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「経済は世界史から学べ」茂木誠(著)

 本書は世界史講師として有名な茂木誠氏によって書かれた経済入門本です。

著者の専門領域である世界史の知識によって数字に頼らない経済の話が展開されるので、数字が苦手な文系の人でも経済ってどんなもんなんだろうと理解できるまさに入門本です。

・数字に頼らなくても何となくならわかる

 経済というと数字が必ずついてくると思っている人がいるかもしれませんが、そうでもないです。

経済学を大学で学ぶのであれば、数学は必要なものですが、一般人がなんとなく経済について学ぶにあたって数字はいらないんだということは本書からよくわかると思います。

 単純な世界史の中で起きた事件から、経済がどう変化して、国民の生活はどう影響を受けたのか。

経済が理由で滅んだ国の話など、中学・高校の一授業感覚で読み進めることができるので、一勉強用として用語や雰囲気を理解するには改めておすすめ本と言えます。

・株とバブル

 コロナ禍で株価が上昇していく様を見て、メディアはバブルと表現することがありました。

日本でバブルというと、平成のバブル、リーマンショックなどを思い浮かべるかもしれませんが、株式バブルというのは本当に最近の話で、世界最古のバブルはチューリップの球根でした。

 この話はおもしろいので本で読むなり、wikipediaで調べるなどして是非とも見てみて欲しい話です。

金融の話としてバブルと考えると金融へのイメージからバブルへの理解が遠のいてしまうのではないかと思うのですが、「バブル」とは単に「過大評価」に過ぎないということです。

日本社会を見ても「過大評価されてるな。この人」って思う人いませんか。その人はバブル状態にあるということです。

 この「評価」ということと「金」が最も絡んで話題性を持っているのが、株式投資だと言えます。

誰がどう見ても「そんな評価されているのはおかしい」と思えるものが、「評価されて価値のあるもの」とされている。ある日これに突然気づいて「価値はなかった」とみんなが認識したことで「本来の価値に戻る」のです。これを暴落と言います。

 じゃあ評価することが悪いよねって話なんですけど、これを利用したイギリスのネイサン・ロスチャイルド氏がめっちゃ儲けたって話やリーマンショックが起きた理由、なんで過剰に評価されたのかという話を世界史の一事件を通じて簡単に話してくれています。

 もし、学術的にこの話を知りたい人はロバート・J・シラーの「ナラティブ経済学」がおすすめです。こちらは数字と図がバンバン出てくるので、苦手な人は覚悟が必要ですね。

・世界史において最小国家が常識だった

 今でこそ「財政出動」が大事だという主張をよく目にしますが、財政出動などの「マクロ経済学」の話というのは世界史全体で見ると最近の話です。

「マクロ経済学」は1930年代にケインズによって登場したものです。それ以前にそんな話はなく、基本的に国家は必要に応じて税金を取り、政策を行うものでした。

この国家が何でも(例えば福祉)国民生活について考えることになったのは最近であって、それ以前はそうではなかったのが現実です。

 それで失敗してきた国もあるし、成功してきた国もあります。このような様々な例を世界史の事象を通して学ぶのは楽しいです。

・終わりに

 この「経済は~から学べ」はシリーズ化していて、他にも「地理」「統計」がありますので、世界史以外からの観点から経済に触れるのもありです。

入門本ですから個人の砕けた表現や見解もありますが、ここから経済というジャンルに興味を持ってもらって専門的なものに理解を進めていく入口として利用するにはいい一冊だと思います。

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