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映画えんとつ町のプペルは映画ではない?

おはようございます。アルキメデス岡本です。

さて、1月もあっという間に終わりましたが、映画えんとつ町のプペルはまだまだ炎上中です。

この映画は信者とアンチの間で評価が分断されていますが、これは本当に映画だったのでしょうか?

多くの映画関係者が“神様”のように思っている名匠マーティン・スコセッシが、マーベル映画について聞かれ、『あれは映画ではない』と発言したことが口火となって、ハリウッドを越えた“映画論争”が起きました。

『あれは映画ではない。テーマパークに近いものだ』と発言し物議を醸したが、スコセッシはさらに『私は、マーベル映画は映画ではないと言った。それについて説明しよう』と題した社説を寄稿。

『私にとって映画とは、芸術的、感情的、精神的啓示を受けるものであり、時として矛盾をはらむ複雑なキャラクターたちとその葛藤や、彼らが傷つけ合ったり愛し合ったり自分と向き合うさまを描くものである』と持論を展開した。

■映画えんとつ町のプペルは映画だったのか?

同じように、私の中でずっとモヤモヤしていた違和感があった。それはこの映画は本当に映画だったのか?という疑問だ。

スコセッシのマーベル映画批判を受けて、「ゴッドファーザー」シリーズの監督フランシス・フォード・コッポラはこう述べた。

映画からは『啓発や知識、刺激といった何かを得ることを期待する』ものであり、『同じような映画を何度も何度も観て何かを得る人が居るとは思えない。マーティンが「映画ではない」と言ったのはまだ親切だ。私だったら「卑しむべき」と言ってしまうだろうから』と、スコセッシよりさらに辛辣にコメントしている。
「リフ・ラフ」や「麦の穂をゆらす風」といった作品で知られる英国人監督のケン・ローチも『マーベル映画は退屈に思える。ハンバーガーのように商品として作られているから。大企業に利益をもたらす商品のように市場を意識して冷めた姿勢で作られている作品は、映画芸術とは無縁なものだ』と容赦無い見方を示す。

マーベル映画もディズニー映画も、いまや大企業のマーケティングによって生み出されているフランチャイズ商品だ。

■フランチャイズ映画に欠けるアーティストのビジョンは同時にリスクでもあるという事実


スコセッシに賛同する監督たちも反発するマーベル映画の関係者たちも、彼の『マーベル作品は映画ではない』という意見に焦点を当てて論じているようだが、スコセッシは社説の後半で、マーベル作品のようなフランチャイズ映画に対する問題意識を以下のように説明していく。

この国や世界の多くの場所の映画館で映画を観ようとした場合、フランチャイズ映画が最も観やすくなっている。それは需要と供給のゆえである、観客の要求に応えているだけであると言われるかもしれないが、そうとは思わない。その因果関係については白黒つけがたいからだ。
もし、或る種の映画だけしか上映しないようになれば、観客はそのような映画だけを観たがるようになるのは当然である。だが、最も暗い兆候はリスクを排除しようとする傾向である。今どきの映画はすぐに消費されるような完璧な商品として製造されている。
才能ある人たちから成るチームによって巧く作られているが、どれも同じに見え、映画に必要不可欠な個人のアーティストのヴィジョンというものが無い。それもそのはず、アーティスト個人というのは最大のリスク要因だからだ。

■ハリウッドで中規模映画を製作するのが難しくなっているのは本当という証言も

超大作以外の映画を撮ることの難しさを語るジョー&アンソニー・ルッソ監督はこう述べている。

実際、アメリカ映画界では中規模程度の製作費の非フランチャイズ映画を製作することは年々難しくなってきている。

例えば「アベンジャーズ」シリーズの監督デュオ、アンソニー&ジョー・ルッソですら、そのような作品を製作するのに苦労したとのことで、ジョー・ルッソ曰く『「アベンジャーズ/エンドゲーム」を監督した僕たちみたいな人間にとってさえ、ダークな性格劇のような映画を製作するのは大変だった』とか。

マーベル作品に出演してきたスターたちも、この問題には関心を寄せており、例えばドクター・ストレンジを演じたベネディクト・カンバーバッチは『優れた監督たちがフランチャイズ映画は映画界を乗っ取りつつあると言っているようだけど、同感だね。王様みたいな存在が君臨して独占市場状態になるのは良くないよ。

作家性を持つ監督たちへの支援を続けていくべきだと思う』とコメントしているし、「アベンジャーズ」シリーズのハルクことマーク・ルファロは『スコセッシは「映画製作に奨励金を出すべきだなどとは言っていない」と書いていたけど、僕はむしろ奨励金を出すべきだと思うな。そして、若い世代の映画作家たちが商業性重視ではない、芸術としての映画を製作できるように支援すべきだと思う』と、さらに一歩進んだ方策を提案している。

■映画えんとつ町のプペルは?

というようにハリウッドでは映画とは何か?テーマパーク型の商業映画と作家性の強い芸術映画の間で論争が起きた。これは日本でも同じ現象が起きているが、映画えんとつ町のプペルは、一体どちらだったのだろうか?

映画えんとつ町のプペルも、いわば西野亮廣のマーケティングによって生み出された商品に変わりはないし、この映画には、テーマパークやソーシャルゲームのような要素もあり、それを受け付けない人もいるだろう。
逆にアーティストのビジョンが強すぎて、そのメッセージが押し付けがましいと感じた人もいただろう。

個人的には、映画えんとつ町のプペルはテーマパーク性のある商業映画でありつつ、西野亮廣のアーティストとしてのビジョンどちらも含んでいたように思う。数字でいえば、7:3ぐらい。よく言えば美味しいところをいいとこ取りした。悪く言えば、欲張って詰め込みすぎた作品だ。

商業的に見た場合、「鬼滅の刃」や「ポケモン」がハリウッドでいう大型フランチャイズのマーベル映画とするならば、その中にノーブランドのインディーズ映画が殴り込みをかけ、15億円とそこそこの興行成績を出した。

結果的には西野信者がリピートしまくった部分もあるが、商業的には成功したと言えるだろう。映像的にもスタジオ4℃の映像とアート性が融合し、芸術性は高かったと思う。

さらにこの映画は、オンラインサロンクラウドファンディングシステムをベースに作られてるので、既存のシステムの範囲外にある。それによって、スポンサーの影響は削ぎ落とされた。

しかしその反面、西野亮廣自身の趣向と技量に依存する為、肝心な脚本と映画としてのクオリティが素人の域を出ていなかった。

その為、スコセッシが言う『私にとって映画とは、芸術的、感情的、精神的啓示を受けるものであり、時として矛盾をはらむ複雑なキャラクターたちとその葛藤や、彼らが傷つけ合ったり愛し合ったり自分と向き合うさまを描くものである』という点においては、芸術作品としては駄作に終わった。

また、歴代の大ヒット作品に比べれば、ランキング圏外である。

日本の映画において興行収入10億円は成功のボーダーラインとされており、30億円以上は大ヒットに入り、100億円以上は大成功とされています。

順位 作品タイトル 配給会社 興収(億円) 公開
1 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 東宝/アニプレックス 365.5 2020/10/16 *
2 千と千尋の神隠し 東宝 316.8 2001/07/20 *
3 タイタニック FOX 262.0 1997/12/20
4 アナと雪の女王 ディズニー 255.0 2014/03/14
5 君の名は。 東宝 250.3 2016/08/26 *
6 ハリー・ポッターと賢者の石 ワーナー 203.0 2001/12/01
7 もののけ姫 東宝 201.8 1997/07/12 *
8 ハウルの動く城 東宝 196.0 2004/11/20 *
9 踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ! 東宝 173.5 2003/07/19 *
10 ハリー・ポッターと秘密の部屋 ワーナー 173.0 2002/11/23
11 アバター FOX 156.0 2009/12/23
12 崖の上のポニョ 東宝 155.0 2008/07/19 *
13 天気の子 東宝 141.9 2019/07/19 *
14 ラスト・サムライ ワーナー 137.0 2003/12/06
15 E.T. CIC 135.0 1982/12/04
15 アルマゲドン ディズニー 135.0 1998/12/12
15 ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 ワーナー 135.0 2004/06/26
18 アナと雪の女王2 ディズニー 133.5 2019/11/22
19 ボヘミアン・ラプソディ FOX 131.1 2018/11/09
20 ジュラシック・パーク UIP 128.5 1993/07/17

■日本映画の未来

総合的に言えば、映画えんとつ町のプペルは、既存システムや大型フランチャイズと言われる、既得権益に対する挑戦でありチャレンジャーだった言えるだろう。その中で存在感を示した事は素直に評価すべき点だと思う。

ただ、商業的な成功を目指せば、それは既存システムと同じような大型フランチャイズと同じ道を辿る事に成りかねない。

アーティストのビジョンというリスクを抱えながら、何処まで商業映画とし成功できるのか。やはり最低でも興行収入100億円を超えていかないと大成功とはいえないだろう。

日本でそれを唯一達成しているのは、スタジオジブリの宮崎駿と新海誠だけだ。

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それか、庵野秀明か。

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個人的には、押井守が理想に近い。

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北野武も好きだが。

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やっぱり、ジェームズ・キャメロンか。

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それとも、リドリー・スコットか。

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まあいろいろいるが、集客力が強みの作品も芸術としての映画を目指す作品も共存できるような製作・配給・興行のシステムが、今後どうなるのか興味深く見守りたい。

ほなまたお会いしましょう。バイバイ~♪

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