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2021年はこのポジティブ・チキンを師匠にしようと思う

去年の8月からオンラインで英語の発音を重点的に習ってきた。何となくルールは掴めたけれど耳は全然できていない。ナチュラルスピードの英語に慣れよう!と思って一念発起、英語のコンテンツを探すことにした。

ドラマも面白いけれど1話が長いので、繰り返し見るのは大変そう。でも子ども向けアニメならたぶん短めで英文も易しい気がする。探し始めて参考にしたのはこの記事だった。

「英語が簡単」という項目で紹介されていたのが『アーチボルドの大冒険』で、こんな説明がついている。

ニワトリのアーチボルドのめちゃくちゃでシュールなアドベンチャー作品。

おお、ちょうどいいかもしれない。あまりにベタな子ども向けアニメだと絶対飽きてしまう。かといって複雑なストーリーを英語で何度もなぞるのはまだレベルが追いついていない。彼らのシンプルな世界なら自分の英語力でも何とかなりそう。

と見始めたら、止まらない止まらない、うわぁこれハマるわ!

『アーチボルドの大冒険』はNetflixオリジナル

『アーチボルドの大冒険』(原題:Archibald's Next Big Thing)は、アメリカの俳優兼コメディアンであるトニー・ヘイルによる原作絵本が、2019年9月にNetflixオリジナルでアニメ化されたもの。2020年3月にはシーズン2も作られているから人気は高いはずだけれど、日本語で紹介されている記事はとても少ない。

トニー・ヘイルは『トイ・ストーリー4』のフォーキー役の声優さんと言ったほうが分かりやすいのかもしれない。彼がクリエイター兼エグゼクティブプロデューサー兼声優で参画したのがこの作品。

主役のニワトリ、アーチボルドは見た目がまだヒヨコだけれど「自分はチキンである」という自覚はあって、wikiの紹介文でも「a positive chicken」と紹介されている。ポジティブ・チキン。いいねえ。

要因① 程よく荒唐無稽

とりあえず1話だけ見て続けて視聴するか考えようと思っていたら、1話から心を鷲づかみにされた。たぶん自分が小さいときに見たアニメのワクワク感が呼び覚まされたのだと思う。

例えば私がよく見ていた昭和50年代前半だと『ポールのミラクル大作戦』のような日常から時間と空間を飛んで戻ってくるアニメ、『魔女っ子チックル』のような日常アクシデントを魔法で解決するアニメ、といったちょっとだけ異世界を体験できるような話が多かった。

見た後は自分の(主に幼稚園)生活の先で「こんなことがあったら面白いのに」と想像する楽しみがあったし、自分がその世界に入り込んで大活躍する夢を見て、起きた後に「楽しかった!」と爽快な気持ちになったことも何度もある。

『アーチボルドの大冒険』も似ていて、アーチボルドは(ほぼ自業自得だけど)トラブルやアクシデントに見舞われながらなぜか大海に繰り出したり、宇宙に飛び出したり、急に無茶な仕事を任されたり、誰かと仲良くなったりして「大変だけど楽しそう!」と思える出来事に溢れている。

字幕で見ていても没入感があって、ほんの10分ちょっとのエピソードでも「あっ、どこかに行って帰って来た」という感覚が残る。そのまま寝て実際に夢に見たこともある。

ストーリー性があってキャラクターたちに複雑な背景があって、いろんな読み解きを必要とするアニメは奥深い。でも小さい頃と同じように主人公と一緒に「やっほーい」と叫びたくなるようなアニメは久しぶりだった。久しぶり過ぎたからハマったのかもしれない。

要因② 全部前向き

アーチボルドを評するときは「yes-ands」という単語もついてくる。調べてみるとこんな意味があるらしい。

「Yes, and」というコミュニケーションのやり方は、日本語にすると、「いいねぇ、だったら〇〇」とか、「いいですねー、それなら〇〇」といった感じでしょうか。

確かに、アーチボルドは何かあってもすぐ「Yes! Yes! I got it!」と前向きに捉えて(たまに安請け合い)想像を超える動きとアイデアでハッピーエンドへ話を運んでいく。

見ていて思い出したのは映画「無責任男シリーズ」の植木等だった。彼もその会社に全然関係ないポジションからポッと入ってきて「いやあ、私にお任せください」と言いながら飄々と世間を渡っていく。アーチボルドも「だったらこうすればいいんじゃない?」という提案が必ずある。

ハッとするのは、自分だったら下を向いて避けてしまいそうなシチュエーションでもいつも通りに「Yes, and」の態度を貫くところ。例えばその界隈で避けられていたり怖がられていたりする登場人物にも躊躇なく「やあ」と挨拶して、ちゃんと事情を聞こうとする。

そんなシーンを見るたびに「アーチボルド偉いわ…」とつぶやきながら、彼の前向きな姿勢を見習いたくなる。

要因③ 間(ま)で笑える

アメリカやヨーロッパのコメディは笑えないこともある。何か笑いどころが違っていて「ここで笑うんだろうな」と頭で分かっていても感情が全く動かない。自分にとって映画『メン・イン・ブラック』がそんな苦い思い出の真ん中にある。

『アーチボルドの大冒険』ではそんな心配はしなくていい。アメリカンジョークのような箇所もあるのだろうけれど、映像的に自分でも分かる間(ま)が心地よく挟まれていて思わず「プッ」と吹き出してしまう。巧い。

要因④ キャラクターがキュート

特にアーチボルドの表情が豊か。重いモノを持ち上げるとか、誰かに引っぱられるとか、褒められた直後とか、ドヤ顔とか、1秒に満たないシーンでもコマ送りをするといろんな目と眉の動きが複雑に組み合わさっている。一言でいうと「可愛い!」。

一緒に暮らす兄姉である、ロイ、セイジ、フィンリーもヒヨコ造形ながらちゃんと個性がつけられていて、第1話からしっかり掴める。

姉のロイは研究者肌で理系。兄のセイジはアウトドア大好きでサバイバル情報に強い。もう一人の兄フィンリーはいつもギターを持って愛を歌い上げている。アーチボルドは末っ子で兄姉思い、いろいろしでかすけれどみんなに可愛がられている。

ミツバチのビーは、アーチボルドの親友であり良き相棒、ブレーン。セリフは「Bee-Bee」しかないけれど彼女のメリハリのおかげで話が面白くなっている。ちゃんとアーチボルドの部屋に寝床がある。寝るときはゴーグルを外す。

両親が同居していない設定(理由は不明)なのも、話やキャラクターの自由な動きに影響を与えている。子どもの頃のままごと遊びでもお父さん・お母さん役は誰もやらなくて、だいたい「子どもたちだけで住んでいる設定」になって好きなことをし放題だった。あれと同じかもしれない。

見続けていると、住んでいる町クラックリッジの住人もそれぞれ性格が分かってきて、後半は「彼ならそうするよね」「あのエピソードの彼女か」と半分町に住んで知っているような気になってくる。それだけ世界観がきっちり組まれていて物語が作られているのだと思う。

要因⑤ 音楽とリズムが良い

エピソードごとにオリジナル楽曲が作られていて、どれもキャッチーで「聴いて得したなー」とホクホクする完成度。「歌」がテーマでミュージカルのような作りになっているシーンもある。

笑わせようとして音楽をフッと抜く間や、意味を強調するための効果音も「欲しいところに欲しい分だけ」という感じで見ていて気持ちがいい。音楽がないときのキャラクターたちの動きもリズミカル。ただ歩くだけなのに、見ていてなんでこんなに楽しいんだろう。

要因⑥ 見やすい長さで勉強しやすい

そういえば最初の目的は「英語の勉強」だった。

1話24分だけれど、中に12分のエピソードが2話入っている。最初字幕で見て第1話でハマった後、今度は英語字幕で停めながら確認して、最後に字幕なしで英語音声だけで再生して3回見てしまった。

それでもかかったのは1時間くらい。動きも音楽もキャラクターも飽きないので、何度見ても大丈夫。これが大きい。

以前教わっていた韓国語の先生は、韓国出身なのに目を閉じて話を聞くと絶対「日本生まれで日本育ちの人の日本語」にしか聞こえなかった。先生に学習のコツを尋ねると「キムタクが大好きだったから、キムタクのドラマを死ぬほど見た」とのこと。

「なるほど」と思うと同時に「それくらい熱中できるコンテンツがあったらいいなあ」と長年思っていた。それが! 今!ここに!

字幕を追いながら会話をなぞると、慣用句がたくさん出ていてこれは勉強して覚えないと身につかない。ああ、こういうのをパッと言えたり聞き取れたりしたら自然な英語に近づけるんだろうなあ。

あとアーチボルドが前向きなことしか言わないので(笑)前向きな英文をたくさん覚えられる。今のところシーズン1・2、13話+13話なので追える量でもある。これは1話ずつ丁寧に見直していこう。

2021年の師匠にしようと思う

英語学習でも物事の捉え方でも、アーチボルドのスタンスは学ぶべきところが多い。何かあったら「Yes!」と両手を突き上げて受け入れるし、嬉しい悲しいという表情も豊か。今日も明日も楽しいし、大好物を食べたらおいしいし、新しい友達ができたら嬉しい。

人間界ではコロナ禍で塞ぎ込みがちな状況に囲まれているけれど、今だから『アーチボルドの大冒険』を見つけられてよかった。

今年はアーチボルド師匠についてきます。


その他公開されているコンテンツ

▼2019年シーズン1の公式トレーラー

声優のトニー・ヘイルがアーチボルドと「僕が君の声をやってるんだよ」「どういうこと?!」と会話していて楽しい。テーマソングと一緒に大冒険の一部も紹介。

▼2020年シーズン2の公式トレーラー

記事中でもリンクした動画。ミュージカル部分と、やっぱり巻き込まれていく大冒険がコンパクトに紹介された1分。

▼Dreamworksの公式サイト

▼Netflixの公式サイト


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