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OZの魔法使いとバニラトラックとドラゴンと俺 α版

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現代の五反田から「オズの国」へ。ロスジェネ世代の現実逃避型冒険譚。 1985年に公開された映画「Return To OZ」 小学生の頃にこの作品を見た私は、オズの国に一度で良い…
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16.城塞都市カーレ奪還

16.城塞都市カーレ奪還

 城内に突入した俺たちは、捕らわれていたサンサスの部下達を救出し、或いは、シャムの軍門に強制的に降っていたサンサス兵達をこちらに取り込みながら勢力を増やして、一気に城内のシャム勢力を席巻していった。
 シャムがいなくなった軍勢は、指揮官をなくし、ほぼ烏合の衆と化しており、俺たちは難なくシャムの残兵力を駆逐、或いは、降伏させることに成功していった。
 ところで、陸戦型バニラトラックであるキッドに、3

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15.陸戦型バニラトラック

15.陸戦型バニラトラック

「メインシステム、セントウモードキドウシマス」
 俺の後で突然、アーマードでコアな感じの戦闘ナビゲーショの音声がこだまする。
 振り向くと、キッドのボディの色々なところが割れ、引っ込み、付き出し、ものすごい勢いで、そう、
 ”変形”
を開始した。
 あっけにとられて見守る一同。
 れ、練習したんだなぁ…
 呆れとも感心ともつかないつぶやきを発する俺。
 僅か数秒の高速変形によりそこに現れたのは、ア

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14.火あぶりの刑とサイコな銃と蛇の名を持つ海賊

14.火あぶりの刑とサイコな銃と蛇の名を持つ海賊

 あー、火あぶりの刑ってこうするのね。なんか、ほんとむごいわー。
 火あぶりの刑というと、魔女狩りとか、中世の西洋の絵画とかによく出てくる奴を思い浮かべるけど、実際に見るとなんかほんとむごい。
 高々と組まれた木の十字架に、両手両足を太い鉄の杭で打ち付けられ、その下には大量の藁と木が詰まれている。
 有名なのだと、「フォローミー!」でおなじみのジャンヌ・ダルクさんですかね。
 ほとんどが、火を付け

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13.レッドアイ居住区とマグナム弾と火あぶりの刑

13.レッドアイ居住区とマグナム弾と火あぶりの刑

 カーレの中心街から少し外れた、レッドアイ達の居住区。
 石材で作られた三階建てほどの建物が長く軒を連ね、日中でも路地にはあまり日が差さない。
 人通りの少ないレッドアイ達が暮らすそのエリアはカーレの他の住人達はあまり近づかないようだ。
 スライムイーターを倒した後、俺たちはレッドアイ達が持ってきてくれた変装用のフードをかぶると、一旦彼らの居住区に隠れることにした。
 キッドは目立つので下水路に残

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12.スライムイーーターー

12.スライムイーーターー

 グレーとか灰色ではなく、その肌の色は”ねずみ色”と言うにふさわしい色あいだった。
 全身は汚物にまみれ、絶えず強烈な悪臭を辺りにまき散らしている。
 カーレの地下下水道。その高さは一〇メートル以上あるが、頭の上から生えた鼻のような呼吸器官を天井にこするようにして、その汚物の固まりのような生物はこちらに近づいてくる。
 赤く腫れた目の縁から巨大な目やにが落ちた。
 通称、汚物喰らい…スライムイータ

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11.カーレの地下の巨大下水道

11.カーレの地下の巨大下水道

「まず、カーレを逃れ、サンサス殿の城で体制を整えましょう」
「うがぁああああ~がうあー」
 目立ちすぎるヒノノ二トントラック、キッドを隠すために入り込んだ、カーレ市街地地下にある巨大な下水路。
 とんでもない悪臭が鼻をつくが、しばらくするとそれも慣れてきた。
 周囲の警戒を行いつつ、俺は一緒に逃げてきたシャムの元部下達のリーダー、フランカーと今後の行動について作戦会議をおこなっていた。
 フランカ

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10.シャム襲来

10.シャム襲来

「これを抜ければ城の北門なんだな」
 タクティカルライトで用心深く照らして、グールが飛び出してきた穴の中を見る。
 ここ通って行くのやだなぁ。また噛まれたらことだし。
「なんか他に抜け穴はないのかよ」
 クーガの方へと振り返ったときだった。
「おまえらが来るのが遅いので、こちらから来てやったぞ」
 聞き覚えのある淫靡な美しい女性の声。
 二股にわかれた階段上の広い踊り場で、キャバ嬢も更にビックリな

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9.臨死体験ならぬグール化体験からの復活

9.臨死体験ならぬグール化体験からの復活

 目を開けると、眉間の間に突き込まれようとしている鋭い剣の切っ先。
 少しでもおかしな様子を見せれば、ロータグの鋭い突きが俺の脳天を突き通すだろう。
 横で泣き叫ぶクーガと、必死で対抗魔法を唱え続けるサンサス。
 頬に当てられたその手の感触が心地よくもう少しこのままでいようかなと思ったが、ロータグの眼がマジで怖い。
「あ、ちょっとまった。大丈夫。なんない。グールになんない」
 慌ててロータグの眼を

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8.どちかと言えば、ヘルシング!!!+++

8.どちかと言えば、ヘルシング!!!+++

「ウェスカァ~~~~!!!」
 城内の広い階段下のフロア。洋館を思わせるそれっぽい雰囲気の場所で、思わず叫んでみた。
 何事かと、サンサスとクーガ、白鬢老人と兵達がこちらを見ている。
 俺はそしらぬ振りで、MP5の弾倉を交換した。
 ぶっちゃけ、城内は、怪しい洋館やラクーンシティなんかより、ひどい有様になっていた。
 ノーム王の不死者と呼ばれるゾンビ達は、頭を吹き飛ばせば死ぬ点は一緒。なんだけど、

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7.カーレ攻城戦#2

7.カーレ攻城戦#2

 コツコツとヒールの高い革のロングブーツを鳴らしながら、その魔女は俺達の前を行ったり来たりしていた。
 すらりとした均整の取れた身体に、革製のズボンと銀の刺繍の入った白いカットシャツ。赤い宝石と銀細工で装飾された革製の胸当てと手甲をつけ、腰には細身のレイピアを帯びている。
 レイピアの柄には大きめの橙水晶。剣が魔法杖としての役目も担っているとみた。
 女性にももてるんだろうなと思える男性的な美しい

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6.カーレ攻城戦#1

6.カーレ攻城戦#1

 背丈ほどもある長く黒い杖を、コツコツとならしながら、その魔女は俺達の前を行ったり来たりしていた。
 黒色の鎧を全身に身にまとい、身長よりも高いハールバード(長い柄の斧)を持った兵士達が俺たちを取り巻いている。
 俺はと言えば、後ろ手に木製の手錠をかけられ、膝をついて座らされてている。かかし娘もしかり。
 ドラゴンはといえば、これまた魔力で封じられた黄金色の籠にいれられて地面に転がされていた。
 

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5.痛い感じのかかし娘を救い出して、仲間に加える

5.痛い感じのかかし娘を救い出して、仲間に加える

 俺とドラゴンを乗せて、爽やかな朝日の中をキッドは走り出した。
 森を抜けると、また一面の麦に似た植物が地平線の向こうまで豊かに実り、風に揺れている。
 しっかし、どうしようかなぁー。あの荷台の荷物。
 バニラソングを止めることも忘れて考え込む俺。
 そんなこんなでしばらく走っていると、どこからともなく、歌声が聞こえてきた。
 この一見のどかな田園地帯をしばらく進んだところで、やつは天を見上げて陽

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4.ヒノノ二トンの憂鬱

4.ヒノノ二トンの憂鬱

 東の魔女の支配していた地域は、マンチキン達によって耕作されている豊かな穀倉地帯だった。
 ところどころに、果実や野菜も育てられている。馬や牛に似た動物も多く放牧されているようだ。
 途中、マンチキンの家に寄って、水や食料をわけてもらった。
 既に俺が、東の魔女を倒したウィッチスレイヤーという話は広まっているようで、マンチキン達は通りかかると色々な物くれたりしたので、食べるものに困るということはな

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3.バニラトラックと生命粉とメテオストーム

3.バニラトラックと生命粉とメテオストーム

 よく見ると、バニラトラックは、日野の二トントラックだった。
 トントン、トントンっヒノノの二トンてやつだな。
 フロントガラスの上には四角い目のような形で前方用のセンサーがついていて、なかなかの最新装備ぶりだ。
 ただ、フロント部分が木に突っ込んで凹んじゃってるので、動くかどうかはわからない。
 シートに上がり、とりあえずキーを回してみるが、案の定、セルの音がするだけでエンジンはかからない。
 

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