「目に映るすべてのコトはメッセージ2 ~2020令和2年もよろしくお願い申し上げます~」『深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)& 読みたいことを、書けばいい。』
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2019年9月19日深夜
スナックふかよみ
それじゃあ第10章を頼みます、ジョー。
はい…
『ダニエル書』第10章は、大河チグリスのほとりで見たビジョン…
また川のほとり?
ダニエルがビジョンを見る場所は「水」のそばが多いのです…
神と水は、かかわりが深いですから…
ちなみに、レゲエの名曲『Rivers of Babylon(バビロンの河)』も、バビロン捕囚の歌…
大河チグリス・ユーフラテスを眺めながら、ユダヤ人たちは故郷のヨルダン川や死海を思い浮かべ、神に祈りを捧げるのですね…
だから「パイの物語」には、「雨・プール・おしっこ・聖水・川・泉・海」など、常に「水」が関連付けられている…
まさに。
さて、この第10章ですが、唯一「日付」がハッキリとしている章になっています…
それは「正月の24日」でした…
正月の24日? バビロニアは正月がそんなに長かったのですか?
正月とは「第1の月」という意味です…
春分の日が基準となるバビロニア暦やユダヤ宗教暦では、一年は春に始まります…
我々の使うグレゴリオ暦でいう3月から4月にかけての4週間が「第1の月」なのですね…
そうそう。Nisan(ニサン)の月。
「ニサンの月」といえば、イエスの死と復活があった月…
そして「24日」といえば、イエスが降誕したクリスマスの日…
第10章には、こんな伏線が張られています…
ダニエル書、パネェ。
正月の24日、ダニエルは大河チグリスのほとりにある丘陵に立ち、目の前に現れた「あるもの」を見ます…
ちなみに英語版の聖書では、こう書かれています…
On the twenty-fourth day of the first month, as I was standing on the bank of the great river, the Tigris, I looked up and there before me...
それがどうかしたの?
「the Tigris」と「the Tiger is」の駄洒落ですよ…
ダジャレ?
「on the bank of the great river, the Tigris, I looked up」は…
「on the bank of the great river, the Tiger is, I looked up」なんです…
「e」という文字を1つ入れるだけで…
「大河チグリスの丘陵で私は仰ぎ見た」が…
「大河にタイガーがいる丘陵で私は仰ぎ見た」になるんです…
大河にタイガー?
「大河にタイガーがいる丘陵で私は仰ぎ見た」といえば…
『LIFE OF PI』の本の表紙に描かれたトラが…
「死海」の一部になっている件…
何なのよコレ!?
第6章だけじゃなくて第10章まで?
どんだけ!?
おもしろいですよね…
さて、大河チグリスのほとりでダニエルが見たものとは、神秘的な、ひとりの男…
亜麻布の服を着て、腰に黄金の帯を巻いていて…
その体は黄玉のようで、顔は稲妻のようで、目は燃える炎のようで、手足は磨かれたブロンズのようで、その声は地に響き渡るほどのもの…
しかし、この男の姿が見えているのはダニエルだけで、他の者には見えていません…
しかも他の者は、男の姿を見ていないにもかかわらず、恐れおののいて逃げ隠れてしまいました…
もしや、これは…
父の計画によって無様に殺される神の子イエス・キリストの意味を教えてくれた…
高原の教会の、あの虎顔の神父のことですね…
低音ですっごく響く、いい声してたもんね…
ってことは…
男の姿が見えていないのに、恐れおののいて逃げ隠れた者とは…
パイのお兄ちゃん、ラビだわ!
その通りです…
ちなみに第10章には、奇妙な表現が出て来ます…
the one who looked like a man
人の形をしたもの
だから高原のシーンに「人の形をしたもの」が映っていたんですね…
なるほどね!
さて、ダニエルの前に現れた謎の男は、こんなことを語ります…
「どんな悲惨な状態になっても恐れることはない。天使ミカエルがやって来て、困難から救ってくれる。これは終わりの日についての話である。悟りなさい」
今度はガブリエルじゃなくてミカエル?
このビジョンは、オリーブ山の採油所ゲッセマネで成就されます…
最後の晩餐のあと、イエスは十字架刑が恐ろしくて、運命から逃げたい気持ちでいっぱいでした…
しかし、そこに天使ミカエルが来て、苦悩するイエスを救ってくれます…
『ゲツセマネの祈り』
カール・ハインリッヒ・ブロッホ
いろんな小説や映画や歌で再現される超有名な絵ね。
サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』、ポール・サイモンの『ボクサー』、コーエン兄弟の『バートン・フィンク』、カズオ・イシグロの『日の名残り』、野島伸司の『ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ』、村上春樹の『スプートニクの恋人』、ルカ・グァダニーノの『君の名前で僕を呼んで』…
挙げたらキリがないわ。
天使の長ミカエルは、新約聖書では『ヨハネの黙示録』に登場しますが、四福音書には登場しません…
しかしこの場面は、多くの宗教画に描かれてきました…
もちろん、この『ダニエル書』の影響で…
そういえばさ。
パイと虎のリチャード・パーカーも、こんなポーズとってなかった?
え? あっ…
確かに!
その通りです…
あの大嵐の後のシーンでは、「父と子」の役割を入れ替えて「ゲッセマネの祈り」が再現されていたのですね…
さすがに「死にそうなパイを虎が優しく慰める」という構図は無理がありますから…
虎のバックが「赤」っぽいのもバッチリ…
イエスの赤い服みたいだもんね。
ダニエルが見た幻の男の特徴…
亜麻布の服を着て、腰に黄金の帯を巻いていて、その体は黄玉のようで、顔は稲妻のようで、目は燃える炎のようで、手足は磨かれたブロンズのようで、その声は地に響き渡るほどのもの…
というのは、高原の教会の神父のことでもあり、このシーンにおけるパイのことでもあったんです…
なるほど…
確かにパイは「亜麻布」のパンツをはいていて、「黄金の帯」をしていました…
そのシーンも『ダニエル書』第10章の記述の再現です…
わたしはその言葉の声を聞いたが、その言葉の声を聞いたとき、顔を伏せ、地にひれ伏して、深い眠りに陥った。見よ、一つの手があって、わたしに触れた…
激しい雷鳴と稲妻に恐怖し、大量の海水を飲んで虚脱状態になった虎のリチャード・パーカーに対し…
パイは声をかけ、頭に優しく触れた…
ああ!
そして、こんな記述も…
見よ、人の子のような者が、わたしのくちびるにさわったので、わたしは口を開き、わが前に立っている者に語って言った、「わが主よ、この幻によって、苦しみがわたしに臨み、全く力を失いました。わが主のしもべは、どうしてわが主と語ることができましょう。わたしは全く力を失い、息も止まるばかりです」
人の子が「私の唇」に触る…
しかもさっきは「人の子の手が体に触れた」だったのに、今度は「手」とは言ってない…
そして、主と人の子は「語り合うこと」が出来ない…
まさしく、さっきの「ひざ枕」の構図…
完璧じゃん!
そして、パイと虎が死を覚悟した直後、救命ボートは「カニバリズムの島」へ辿り着きます…
あの島も「人の形をしたもの」でしたよね…
ああ… これで腑に落ちました…
高原とカニバリズム島の両方に「人の形をしたもの」があった理由が…
『ダニエル書』第10章が原因だったのですね…
森の中に複数あった謎の池は、ゲッセマネの園にあった搾油槽ね…
オリーブじゃなくて、生き物を搾ってエキスを抽出する搾油槽…
そして、困難な状態から救ってくれる天使ミカエルも、パイたちの前に現れました…
え?
これです…
ミーアキャット?
「míɚk`æt(ミーァキャット」と「mîḵā’ēl(ミカエル)」は、語尾が「t」と「l」の違いだけで、発音がよく似てますよね…
ミーアキャットのお陰で、パイとリチャード・パーカーは「死の苦しみ」を乗り越えられました…
まさに天使ミカエルです…
ミカエルとミーアキャットは、発音だけじゃなくて…
姿かたちも似てる…
OMG…
だから陽が沈むと、ミーアキャットは、パイを慰めようと集まって来たのね…
おそるべし、第10章…
うふふ。
まだあるわよね、第10章のつづき…
とっても大事なことが…
え?
はい…
「Book of Truth」…
「真理の書」です…
真理の書?
第10章の最終節には、こんな記述があります…
but first I will tell you what is written in the Book of Truth. (No one supports me against them except Michael...)
しかし私はあなたへ「真理の書」に何が書かれているのかを伝えておこう。(ミカエルを除いて誰もサポートしてくれない)
つまり「ミカエルだけが真理についてサポートしてくれる」という意味ですか?
そうです…
つまりこれは「ミーアキャットだけが真理についてサポートしてくれる」という意味…
ミーアキャットは、日暮れ近くになると、一斉に池から離れて木に登りました…
生体エキスを抽出する池の危険を教えるために…
あ、なるほど。
そしてパイは「真理の書」を手にし…
ついに「真理」を悟ります…
は? そんなシーンあった?
まずパイは「真実の書」のページを…
1枚1枚めくっていきました…
これは、たくさんの葉が重なり合って作られている、不思議な「蓮の花」でしょ?
「leaf」には「葉」という意味の他に「ページの1枚」という意味があります…
そして「leaf」が重ねられて作られたのが「book」なのです…
あれが「真実の書」だったの?
だから「leaf(葉・頁)」の中に「歯」があったのです…
「tooth(túːθ:トゥース)」と「truth(trúːθ:トゥルース)」の駄洒落ですね…
は!?
ある意味、究極のダジャレだ…
ちなみに、ダニエルの前に現れた「幻の男」は、不思議がるダニエルに対し、こんなことを言っています…
「あなたが地上に生を受けたその初めの日から、あなたの言葉は、すでに聞かれた。わたしは、あなたの言葉のゆえにきたのです」
つまり、ダニエルが真理を求める想いは、生まれる最初の日からあったと…
これも「パイの物語」には、きっちり再現されています…
最初の日から? どういうこと?
『ライフ・オブ・パイ』の冒頭シーンに映る「トラとコマドリと蓮」ですよ…
虎は「神・天の父」の象徴…
赤いコマドリは「子イエス」の象徴…
そして蓮は「真理」の象徴…
なんてことだ…
やはり、目に映るすべてのコトは…
メッセージ…
以上、第10章でした…
深かったわね、第10章も(笑)
ええ…
YOU、歌っちゃいなよ!
はい?
「はい?」じゃないわよ。
ここであの歌を歌わないで、いつ歌うの?
今でしょ!
あの歌?
そうだわ!やっぱり「あの歌」を歌わなきゃ!
もしや、あの歌とは…
ジャパニーズ・グレイテスト・シンガーソングライター、ユーミンの…
決まってるじゃない!
あたしも一緒に歌うからジョーもギター持って!
は、はい…
あなた、ハモりもイケるわよね?
たぶん… 大丈夫だと思いますが…
それじゃあ行くわよ。
「目に映るすべてのコトはメッセージ」といえば、やっぱりこの歌…
荒井由実の『やさしさに包まれたなら』…
つづく
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