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大河内健志短編集

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#日記

あの人の思い出と現実 (『夕暮れ前のメヌエット』より)

ポケットの中に手を入れて携帯電話を取り出そうとした時、田中の家族は小津さんであることを改…

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あのメロンパンをもう一度

焼きたてのクッキーの香りが、部屋中に漂う。 香ばしくて、鼻の奧が生クリームで満ち溢れるよ…

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切り損じる小次郎(『宮本武蔵はこう戦った』より)

 徐に小次郎は、背負っている刀を下から前に回し、鐺で大店の軒先にある燕の巣をはたき落した…

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新説坂本龍馬暗殺 5話 あとがき

この作品を読まれた坂本龍馬ファンの方は、さぞかしがっかりされたことでしょう。誤って同士を…

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未来日記『パティスリー☆ハウスマウスの思い出』

 2020年9月15日(火) 晴れのち曇り  ずっと書いていない日記を今日からまた書きます。 …

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初めて自転車に乗れた日の思い出(『天国へ届けこの歌を』より)

 私が、補助輪なしで自転車に乗れた日のことは、今でも鮮明に覚えている。  補助輪を外した…

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悪魔のささやき 5-1 (『夕暮れ前のメヌエット』より)

 ゴルフ場に着くと、すでに田中と二代目社長は先に着いていた。業界新聞で見たことがあったので社長の顔は直ぐに分かった。思っていたよりも小柄で、華奢であった。  「おはようございます」  田中は、何時もの様に「すまん」と言う感じで、右手を上げて答えた。自分のことを紹介したのであろう、田中は若社長に何事か耳打ちした。  若社長は、顎を上げて、上目づかいにこちらを一瞥しただけで、手にしたクラブの握りが気になるらしく、すぐに視線を手元に落した。エネルギッシュな先代の面影は、目元と

娘が旅立った時(『天国へ届けこの歌を』より)

 「コーダミツキ」を目の前にして、話を聞いていると、一人娘のカンナと二人でいるような気が…

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坂本龍馬暗殺5-2(『龍馬が月夜に跳んだ』より)

 藤吉は、二人の脇差の下げ緒がしっかり巻かれていて、すぐに抜けない状態にあるかを確認した…

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新説坂本龍馬暗殺5-5(『龍馬が月夜に跳んだ』より)

 服部が、藤吉の強烈な羽交い絞めで落とされようとした時、抜き身の手槍を手にした大石が、疾…

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色褪せてしまうもの

4月の半ばを過ぎても、まだうす寒い。 桜の花が未練がましく残っていて、薄曇りの空のグレーに…

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無への旅立ち

耳鳴りのする静寂。吸い込まれるような暗闇。 身体が軽くなって宙に浮かぶ。そして、流されて…

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『スカイフック』あとがき

 2018年10月、大腸がんの為、2週間ほど入院していました。その間に書いたのがこの『スカ…

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『スカイフック』第12話 アメリカ兵 謎の暗号「ヨヘ17」

「おい、生きているぞ」 一人の兵隊が叫んだ。 それは、とある偶然から発見された。 墜落の衝撃で後部銃座ごと放り出されて、死んでいる米兵を数人で回収した内の一人が、その元の座席のあったであろう機体の後部を調べた時に、奇妙なものを見つけ出した。 ひしゃげた鉄の棒が絡み合っている、その下に真っ白い板が括り付けたてあるのを見た。 隙間から見ると、何やら文字らしきものが書いてある。それは、部隊名や作戦に使用する標識である可能性があるので、軍としては何としてでも調べないといけ