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宮本武蔵はこう戦った

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#勝負

異形のサムライ(小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

異形のサムライ(小説『宮本武蔵はこう戦った』より)

父、無二斎より、小倉藩の権力争いのごたごたを収める意味も含めて、「佐々木小次郎」なる剣術師範と試合をしてくれと懇願された時も、さほど気にも留めていなかった。

政治ににかかわる垢じみた剣術家など、いつものように一蹴してやればよいと思っていた。

しかし、見てしまった。

佐々木小次郎の使う剣を。

その存在自体を見てしまった。

それは、今までに見たことのない存在。

自分の範疇の中に入らない存在

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勝負あり!(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より

勝負あり!(時代小説『宮本武蔵はこう戦った』より

一刀両断、斬り下ろす。

むぅ、手応えがない。

突進してきた武蔵が急に身体をのけ反らせ、砂の中に沈み込むようにしてかわした。

一太刀で仕留めることが出来なかった。

しかし、小次郎には、まだ心に余裕があった。

武蔵は、小次郎の間合いに踏み込んで入っているが、彼が打ち込むことが出来る間合いには入っていないからだ。

愛刀長光は三尺三寸、武蔵の木刀はせいぜい二尺五寸もあるまい。

一足分の距離

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武蔵、目を覚ませ!(『宮本武蔵はこう戦った』より)

 武蔵は、目を閉じたままでいる。闇夜の中にいる。

 力の限り、砂の上を走る。

 小次郎の顔が段々と大きくなる。

 燕返しの前触れである横に払う太刀の動きがない。小次郎の太刀は大上段、頭上のまま。

 それでも走る。

 目の前が小次郎の顔で一杯になった。

 ハッ!頭上に、稲妻。

 斬られる!

 思わず目を閉じる。

 思いっきり足を踏ん張る。砂の中に両足を打ち込むように、突き刺す。体が

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