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採用面接は「事前準備」で8割決まる

採用面接は準備で8割決まる採用面接を行う前にどんな準備をしていますか?とセミナー会場で尋ねると、応募者の履歴書にさっと眼を通すくらいで、ほとんど何も準備をせずに採用面接を実施しているという方が大半です。私は「採用面接は準備で8割決まる」と考えます。良い人材を採用するには事前準備は欠かせません。では、何をどのように準備すればよいのでしょうか?

採用基準リストを準備する

採用基準が明文化され面接担当者に共有されている企業は全体の2割以下です。採用面接の現場では、明確な基準がないまま採用の合否が決められています。あえて言うなら、面接官の勘とフィーリングが採用基準です。気分は日によって変わりますし、面接官が違えば基準も変ります。なので、自分以外の人が採用した新人のことを「どうしてこんな人を採用したのか?」と思うことがしばしばあるのではないでしょうか?

準備の第一歩は採用基準を決めることです。どういう人を採用したいのか?どんな人と一緒に働きたいのか?と考え、理想の人物像をリストアップしていきます。完成した採用基準リストを手元に置きながら採用面接を行えば、応募者が採用するに値する人か否か、迷うことがなくなります。


質問・伝達リストを準備する

採用面接の場で行う質問は場当り的に行うのはNGです。ただ、現場では履歴書を見て、気になることについて、その場で質問を作り投げかけるというケースが大半です。

お薦めは、採用面接を行う前に10個以上の質問を予め用意してリストにして、それを元に採用面接を進めていくことです。そうすれば、すべての応募者に同じ質問ができるので、容易に比較することができます。また、大事なことを質問し忘れたということもなくなります。会社概要や働くうえでのルール、給与規定、福利厚生のシステムなどについても、一覧表にしてチェックしながら説明すれば伝え漏れが防げます。

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履歴書は口以上にものを言う

履歴書は市販のものを利用するのが一般ですが、自社独自の履歴書を使い提出してもらうと効率よく採用面接を行えます。私がかつて経営していたセブンイレブンのFC店に40代の主婦がパート募集に応募されてきたときのことです。受取った履歴書に「得意な科目」を記載する箇所があり、そこに「国語、体育」と記入していました。パート募集の採用面接で何十年も前の学生時代の得意科目が分かったとしても意味がありません。必要なのは“今”あなたが知りたい情報です。オリジナルの履歴書であれば、こちらが知りたいと思う情報を記入してもらえるので、採用面接がスムーズに行えます。ホームページ上からダウンロードできたり、スマホの画面上で登録できるようにしておけば便利です。

履歴書(紙製)を受取ったときは次の3点を確認しましょう。1つ目は「ふりがな」です。名前にフリガナを記入する項目がある場合、カタカナで『フリガナ』と書かれているのに、平仮名で書いてくる人は、注意力がなく、うっかりミスをするタイプと判断できます。2つ目は「履歴書の状態」。角が折れていたり、シミ、汚れ、破れがあったり、日付が記入されていない場合は、履歴書を使いまわしている可能性大です。採用を見送る方が無難です。

転職を3年ごとに繰り返している人は、おそらく仕事をしている中で出てくる壁を突き破れずに、途中で諦めてしまう人です。就職して3年くらいすると多くの場合、次に進むべきステージが見えてくるものですが、それと同時に少し厚い壁も現れます。それを乗り越えられずに、その場から逃避することを選択した人は、あなたの職場に数年後に出現する壁を乗り越えられない可能性が高いと考えられます。

一問一答で質問ない

志望動機や前職の退職理由などについては、予め回答を準備してきているので、当たり障りのない模範的な回答しか発言しません。なので、採用面接で質問を一問一答のスタイルで進めてしまうと応募者の本音を聞き出すことはできません。

採用面接では1つの質問に対して3回は掘り下げましょう。そうすれば応募者は用意してきた“セリフ”ではなく、自分の考えを答えなければならなくなります。本音が聞きだしやすくなるということです。とくに、前職の退職理由については突っ込んで聞くことをお薦めします。「なぜ、退職するのか?」その大きな原因は“自分のニーズが満たされない”ことにあります。退職理由を深堀りすると、そこに彼、彼女たちのニーズが見いだせる場合が多いのです。例えば、「いくら頑張っても時給が上がらなかったので他を探そうと思った」と聞けば、ニーズは「労力に見合った賃金を受け取ること」だと分かります。「残業が多く、自分の時間が持てなかった」と答える人のニーズは、「働きながら自分の時間を確保すること」になります。もし、それらのニーズを自社で十分満たせないと分かれば、その旨をキチンと伝えましょう。そして、採用するか否か慎重に判断するようにしてください。ニーズが満たせない職場で長く勤める人は少ないからです。

臨機応変に対応できる人材を見抜く方法

どんな業種、職場でも“臨機応変に対応できる”人材は欲しいものです。採用面接の場でそういうタイプかどうかを見抜くことができる簡単なワークをご紹介しましょう。

採用面接の途中で、面接官がいきなり自分の腕時計を外して、応募者の目の前に置き、「この時計をいますぐ私に販売してくれますか?」と伝え、実演販売をしてもらいます。突然思ってもみないことをリクエストされるので戸惑います。なかには、完全にフリーズする人もいます。そういうタイプは臨機応変さに欠ける人です。一方、「文字盤がステキでしょう」とか「ちょっと着けてみませんか?」などと、どうにかして販売しようとして、すぐに対応できる応募者は臨機応変さに長けた人です。動きだすまでに時間が掛かる人、販売している途中で詰まってしまう人…など、色々なパターンがあります。それらを観察することで、どういうタイプの人物なのか分かる部分も多くあります。これは、海外で活躍していた友人から聞いた欧米式の採用面接試験のひとつで、欧米では比較的ポピュラーな採用面接法のようです。ぜひお試しください。

1回で見抜こうとは思わない

パート・アルバイトスタッフの採用の場合、採用面接は1回で終らせているという企業が9割です。最近では面接も履歴書もなしで賃金は日払いとうたい人を集めている企業もありますが、私はコンサルティングを行うときは「採用面接は複数回行うべし」とお伝えしています。そう言うと、「採用面接のために何度も足を運ばせると応募者に逃げられのではないか?」と反論される場合もあります。ただ、そう言う企業の現場では、採用面接は1回のみ短い時間で済ませ、来るもの拒まずのスタンスで頭数合わせの採用をし、その結果、人が続かない、育たない、採れないという状況に陥っているケースがほとんどです。一方、私が知る“人の問題で困っていない企業”は、採用前の段階でハードルを複数用意し、すべてクリアしなければ採用しないと決めています。

そういう企業では、少なくとも30分~1時間を要して採用面接を行います。先にご紹介した採用面接シートを用いて質問し、会社概要、考え方(経営理念)、ルールの説明などを行い、その後、応募者からの質問にも答えます。そういうことをきちんと行えば10~15分では終われないはずです。

また、採用面接は複数回行います。2次面接は「面接」と言っても個室で行うものではなく、実際に数日から数週間(場合によれば数ヶ月)現場で、有期雇用契約で仕事をしてもらうトライアル採用を2時面接とします。もちろん賃金も支払います。そのときの勤務態度、言動などを、既存のスタッフ全員でチェックしていくのです。観察する側には、予め観察視点をリストにした表を配布し、5段階で評価できるようにしておきます。また、既存のスタッフにインタビューすれば、働きぶりやコミュニケーションの取り方などの人間性についての情報も集まります。複数の眼で観察すれば、面接官が気づけなかったことも把握でき、応募者の本来の姿が見えてきます。職場のリーダーがいるときと不在のときで、明らかに態度が違うという人もいるので、そういう情報を事前に入手していれば、問題行動を取るような人を採用しなくて済みます。

その後、「実際に働いてみてどうだったのか?」について両者で話し合う場を3回目の採用面接とします。このとき、不採用と判断した場合でも有期雇用契約で働いているので期限が満了すれば、その後、継続雇用はしなくて済みます。試用期間として働いている場合は、一旦雇用しているので、相応の理由がなければすぐに辞めてもらうことはできないので注意してください。

私の知人は、採用活動は「婚活」に似ていると言います。「面接=お見合い」「トライアル採用=お付き合い」「結婚=雇用」というイメージです。お付き合いをしているときであれば、嫌だなと思うことがあれば結婚に進まないという選択をすることもできます。気が合ったもの同士が結婚すれば、素敵な家庭を築くことができます。採用面接の後にトライアル採用を経ることは、それと同様に、一緒に職場で仕事をすることにおいて相応しい相手かどうかを見極めるための大切な時間なのです。トライアル採用を行う私のクライアント企業の離職率は概ね低く、人についての問題もほとんど起こっていません。

採用前の段階で、時間とコスト、労力を掛け、きちんと吟味をして採用すれば早期の離職を防ぐことと同時に、本当に必要な“できる人材”を現場に揃えることができます。

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