「LIFE ON MARS?⑦~マイ・ウェイ~中篇」『深読み LIFE OF PI(ライフ・オブ・パイ)& 読みたいことを、書けばいい。』
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2019年9月19日深夜
スナックふかよみ
天才的なソングライティングだよね、ポール・アンカは。
だけどここからが本番だ。Cメロ以降は、もっと凄いよ…
その前にもう一回歌を聴いておきたいかも。
ぼくが歌ってもいいですか?
どうぞ、しげしげさん。
それでは、あったかい夜をプリーズ。
は?
「ウイスキーを頂戴」って意味よ(笑)
あ、なるほど。
超ベタな歌で恥ずかしいから、お酒の力を借りるってことね。
はい、どうぞ。
どうもありがとうございます。
じゃあ歌ってくださいな。『マイ・ウェイ』を。
ロマンチックが、したいなぁ。
今度は何?
うふふ。
「デュエットしたい」ってことね…
いいわ。あたしでよければ。
よろしく。
やたッ。
僕の君は世界一。乾杯。
お上手だこと(笑)
だけどお世辞でも嬉しい。どうもありがと。
この巨人ファンのおっさん、ただニコニコして座ってるだけだと思ったら…
なかなか隅に置けないわね。
では『マイ・ウェイ』のCメロを見ていこう。
最後にもう一回Cメロがあるから、正確に言うと「Cメロ1」かな。
1番が「最後の晩餐」で、2番が「ゲッセマネの園」でしたから、流れ的には…
だいたい予測がつくだろう。
Cメロ1の冒頭は、ある重要な「一言」から始まる。
Yes, there were times,
重要なひとこと?
「YES」のこと?
イエス。
高須クリニック。
そうじゃない。
「イエス」といえば「キリスト」だよ。
ごめんなさい。つい反応しちゃうのよね…「イエス」と聞いたら「高須クリニック」って…
あ、別に手術とか考えてるからじゃなくて…
「あっ」って聞いたら「小林製薬」みたいな…
ねえ、ちょっと待って…
この冒頭の「YES」が「イエス」のダジャレってこと?
そうだよ。
ここで日本語のダジャレなの?
ありえなくない?
日本語のダジャレとは限らないでしょ?
ギリシャ語でも「イエス」のことを「Ἰησοῦ(ieesuu:イエース)」と呼ぶのよ。
そういえば…
『マイ・ウェイ』を作詞したポール・アンカは、カナダ生まれのギリシャ正教徒で、幼い頃からギリシャ正教の教会で歌っていました…
だから、このダジャレを思いついたのかも…
マジで? にわかには信じ難いんだけど。
「YES」と「イエス」のダジャレって、結構ポピュラーなの。
ベストセラーになった「とある本」でも使われてるくらい…
マジで? 何ていう本?
今はまだ言えない…
あとでゆっくり教えてあげる(笑)
なによそれ。もう。気になるじゃん。
うふふ。話を歌詞に戻しましょ。
Cメロ1最初の一節「Yes, there were times,」とは…
「イエスには、こんなこともあった」
という意味ですね。
だから続く歌詞が、こうなのか…
I'm sure you knew
When I bit off more than I could chew
君も知っているはずだ
とうてい抱えられないような重荷を
わたしがひとりで背負った時のことを
ヤバい。歌いたくなってきちゃった…
ダメよ。また話が横道に逸れちゃう。
いいじゃないですか。
人生、より道主義だ。
わおっ!ありがとしげしげ!
やっぱりアンタっていい人ね!
ケツヤ、感激! 何も言えねぇ!
ふぅ。スッキリした。
そういえば、あの二人、遅いわね…
電球を買いに行ったまま、どこで寄り道してるのかしら?
まさか良ちゃん…
あの子のこと、さっそく食べちゃったとか…
まさか(笑)
良介山ママはヒロノブさんにぞっこんだから、浮気するなんてありえないって。
それにジョーはノンケでしょ。
ホント? それって本人から聞いたの?
そうじゃないけど、たぶん違うでしょ。
それにしても、こんなに暗いままじゃ困ったわね。
でも、いいじゃない?たまにはこういう雰囲気も。
あたし、子供の頃、停電とかわくわくしちゃった(笑)
わかります。その気持ち。
なんだか非日常的というか…
皆既日食とかに近いかもしれません。
みんな、いいかな?
『マイ・ウェイ』の歌詞に戻るよ。
あ、そうでした。
えーと…
つまりCメロ1で歌われる場面は「十字架を背負って歩いた受難の道(ヴィア・ドロローサ)」ということですね。
『ゴルゴダのへの道』ソドマ
それが、そうじゃないんだな。
え?
2番は「ユダの裏切り」までが歌われた。
それなら次は「イエスの裁判」でしょ?
大事なシーンを忘れちゃいけないわ。
どういうこと?
「I bit off more than I could chew(ひとりの人間が抱えられる以上のものを背負った)」の「chew(チュー)」が「jew(ジュー)」のダジャレになってるんだよ。
チューがジュー?
ネズミが焼けてるってこと?
「Jew」とは「ユダヤ人」のこと。
『ヨハネによる福音書』では、「イエスとユダヤ人の関係」をめぐって、アンナス、大祭司カヤパ(カイアファ)、ローマ提督ピラトの三人が審問を行った。
まずはユダヤ人代表のアンナスとカヤパの館…
『カイアファの前に立つキリスト』
マティアス・ストム
18:19 大祭司はイエスに、弟子たちのことやイエスの教えのことを尋ねた。
18:20 イエスは答えられた、「わたしはこの世に対して公然と語ってきた。すべてのユダヤ人が集まる会堂や宮で、いつも教えていた。何事も隠れて語ったことはない。
18:21 なぜ、わたしに尋ねるのか。わたしが彼らに語ったことは、それを聞いた人々に尋ねるがよい。わたしの言ったことは、彼らが知っているのだから」
18:22 イエスがこう言われると、そこに立っていた下役のひとりが、「大祭司にむかって、そのような答をするのか」と言って、平手でイエスを打った。
18:23 イエスは答えられた、「もしわたしが何か悪いことを言ったのなら、その悪い理由を言いなさい。しかし、正しいことを言ったのなら、なぜわたしを打つのか」
それからローマ人代表ピラトの官邸で…
『真理とは何か?』ニコライ・ゲー
18:33 さて、ピラトはまた官邸にはいり、イエスを呼び出して言った、「あなたは、ユダヤ人の王であるか」
18:34 イエスは答えられた、「あなたがそう言うのは、自分の考えからか。それともほかの人々が、わたしのことをあなたにそう言ったのか」
18:35 ピラトは答えた、「わたしはユダヤ人なのか。あなたの同族や祭司長たちが、あなたをわたしに引き渡したのだ。あなたは、いったい、何をしたのか」
18:36 イエスは答えられた、「わたしの国はこの世のものではない。もしわたしの国がこの世のものであれば、わたしに従っている者たちは、わたしをユダヤ人に渡さないように戦ったであろう。しかし事実、わたしの国はこの世のものではない」
18:37 そこでピラトはイエスに言った、「それでは、あなたは王なのだな」。イエスは答えられた、「あなたの言うとおり、わたしは王である。わたしは真理についてあかしをするために生れ、また、そのためにこの世にきたのである。だれでも真理につく者は、わたしの声に耳を傾ける」
18:38 ピラトはイエスに言った、「真理とは何か」。こう言って、彼はまたユダヤ人の所に出て行き、彼らに言った、「わたしには、この人になんの罪も見いだせない。
だから続く歌詞が、こうなんですね…
But through it all,
when there was doubt
I ate it up and spit it out
疑惑や不信があった時も
最後までやり通した
すべてを受け入れて
ハッキリと言ってやった
そして、こう続く…
I faced it all and I stood tall
And did it my way
わたしは困難に立ち向かい
わたしは高く立った
そうして成し遂げたのだ、my way を
ああ、なるほど…
「高く立った(stood tall)」とは、これのことだったのか…
『磔刑図』アンドレア・マンテーニャ
そして3番。
この『マイ・ウェイ』という作品において、最も重要なパートだといえる。
そうなの?
3番は、中盤の盛り上がり「Cメロ1」と、クライマックスの「Cメロ2」の間よね。
こんな構成になってるんだから、3番に課せられた役割はとても大きい。
流れ的には、十字架に掛けられた後の出来事ですよね…
では解説しようか。
3番の歌詞の深過ぎる意味を…
つづく
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