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"ニュースより相場" Ⅱ。 ー 当てにならない ”専門家” のご意見。

 しかし激しい相場だ。もうくたくた(苦笑)。いつもの事だが、SNSやニュースを探している間に ”リアル” =マーケットはどんどん進行。やはり「お金」が発するメッセージの方が遙かに価値が高い、特に今の Chaos (ケイオス、混沌)では。経済エコノミスト同様、起きてしまった事実を解説するだけの ”専門家” のご意見もほとんど参考にならない

 良い例になるので昨日(3/7)の相場を時系列で振り返って見よう。

 ①「欧米がロシアからの原油禁輸を検討」→ブレント、WTI先物が共に@130ドルを突破
 ②日経平均が急落、一時▼900円以上値下がり
 ③米10年国債が「質への逃避」で急騰、一時@1.67%に。
 ④(欧州時間)独DAX指数が一時▼4%以上急落。@12,500.-割れ。
 ⑤原油価格が売り戻し、WTI先物は@117~119ドル
 ⑥(~NY時間)DAX指数が持ち直し。米国債10年も@1.78%まで売り
 ⑦NYダウ@33,000ドル割れ、ナスダック指数も@13,000ドル割れ、DAXも再度@13,000割れ

 今回筆者が注目したのが ↑ ⑤⑥の原油、DAXが持ち直す過程SNSネット等、どこのニュースソースを探ってもこれといった材料は見当たらなかった。ここで筆者なりに考えるポイントを2つ挙げてみよう。

 1.マーケットの ”正直度” ランキング(誤魔化しが効かない順)

 1位 銀行間市場(インターバンク)短期資金
 2位 国債市場
 3位 為替市場
 4位 株式市場、社債市場
 5位 商品市場、暗合資産、その他

 2.相場を動かす2大要素

 a.将来価値(Future Value)、現在価値(NPV、Net Present Value)を変化させる政治的、経済的出来事(短期要因)
 b.売買い、ロング/ショートの差から生じる需給(中長期要因)

 昨日の例なら派手に動いたのは原油先物や株だが、注目に値するのが東京~欧州時間の米国債の動き10年金利が@1.67%まで低下したのは「質への逃避」だけでなく、株価の急落で「ひょっとして3月FOMCの利上げは中止になるのでは」という ”投機的要素” が多分に含まれる。

  だがこれは大きな矛盾だ。そもそも日経平均の急落が原油の急騰=「インフレ懸念」に端を発しているのだから「利上げ休止」はアベコベ。当然米国債は淡々と売り戻され "既定路線" に戻った。この辺りは*「現実主義者」金利市場の面目躍如といったところ。

 実はもう一つ注目は TIPS(物価連動債)BEI(Break Even Inflation Rate、予想物価率)が着々と上昇中 ↓ 。いつの間にか5年@2.70% → @3.42%、10年@2.50% → @2.83%、30年@2.20% → @2.46%に上昇信用の高いプロダクトとしては唯一「インフレヘッジ」として機能。つまりTIPSに投資した人は儲かっている

 対照的に ”引っ掛け” や紛れの多い株や原油等の商品市場だが、ここは b.「需給要因」を冷静に分析する必要がある。例えば「欧米がロシアから原油を禁輸」という話。一見 "WTI先物買い" は正解に見えるが、本当に原油価格の高騰要因だろうか

 前にも note. したが、ロシア産の原油・ガスは結局中国が安く買い叩くことになる。ここで全体の「需給」をよく考えてみると、中国は今まで買っていた原油・ガスを買わなくなる訳で、その分他国へ回る。つまり「需給要因」は中立だ。最初は価格差が出るだろうが、いずれマーケットが需給を調整する。それどころか、アメリカが欧州支援でシェールガス増産に乗り出すとすれば価格の下落要因にもなり得る。

 に関しては⑦NYダウ、ナスダックの下落が決定的。従前から「ウクライナ危機は売るための理屈」note. してきたが、それがモロに出た。株式市場のコアは「インフレ」「金利上昇」であり、2018~2021年前半までの「過剰流動性相場」の調整が主流。 ”戦争” はそれを前倒ししたに過ぎない。**2022年はやはり「どこで買うか」より「どこで売るか」

 **日本のバブルもそうだったが、上昇相場(  標題NYダウなら~2021年前半まで)では「買い」→「売り」→「買い」→「売り」を繰り返せば、多少の価格の不利も跳ね返して儲かる。これが「ガチホ信仰」を生み出した。ところが下落相場に転じれば全く逆「売り」から入らなければ「損切り」の繰り返し「買い」か「売り」しかないのに、これがなかなか難しい「気持ち」と「欲望」の抑制が鍵になる。

 そして市場の成熟と共に「現実主義者」に成りつつある為替市場(FX、Foreign Exchange)。ここにも有用な情報が詰め込まれている。

 今回顕著だったのがロシア・ルーブル。いくら等価交換取引でも「信用」を失えば誰も交換に応じてくれなくなる対ドルレートは@60台から一気に半値以下の@130~140まで急落20%程度の金利ではルーブルの「買い手」は現れず、マーケットは崩壊したまま

 他に興味深いのは人民元韓国ウォンロシア側の人民元はルーブルに吊られていかにも売られそうだが、こちらはむしろ「元高」傾向を維持。やはりあれだけ輸出が多いと「元安」のメリットの方が大きく、FXはその事実を見過ごさない”相場は望まない方向に動く” の原則通りだ。

 むしろ窮地に陥りつつあるのがウォン経済規模と金融が弱い点がロシアと似通っており決定的なのは欧米に「信用」されていないこと。中継貿易が主流なので、輸出品があっても原材料の輸入で相殺され「ウォン安」のメリットはそれ程ない。むしろドル建債務の返済やエネルギー価格の上昇のダメージが大きく、やはりFXは見逃さない

 最後に a.価値変化を及ぼす「情報」について。大手の投資銀行に在籍した経験から言うと「銀行」、特に経営陣は政府との関係が強く、表には出ない機微情報をたくさん抱えている「銀行」は経済に「血液」=「お金」を流す「心臓」であり、何だかんだ言っても国の根幹を成す。だから経営危機に直結するような「情報」は必ず共有される。今回ならロシアの「SWIFT排除」前にECBがロシア向け債権をチェックしたように万全を期すはずだ。

 そして相場を動かすのも「銀行」コンプライアンス全盛の今、機微情報の取り扱いは難しくなっているが(どこかの証券会社のように相場操縦は駄目。笑)、数百億、数千億円動かすには明確な理由も必要だ。個人レベルではこの「情報」戦に勝ち目はないので、今回のようにニュースに先んじて動く相場を ”メッセージ” として受け止めるしかない「これはおかしい!」という感情は危険で、むしろ「何かあった」と謙虚に受け止めるべき

 「損切丸」では読みやすいよう 1 note. 2,000字以内を目指しているが、さすがにこれだけ盛り沢山だと字数が増えてしまう。長文ご容赦下さい。「歴史的転換点」だから仕方が無いが、それにしても2022年は本当に疲れる

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