常に「逆の目」はある。ー @126円超えの「円安」が起こす "変化" 。
「えっ、これで@200円?」
幸運にも筆者は1ドル=@80円の時にハワイ旅行したことがある。日本にもある某ファミレス ”デOOズ” で朝食を取ったが、その時頼んだパンケーキが@2.5ドル=@200円。しかもでっかいカップでコーラ等は飲み放題。職場の同僚に「ハワイは物価が高いからなあ」と脅されていたので、とんだ肩すかし(苦笑)。結構ちゃんとしたディナーも自宅近くの焼き肉の半額程度だったと記憶している。
当時産業界は「円高で大変!」と大騒ぎだったが、海外旅行をする個人にとっては、まさに「円高様々」。 ”いい思い” をした方も多かっただろう。自国通貨の価値が上がって損する国民はいない。まして先進国なら。
さて、今日本を襲っているのが3ヶ月で▼10%近い "超高速"「円安」。これだけ速いと対応はかなり難しい。 ↑ のパンケーキが物価上昇込みで今@3.5ドルと仮定すると@441円。それでもまだ安いが(さすが消費大国アメリカ)、1ドル=@80円の時と比べれば倍以上。何だか凄く寂しい気分だ。
このベクトルを逆にして考え直してみよう。いわゆる「インバウンド」について。パンデミックで海外からの観光客が制限されているが、日本の食や文化に興味を持つ人は世界中にいる。過去に日本旅行で良い思いをした人なら再度日本に来たくてたまらないだろう。何しろ安い!
ニューヨークやシンガポールで豚骨ラーメンを1杯@2,000円以上払って食べている人達にとって、今は「円安様々」。筆者のハワイの逆現象である。
「円安」効果は何も旅行に限った話では無い。
例えば、昨日(4/13)、今日と+1,000円近く反騰している日経平均。海外には常に ”割安感” を求めている投資家も多く、年初来株価▼6.8%+円安▼9.0%=ドル建株価▼14.4%も下げている日本株は一種の "狙い目" 。
そして大事なのが「金利」だ。黒田総裁があれだけ「低金利維持(意地?)」を宣言しているのだから、株には買い安心感がある。欧米の投資家が今最も怖れているのが「利上げ」であり「金融引締」。その観点から*日本株は投資の ”ラストリゾート” として機能するかもしれない。
「日本旅行」も「日経平均買い」も「円安」が呼び込んだ「逆の目」であり、この点だけは日銀総裁の指摘通り。ただもどかしいかな、政府、経済団体を含め、肝心の国内でこの「逆の目」を生かそうとする取組が見えない。二世政治家やサラリーマン社長が多い現状ではやむを得ない点もあるが、もう少し「円安」を生かそうとする前向きな姿勢が出てきてもいいはず。
既に中国に多額の投資をしてしまった企業にとって、日本に工場を戻すというのは簡単な決断ではない。任期4~5年の間の ”現状維持” が目的なら余計にそうなる。だが、そういう「戦略」表明が「円安」を仕掛ける向きにとって一番嫌なはずで、結果的に「円安」阻止に繋がる。
やはり今この国に欠けているのは「覚悟」だ。
昨今の国際安全保障や米中対立の構図から既に ”進むべき道” は見えている。実際経済産業省も「経済安全保障」と大々的に旗を振っている。
問題は「既得権益」。
これは「昭和の失敗」でもあるが、バブル崩壊時に「既得権益」にこだわる余り対応が遅れ、日本は変わる事ができなかった。令和の今になっても、敵国認定される国々からの「既得権益」に執着する「昭和世代」からの抵抗が陰に陽に繰り広げられている。サハリンがその代表だが、いつも失敗ばかりをあげつらう日本人は本当に「損切り」が下手。
また同じ過ちを繰り返すのか...。
日本市場の衰退を外資で働く日本人として眺めてきた筆者としては忸怩たる思いもある。今の「円安」を見るだに、今度こそラストチャンスだろう。
付き合いが長かった分日銀、財務省に対しては、期待も込めて厳しめの note. になるが、基本的に彼らは筆者など足元にも及ばない優秀な、いわゆる「エリート」。当然「損切丸」ぐらいの理屈は理解している。ただ、その "賢さ" 故に、生き馬の目を抜く官僚組織内の "泳ぎ方" も熟知しており、その能力を生かせるかどうかは ”上司” 次第。
”上司” と言えば大臣であり政治家。そしてその政治家は経済団体や大企業の方を向いて政策立案をしている。つまり国のトップが腹をくくらない限り、その能力は生かせない。「財政健全化至上主義」も「低金利政策」も「昭和政策」→ ”現状維持” の象徴であり、30年に渡る「デフレ」を助長してきた。その帰結が今の「円安」である。
タイミングとしては8百万人に及ぶ「団塊の世代」が後期高齢者入りする2022年はまたとない変革のタイミング。ここに歴史的なパンデミックと侵略戦争が重なったのは偶然ではない。幸い、最近チラホラ見かけるZ世代は全くしがらみ=「既得権益」がなく、スパッと「正論」を言う。聞いていて気持ちがいいぐらいだ。この世代が台頭して、上手く国の運営が「供給側」から「需要側」にシフトするのを願うのみだ。
世の中も相場もマーケットも常に「逆の目」はある。下げ相場で買いを狙う向きはいつでもおり、ポイントは ”備え” が出来ているどうか。底値で買えるだけの「お金」を準備している人と、そこで売って「お金」を作らなければいけない人では雲泥の差が出る。「円安」もそうだが、マーケットには二面性があり、 ”裏の顔” に気付けるかどうかが勝負の分かれ目。
筆者のように20年以上も「金利」ばかりやっていると、どうしても疑い深くなり時に "天邪鬼" となってしまうが、それも生き残りの術だった。大事なのは Fact Finding (事実確認)、そして Curiosity (探究心)。そして更に大事なのはへこたれない心。今日も明日も相場は続くのだから、一度の失敗に懲りず勝つまでチャレンジすること。しつこい人が最後に勝つ(笑)。
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