景色を見た時に思い出す人が(見せたいと思う人が)好きな人だよって誰かが言っていたな。
なんだかセンチメンタルな気分に浸り、センチメンタルな気分に浸っていたのに、20歳の時に「月がきれいだよ」とか「星がきれいだよ」とかいちいち電話をかけてきてきたあの人を思い出した。

フラれたなぁ。見事に。こっぴどく。

えっ?って思ったなぁ。え?月が綺麗ですよ。なのに?って。
向こうも、え?って顔してたな。え?俺たち友達だよねって。
苦い思い出。

月は相変わらず綺麗、なんだか買ってきた夫の実家に持って行くお年賀が少しだけ重くなった。気がした。


前回のアイラブユーはこちら

チョコバット25本はこちら

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