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”SWIFT" が「戦争兵器」になるなんて...。 ー どちらも本当に心配なのは「銀行」。

  ”SWIFT" =  Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication

  ”SWIFT" ー。銀行業務を離れて5年経つが懐かしい響きだ。ドルなど外貨の資金繰り業務に従事したことがある者なら避けて通れない代物ではある。その歴史は古く、1973年にベルギーで設立されて以降、実に*50年間国際間の資金決済の核として機能している。

 *「SWIFTコード」= ISO 9362 ビジネス識別子コード(BIC)を使用するソフトウェアやサービスを用いているが、古臭いシステムであることは否めず、コストが高すぎるという批判もある。だが今回クローズアップされた ”アノニマス” (Anonymous)やランサムウェアDDOS攻撃などハッキング全盛の時代にあって、"BASIC" や "FORTRAN" のような古い言語を用いたプログラムは逆にハッキングが難しい「日銀ネット」もそう。大昔の複葉機が近代のレーザーシステムで探知しにくいのと似ている。

 それが今回「戦争兵器」として使われると言う。どういうことか?

 実は2012年、2018年にイランが核合意に絡んでこの「SWIFT攻撃」を喰らっている。あまり日本では周知されていないが、「お金」の面からその経緯を解説してみよう。

 上は通貨リヤルの対ドルFXレート、下はイランCPI(年率)の推移だ。見ての通り、2012年以降、対ドルのリヤルは通貨価値が4分の1に暴落物価は2012年、2018年の「SWIFT攻撃」の度に+40~50%もの「ハイパーインフレ」に見舞われている。(直近の1月CPI+35.9%)。当然だが、この2つは密接に関係している。

 例えば貿易で考えると「原油」を輸出はできるが決済代金をドル、ユーロ等の主要通貨で受け取れないもっと深刻なのは輸入法定通貨リヤルで買おうとしても、ドルやユーロに変換できないリヤルを受け取る国・企業はいなくなる。そうこうしているうちにますますリヤルは敬遠され、通貨価値は暴落*海外からの輸入品は高騰し、生活は苦しくなる。

 近年なら同様の通貨暴落→インフレが最もひどかったのがベネズエラで、「現在進行形」が今話題のトルコやレバノン。円に例えれば1ドル@100円が@400円になり、500円のハンバーガーが2,000円になる計算。イランに対する「SWIFT攻撃」はアメリカに ”大義” が不十分であり、これでは「アメリカ憎し」になるのも理解できる。

 これを今回の ”侵略国家” に当てはめてみよう。

 「兵器」としてのポイントは、ずばり「ドル売・ルーブル買介入」停止。

 今回の侵攻時にもルーブルは売られ、一時@80台→@89台まで急落(▼11%)。すかさず中銀が「ドル売・ルーブル買介入」( ↑ チャートフロー参照)したことで@84~85まで押し戻された「SWIFT攻撃」が温存されたことで、先週末は@83.8近辺で引けている。

 だが欧米による「中銀のSWIFT除外」を受け、ルーブル売りが再び活発化今度は為替介入が出来ない為替は2通貨の等価交換だが、ルーブルの対になるドルやユーロはSWIFTを通さないと決済できないからだ  。

 追い打ちをかけるように外貨準備6,430億ドル(≓74兆円)も凍結中銀は全く動きが取れなくなる。つまりFX市場でルーブルを買う銀行やトレーダーは皆無に近くなり売り一色に。トレーダーもファンドもルーブルを売りたくてうずうずしており「早く月曜にならないか」と手ぐすね引いて待ち構えている。現場の戦いでは優勢のようだが「お金」の現場では "タコ殴り" 今度はドル/ルーブル=@89程度では済まないだろう

 もちろん欧米日英も「返り血」は浴びる。ガスプラントを持つ商社や輸出が多い企業のダメージは避けられない。だがG7、特にヨーロッパが最も心配しているのは実は「銀行」だ。

 フランスの大手行ソシエテ・ジェネラーレをはじめ、イタリア、フランスには貸出債権を多く抱える「銀行」がある「SWIFT排除」に向けてECBが銀行の財務内容を精査していたようだが、「不良債権」の算定に時間を要していたのだろう。場合によっては「公的資金注入」まで考えているはず。欧州の銀行株価等に下押し圧力がかかるのはやむを得まい。

 国債金利も一時10年が@14%台を付けた後@12%台まで戻ったが、これも大荒れは必死ムーディーズS&P"計ったよう" に(苦笑)格付をジャンク等級のダブルBまで下げたが、これもまだまだ格下げがありそう。買い戻しで一服していた株式市場も地獄を見る

 マーケットなど意に介さない独裁者には効かないかもしれない。だが今でも+9%弱のインフレに苦しんでいる国民や企業は大変「銀行」も何行か潰れるかもしれない。欧米諸国としては ”革命の国” の本領発揮「内部崩壊」を期待したいところ。下手に手を出せば、精神状態が普通とは思えない独裁者が追い詰められて "核" のボタンを押すリスクもないとは言えない

 「中国が支援するから経済制裁は効かない」

 こういう言説も良く目にするが、筆者の意見は「否」「原油」「ガス」は人民元で買えるが、「紙屑」同然のルーブルで半導体やその他の製品を売るとは思えない。あるとすれば**「原油」「ガス」との「物々交換」だが、相当買い叩かれる仮に原油価格が@150ドルに急騰しても@50ドル程度で売るしかなくなるエネルギー価格急騰も「絵に描いた餅」だ。

 **「今日からあなたの銀行口座は使えません」。個人の生活に例えるならそういうこと。そこへ1社だけ雇ってくれる会社が現れて、「お給料は当社製品の買える商品券で支給」と言われたら断る術はない。まるで「カイジ」に出てくる地下通貨「ペリカ」のよう(笑)。

 ちなみに今回アメリカ(3.5億ドル相当)とドイツが随分と気前よく武器提供を決めたが、これには当然「お金」の算段がある。「実質差押え」の外貨準備6,430億ドル相当を「戦後賠償費」に当ててしまえば、十分 "お釣り" がくるいかにもユダヤ系がやりそうな商売だが、こうやって「戦争」を換金してきたのも彼らの歴史の一部。

 それもこれも侵略された側の頑張りが生んだとも言えるが、何だか「命」を「お金」に変えてるみたいで…結局、寄って集って ”侵略国家” を喰っちゃおうっていう言う話。10年前の ”大統領” ならこんな理屈は判断がついたはずだが、お年(69歳)なのか。まあ20年も "核" のボタンを握り続けていれば精神にも破綻を来すというもの。もう潮時と感じる。

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