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現状維持バイアスと小池百合子圧勝の背景

おはようございます。現状維持バイアス研究家のアルキメデス岡本です。

さて、東京都知事選挙の結果、小池百合子さんが圧勝で再選されました。

まあこの結果は予想の範囲だと思いますが、何故ここまで圧勝したのでしょうか?選挙結果の検証を行いながらその原因を分析したいと思います。


■小池百合子圧勝の構図

ちなみに今回の投票率は55%でした。

投票の内訳は、小池氏には自民、公明支持層の8割、無党派層の54%が投票した。さらに立憲支持層の29%、共産支持層の17%も取り込んでいた。女性の支持が高く、全ての年代に浸透している。

一方、宇都宮健児氏には支援を受けた立憲支持層の49%、共産支持層の67%が投票したが、無党派層からは15%だった。れいわの山本太郎氏は、れいわ支持層の95%をまとめたが、無党派層の支持は12%。維新推薦の小野泰輔氏は維新支持層の54%から得票したが、無党派層は10%にとどまった。

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また、年齢別では以下のような結果となった。

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という結果から、自民党、無党派の支持層と女性からの支持を得た事が勝因だったと言えるでしょう。

また、野党対立候補の宇都宮、山本、小野の三者を合計しても、小池氏の得票数366万票に至らなかった事が分かります。

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■現状維持バイアスと小池百合子

小池都政の圧勝は文句の付け所はありません。しかしながら、これだけでは小池圧勝の本当の理由が見えて来ません。

その背景には何があったのか?

勝者が必ずしも正しいとは限らない場合も有り得ます。例えば、現状維持バイアスという力が働く事によって事態が悪化するケースなどです。

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現状維持バイアスとは、現状を基準とし、変化を受け入れず固執する心理傾向。

たとえ有益であったとしても、知らないものや経験したことのないものを受け入れることに心理的な抵抗が生じ、現在の状況に固執してしまう傾向(バイアス)。
人が意思決定をするときに強い影響力を持つ心理傾向であり、現状から未知の状態に変化することを「安定した現状が無くなってしまう損失」と認識する心理が影響している。

■現状維持バイアスに陥る背景

現状を維持したいと思う傾向には複数の心理作用が影響している。利益と損失が全く同じでも損失の方が大きく感じるというプロスペクト理論によると、リスクを負ってでも損失を回避したいと考える傾向がある。

未知の変化に対しては、ポジティブな情報よりもネガティブな情報を重要視するネガティブ・バイアスが働き、必要以上にリスクを強く感じてしまう。

すでに手に入れた物の価値を高く感じ、手放すことに心理的な抵抗が生まれる「保有効果」も、現状を変化させたくないという現状維持バイアスに影響を与えている。

■デフォルトから変更しない傾向

デフォルト(既定)の選択肢が与えられると、変更できるにも関わらずデフォルトの選択肢を受け入れ、変更しない傾向がある。

2003年、ヨーロッパ各国を対象に行われた調査によると、ドナーカードの表記内容によって臓器移植の同意率が変化することが明らかになった。
調査の結果、同意率が高い国と低い国に分かれた。その違いはデフォルトの選択肢が「同意する」になっているかどうかであった。
デフォルトの選択肢が「同意しない」のオプトイン方式の国は同意率が平均して15%ほどと低い一方で、デフォルトが「同意する」のオプトアウト方式の国は、同意率が平均して90%以上だった。

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■現状維持バイアスは誰でも陥る可能性がある

現状維持バイアスは、人間の進化に必要な要素として備わっている潜在的な心理傾向である。現状が安心安全であるとわかっているときに、未知の選択をすることで命を落とすといったリスクを回避するのは、「種の存続」という観点においては合理的な選択である。

命に関わるリスクが少なくなった現代では、現状を維持することよりも、未知の選択をすることで状況を改善できる場面も多い。

ビジネスで用いられる茹でガエルという寓話があり、「カエルはいきなり熱湯に入れられるとすぐに逃げ出すが、水に入った状態でゆっくり温度を上げていくと、いつの間にか出られない温度になって茹で上がってしまう」と言う内容である。この寓話ではビジネスにおける「環境の変化に対応して、現状を変化させることの大切さ・難しさ」を伝えている。まさに、現状維持バイアスの警鐘である。

つまり、今回の東京都知事選挙では、小池氏の政策や人気というよりも、コロナウイルスの影響で疲弊した現状を更に悪化させたくない。他のよく分からない候補者よりも現状の候補者を維持したいという心理が、小池圧勝の最たる理由だと考えられます。しかしながら、小池都政による曖昧なコロナ対応など問題も多いのが現実です。

現状維持を選択して何の手立ても打たなければ、事態が悪化する場合がありますので要注意です。

それでは今日はこの名言でお別れです。


















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