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物価も賃金も上がる「アメリカ型」と、どちらも上がらない「日本型」はどちらが幸せなのか。

 アメリカの長期金利が上がらない

 元・金利トレーダーとしてずっと気になっているが、CPIが年率@+6.2%に達している状況では本当に “Conundrum“ (謎)。だが「金利」= ”リアル” が持論の筆者としては、これを現実と受け止めるしかない。

 今回は、昨今論じられるようになった「貧しくなった日本」についての一考察。特に「上がらない賃金」について、この20年で倍近くになっている「アメリカ型インフレ経済」 と比較してみる。

 「今年に入って肉の値段は3倍近く。このままだとクリスマスにも響くけど、ご馳走がないクリスマスなんてね…」(NY在住者)

 20年近く給料の上がっていない日本人にとって、賃金が継続的に上昇しているアメリカ人はうらやましい限り。だが生活実態を覗いてみると、必ずしも ”バラ色” ではない*「インフレ」局面で「賃金」は「物価」に遅れて上昇することがほとんどで、しかも上昇率で下回る

 *日本のバブル期がこれに該当する。何もしなければ “持ち出し” が増えるので:①株など「インフレ」に先行して値上がりするものに投資②「借金」をして不動産を買うなど「お金」の目減り効果を利用、等等対策が必要。「貯金」だけでは苦しくなる一方だ。

 しかもアメリカでは「貰える人」「貰えない人」がはっきり別れている10%を下回る富裕層が贅沢な暮らしを営む一方、毎日ファストフードしか食べられない ”多数” の貧困層にとって「インフレ」は悪夢でしかない

 一方の「日本型デフレ経済モデル」↓ 。

 30年近く苦しんできた日本人にとって「デフレ」には “ウンザリ” だが、1,000兆円もの「預金」を抱えてきた日本全体では、実は「理想的」物価の下落で「預金」資産は膨らみ続け賃金下落で苦しんだ労働者が ”多数” いた反面、実はいい思いをした企業、個人もたくさんいる。皮肉だが、今も積上がる「預金」を見ていると、未だに日本人は「デフレ」=「値下げ」を望んでいるように見えてしまう

 だがここに来て「コロナ危機」を発端とする「米中対立」「サプライチェーンの分断」を主因とした「インフレ時代」が到来貧富の差拡大の ”犯人”とされてきた「グローバリゼーション」の反動も大きい(2020.4.20. コロナ後の世界 Ⅱ - これから起こりそうなこと。|損切丸|note ご参照)。

 「新冷戦時代」の到来と言われるが、今後世界は米中2つの陣営に真っ二つに裂かれることになるだろう。「脱炭素」の後押しもあり ”価格効率” の悪い世界に置かれる。そうなると「給料の上がらない」 “預金大国” 日本の苦境は深まっていくばかりだ。

 「インフレ」レースで ”周回遅れ” の日本が徐々に追いつくのが筆者の「メインシナリオ」後々「円安」は「安い日本」の買い要因として作用し、物価を押し上げると想定している。ただ、長期的に1つ気をつけなければいけないのは「人口動態」だ。

 分り易く「住宅」で考えて見よう。「日本型モデル」↑ も「インフレ型」に転換すれば「持家」が増え「値段」が上がる。だが「少子高齢化」で人口減になると「住宅」の買い手は減り、「賃貸」物件も空き部屋が増える。それは取りも直さず「価格」「家賃」に下押し圧力となり得る

 筆者はその ”穴” は東京など都市部を中心に海外からの需要で埋められると想定しているが、気になるのは「少子高齢化」が日本だけの問題ではないことアジアでは中国、韓国が日本に追随すると見られており、そうなると筆者の「メインシナリオ」は崩壊(苦笑)。その意味で、中国の不良債権問題には大いに関心がある。

 「人口動態」アジアのみならず、「移民」で人口減を補っているアメリカも欧州も同様「移民」については “BREXIT” に象徴されるように多くの社会問題を引き起こしており、先進国もそこまで「お金」に余裕がなくなっている。そういう背景があるからFRBECB果敢な「利上げ」で「インフレ」退治に踏み切れない「日本化」を極端に怖れている証拠だろう。

 そこでやはり気になってくるのが「上がらない長期金利」ひょっとして日本は ”周回遅れ” どころか実は “先頭ランナー“ なのではないか? 頑なに上昇を拒む10~30年ゾーンの米国債金利を見ていると、そんな ”悪夢” がいつも頭をよぎる。正直、もう「デフレ」は勘弁して欲しいのだが...

 結論として「アメリカ型」「日本型」もどちらがいい、という事ではなく、対処方によって優劣が分かれてしまうことが判る。正しい対処には「正しいシナリオ」設定が不可欠。今のところ状況証拠は「インフレ」>「日本化」だが、今後も継続的に検証が必要だろう。株、為替動向と合わせ、「金利」= ”リアル” 、特に「長期金利」が鍵となる。

 果たして日本は ”周回遅れ” か、それとも “先頭ランナー“ か-

 FRBECB共々、これからも頭を悩ませそうである。



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