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「政治的思考」杉田敦(著)

 本の種類もいろいろありますが、どうしても私がよく読む政治社会に関する本というのは固い印象を持たれやすく、難しいものだと思われがちです。

特に歴史上の偉人の言葉の引用なんてされると途端に専門性を感じて、敬遠してしまう人もいるように思えます。

 政治というのは万人に関係することでありながら、どこかとっつきにくく難しくて面倒と思われがちです。

そういう人に向けた政治をどう見たらいいのかという入門としてこの本は利用できると思えます。

とても平易な文章で、何よりも専門用語があまり登場しません。どうしても必要なところには使用されていますが、それでも必ず用語の説明が入ります。

なんとなく興味はあるけどたくさん本があってどうするべきかと悩む人にはこの本はきっかけになりうる本だと言えます。

・政治の主役は誰なのか

 この本は思想的に日本でいう「リベラル」の発想に近い内容だと言えます。ですから、読者次第では疑問符を持つ部分もあるかもしれません。

私も同感できない部分もありますが、逆に共感できる部分もあります。例えば「政治の主役」についての部分です。

 政治に関心のある人は往々にして自分の意見、共感する意見を持っています。そして現在の政権を批判したり応援したりします。ちなみに私は岸田政権に批判的です。

ですが、私が岸田政権を嫌っているからと言って岸田政権は崩壊しません。なぜでしょう。それは岸田内閣をさらに言えば自民党を支持している人がいるからです。

 日本における主権者は国民です。国民はそれぞれ意見が違いますから、選挙になると投票先にばらつきが生まれます。

そして最も主権者に投票された議員が各選挙区で当選し、また議会の過半数を占めるだけの得票数を獲得した政党が議会第一党として与党になり、組閣します。

 一見、日常的な報道だけを見ていると岸田総理率いる岸田内閣が政治の主役と考えてしまうかもしれません。

ですが、岸田政権が政権を獲得するためには国民の支持が必要で、国民の力なしには岸田政権は誕生しないのです。

すなわち政治の主役である国民がいなければ岸田政権はありえないということになります。

 この政治の主役は国民です。だから現在の日本社会を動かす政治主体である岸田政権を選んだのは国民ということになります。

ゆえに今の日本社会に不満があっても、それは日本国民の過半数の選択によるものといえるのです。

この民主主義にとって当たり前なんですけど、意外と認識できてないことを著者は指摘しています。

 政権に不満を持つことは、政権を支持した人々にも同様の不満を持つことです。これによって個人間で討議が起きて政治的な議論が活発になります。

この流れが日本人には考慮されてないように感じます。政権を変えるのであれば個人間での建設的な対話が意外と重要なことは明らかです。

・政治からは逃れられない

 政治について考えるのは面倒です。別に考えなくても生活はできますし、考えたからと言って自身に何かメリットがあるとも限りません。

こういう点から政治と距離を置いてしまうのは現在の投票率からもわかる現実です。しかし、私たちは政治から逃れることができません。

 政治はどこにでも関与してきます。買い物をして払う消費税は国会で税率が決まります。ガソリンの値段を下げるために補助金を出すのも、減税するのも政治です。家の近くに保育園や公園ができるかどうかも政治が関わります。

例え興味がないとしても、投票した人の声に答えて社会に影響を与えるのが政治です。

 何かの無償化のために増税されて、あなたの金銭負担が増えるかもしれません。高齢者の医療費負担のために、現役世代が負担する社会保険料は増加するかもしれません。別の事業にお金を回して、保育園を増設できないかもしれません。

全て政治です。私たちは逃れられないのです。

 そして政治は参加しない人の生活に無断で介入し、参加した人の利益のために税金と称してお金を持っていきます。これが政治なのです。

どれだけ無視したくても、背後霊のようについているのです。だからこそ無視ではない参加が大切なのです。

・終わりに

 著者は八つのテーマで政治について書いています。今回、紹介したのはその一部です。国民は政治の主役として逃れられない立場にあるからこそ、政治に向き合い、自己実現のために政治を考えることができれば私は嬉しいです。

政治は別に難しくも高尚でもありません。難しいのは議員が難しく話すからです。「簡単に話せ。じゃないと投票しない」と言ったら態度が変わるかもしれません。

政治は世俗的です。誰でも参加できる壮大な権力ゲームというのがいいでしょうか。以外と学んでみると良くも悪くも楽しいものだと思います。

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