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続報:”SWIFT" が「戦争兵器」になるなんて...。 ー どちらも本当に心配なのは「銀行」。

 「えっ、+10.5%(@9.5%→@20%)も利上げするの?」

 ロシア中銀の即日大幅利上げを見て驚いた方もいるかもしれない。「ウクライナ危機」前まではFRBの年内+1.5~2.0%「利上げ」で右往左往していたのだから無理もない。*「金利の暴力」を見た事がないと実感は難しい。

 「損切丸」の意見は全く逆これでは "0" が一桁足りない

 * ポンド回顧録 -「Crazy Sterling」 本領発揮。「損切丸」との浅からぬ因縁。|損切丸|note
 トルコリラ急落、調達金利1,000%の衝撃|損切丸|note ご参照。

 それぞれの市場で動きをアップデートしてみよう。

 1.為替

 予想通りだがドル/ルーブルは前日の@83台から一時@114台まで下落▼36%)。年率換算すれば実に▼13,333%(!)。利上げはドル/ルーブルロング(ルーブル売り)のキャリーコスト(ポジションを持ち続けるために係るコスト)に一定の負担となるが、これでは下落率に見合わないまだまだルーブルショートにうま味がありそうだ。

 ロシア政府も企業に保有外貨の売却を命じているが、ロシアの銀行に持ち込めないうえ金額も知れており、相場を長くは抑え込めない。その反対側で英BPが30年も保有し、19.8%ものシェアを持つてたロシアの国営石油会社「ロスネフチ」株を全て売却。コストが▼250億ドル(≓▼2.6兆円)もの巨額に及ぶが、おそらく英政府のバックアップを受けてのこと。その他ノルウェーの年金ファンドもロシア資産の売却を決め、まさに「多勢に無勢」GPIFも2,000億強投資しているというが、どうするつもりか)。

 更に痛いのはロシア国民が両替に殺到していること。もう店頭にドルやユーロがないというから気の毒と言えば気の毒。「通貨」「現預金」がいかに "危ない投資" か、まざまざと見せつけている。

 2.インフレ、エネルギー価格

 「ロシアは原油、ガスなど豊富なエネルギー資源があるから大丈夫」

 こういう意見を良く見るが本当だろうか?

 前稿.”SWIFT" が「戦争兵器」になるなんて...。 ー どちらも本当に心配なのは「銀行」。|損切丸|note でも書いたイランも主要産油国だが、「SWIFT攻撃」を喰らって通貨価値は▼4分の1に、物価は+40~50%の「ハイパーインフレ」に喘いでいる。

 もっと酷かったのが ”反米” で有名なマデューロ大統領率いるベネズエラ原油資産を担保とした仮想通貨「ペトロ」のICO(Initial Coin Offering、仮想通貨による資金調達)で50億ドルも集めるなど鼻息が荒かったが、最終的にインフレ率は2019年1月に@+268万%(!!)に達し、未だ「国家破綻」状態から抜け出せない。

 頼みの中国もおそらくロシアからの「安い原油・ガス」に "垂涎" 状態100ドルを超える北海ブレントに対し▼10ドル以上の ”ディスカウント” 価格になっていたウラル原油だが、「SWIFT攻撃」の余波で更に買い叩かれるのは必至。皮肉にもロシアからの「安い原油・ガス」が中国他数カ国の懐に入ることによって全体の需給は均されそれ程パニックにはなっていない。残念ながら「エネルギー価格高騰→収入増」のロシアの目論見は機能しない

 3.株価

 日経平均が前日比プラスで引けたのはうれしい誤算(苦笑)。NYダウ先物▼500ドル程度(▼1.5%)で影響は軽微と考えて良い。何度も書いているが「ウクライナ危機」は株価調整のための「為にする理屈」に過ぎず、本丸は「過剰流動性の縮小」だ。

 1つ気になるのは欧州銀行株。特にフランスイタリアだ。ロシア向け債権の多い代表格のソシエテジェネラルは今日(2/28)の欧州オープンで▼11%直近1ヶ月では▼23%下落しているが、直近5年の安値@11ユーロまでは落ちていないデフォルトまで考える事態ではなかろう

 安値を更新しているイタリアのモンテ・ディ・パスキの方が心配ではあるが、ECBも "備え" は出来ている

 肝心のロシア株式市場は2/28は取り止め。だがこれは逆効果遅らせれば遅らせるほど後に売りが殺到し、市場の下落を増幅するだろう。為替取引も3時間遅らせるなど、当局の焦りが見て取れる。

 4. 金利

 国外投資家による売りを禁じたロシア国債市場は、まともなマーケットが成り立っていない(東京20時現在)。だが中銀が+10.5%も利上げした以上、暴落は必至だ。一方の欧州国債は「質への逃避」もあり堅調

 米国債は上がろうとする(金利低下)と売りに押し返されている印象やはりFRBの「利上げ」路線は揺らがない中露に対する「利上げ攻撃」にもなり得るからだ。

 2/28の欧州市場を見ても、欧米陣営は「SWIFT攻撃」の返り血に関して、概ね ”準備が出来ている” 印象対するロシアは打つ手がない

 「大日本帝国海軍」「ベトナム戦争」「アフガニスタン戦争」など、例え軍備や資力に大きな差があっても "大義" のない無理な戦争が成功しないのは歴史が証明している。今回もそういう流れだ。

 前例がないのは広島、長崎以来の「核」だが、数十発打ち込まれるだけで地球規模の大災害になるという代物だ。それでは本当に何の為の戦争かわからなくなる。米ロ中とも ”ボタン” が高齢者の手にあるというのは何という皮肉だろう。これ以上若者の邪魔はしないで欲しいと切に思う。

 


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