続・日本の「インフレ」の正体。ー 「家賃」が決め手の「低インフレ」。
日本の「インフレ」の正体。|損切丸 (note.com) の続編。今回は「家賃」に焦点を当てる。
分譲マンションの高騰とともに賃貸マンションの家賃も上昇しており、2023年5月の首都圏・分譲マンション賃料は@3,498円/㎡(前月比+0.1%)と7ヵ月連続で上昇、東京都は@4,037円/㎡(+1.6%)と8ヵ月連続で上昇し、集計開始以降で初の@4,000円/㎡の大台に達した。
「コロナ危機」の最中、2020~2022年までは「空室率」が上昇し、引越が敬遠されたこともあって一時期「家賃」が下落していたが、ここに来て反騰。負担が増える「家計」には一大事ではある。
こういった背景から比較的「家賃」の低い都営や公営の賃貸住宅が人気化しているようだ。だが、実際には競争が激しい上収入制限があったりして入るのは相当難しい。頭を悩ましているご家庭も多かろう。
激しい「インフレ」に襲われているアメリカと比べ、日本が比較的穏やかな物価上昇で済んでいるのは、実はこの低い「家賃」が大きい。
その主な要因は2つ:
実際アメリカでは住宅の供給が総世帯数に追い付いておらず、日本と違い需給面で「家賃」が上がりやすい。加えて賃借人= "大家さん" の権利が確保されているため現在のアメリカのように「家賃インフレ」に陥りやすい。
株でも不動産でも「想定利回り」に引き直して収支を比較する方法は:
株なら「配当金」が「収入」に辺り業績と連動する。儲かって「お金」が余れば、今多くの日本企業が行っているように「自社株買い」を増やし、結果的に株価が上がる。配当コストも減らせるため一石二鳥である。
アパート経営やJ-REITの税制の違い等については 「インフレ」投資研究。 ー 「賃貸経営」と「REIT」(不動産投資信託)|損切丸 (note.com) をご参照願いたいが、不動産投資にとって決定的に重要なのがこの「家賃」である。
投資家や "大家さん" にとって「収入」が増えるのはもちろんだが、結果として不動産価格が上がるのが大きい。例えば「想定利回り」が同じ@4%でも「家賃収入」が上がれば計算上「価格」が上がる。つまり売り易いし、キャピタルゲイン(売却益)が出る。
逆に言えば日本では「家賃」が上がらないため高騰する株価と比較してもJ-REITの上値も抑えられ ↓ 「想定利回り」が低くなる現象が起きている。だから日銀の「利上げ」に必要以上に敏感になってしまう。
仮に日本でも「家賃インフレ」が起きると:
アメリカのように「預金」や「国債」の金利が@4~5%になれば別だが、この循環に入れば、+1~2%程度の「利上げ」で不動産価格がガタガタ言うことはなくなる。これは株価も同様。
あとは「少子化」や住宅供給過多(含.空き家問題)による余剰をどう吸収するか。30年程前、ロンドンの不動産価格が中東のオイルマネーで押し上げられた事を参考にすれば、やはり国外の「お金」ということになる。東京なら中国やアジアの「富裕層」になるが、「東京」は別世界? ー もはや「日本」の物差しでは測れない。|損切丸 (note.com) で、既にその動きは始まっている。
現在の様に「値上げ」「増税」に「賃上げ」が追い付かない状況で「家賃」まで上がれば家計は火の車。だが 「行って欲しくない方に動く」相場の原理。ー 「損切り」が動かすマーケット。|損切丸 (note.com) も1つの真実。あとは「お給料」が上がってくるまでどう凌ぐかの勝負だ。
筆者は決してアメリカ礼賛主義ではない。サンフランシスコで最低月30万円は出さないとまともなアパートに住めないのも極端過ぎるし、チップも@10%から@20~25%に「インフレ」しているのも異常だ。
だが ”理想の社会主義国” 日本は 上がらない「家賃」が救い? - 何でもかんでも "むしり取る" ことに奔走する今の日本は異常。|損切丸 (note.com) 。 これでは「インフレ」はマイルドでも、次を担う若い世代が将来に希望が保てなくなる。まるでコストカットばかりで社員のやる気が失せていく老舗企業のようで、優秀な人材から辞めていく。
結局 物価も賃金も上がる「アメリカ型」と、どちらも上がらない「日本型」はどちらが幸せなのか。|損切丸 (note.com) という選択になるが、どちらも両極端。上手く真ん中ぐらいに寄せられないか。それでも「お金」主義の蔓延したアメリカより「預金者」などの「投資」行動で社会変化を起こせる日本の方が可能性は高い。日経平均や不動産の高騰にはそういうニュアンスも含まれている。あとは日銀が "普通" に戻るのを待つだけである。
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