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エピローグ第14話:なぜミルドレッドの家の庭には古いブランコがあったのか?そしてなぜウサギのスリッパは報復に容赦なかったのか?『THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI(スリー・ビルボード)』徹底解剖


そういえば…

この『狩場の悲劇』のハリウッド版タイトル『SUMMER STORM』って、どっかで聞いたような…

せやな。

確か『スリー・ビルボード』の中で出て来たわ。

どこやったっけ?

・・・・・

ちなみに前回を未読の方はこちらからどうぞ。

映画『スリー・ビルボード』で「SUMMER STORM」という言葉が登場するのは、主題歌『Buckskin Stallion Blues』の歌詞の中だね。

1番の歌詞なので、冒頭とラストで二度登場することになる。

ああ、そうそう!これこれ!

以前も話したけど、この曲の歌詞は、映画の中でそっくりそのまま再現されていた。

歌詞の通りに映画が作られていたんだよね。

だからマーティン・マクドナーは、わざわざラストで流れる方は、1番の中の「she/her」が「you/your」に置き換えられた Amy Annelle 版を使ったんだ。

そして僕は、この歌詞がずっと気になっていた。

I heard your cry on a summer storm.

だって映画の中に「夏の嵐」なんて出て来ないからね。だから何か他の意味があるんじゃないかと思ったわけだ。

さっそくググってみたら『SUMMER STORM』という古い映画があることがわかった。

「まあ、ありがちなタイトルだよな」なんて思いながら何気なく調べていたら「19歳の娘が殺されて、真犯人は事件を捜査していた判事」という内容だったもんだから、僕は驚いた。

そしてその映画の原作が、チェーホフの長編小説『The Shooting Party(狩場の悲劇)』だということを知ったんだ…

だけどこの時の僕はなぜか、それ以上深く調べようとはしなかった…

ストーリーをサラッと飛ばし読みする程度で、細かい部分に注意を払わなかったんだ…

小説の日本語翻訳版の存在を知らなかったこともあるんだけどね…

あの時もっと『SUMMER STORM』にこだわっていれば、死んだアンジェラとウィロビーが愛し合っていたことや、アンジェラが犯人逮捕を望んでいなかったことに気付けたのに…

・・・・・

で、『狩場の悲劇』で19歳の美しい娘オリガが登場したあとは、どうなるの?

森の中で偶然遭遇した時は何も起こらない。オリガと子供たちは、すぐに走り去ってしまったから。

そして伯爵たち一同は森の中をどんどん進んで行き、やがて森番の小舎に辿り着く。

オリガが父と暮らす住居兼管理事務所みたいなところだね。

チェーホフ曰く

「松林の間の小さな四角の空地にちんまりと建っている森番の小舎」

だそうだ。

すると、森番助手の少年「そばかす顔のミーチカ」が伯爵一行に気付いて、あわててウォッカを差し出す。

さっきから茶でも飲むかのようにウォッカを飲んどるな。

とりあえず客が来たらウォッカや。しかもストレートで。

おそロシヤ…

ここからの描写も興味深いよ…

小舎から百歩ほど離れたところに、松林と同じくらい古めかしい鉄のベンチがあった。わたしたちはそこに腰をおろし、静かな美を余すところなく見せている五月の宵を鑑賞しはじめた……

中央公論社版(訳:原卓也)より

松林の間の小さな空地にちんまりと建つ森番の小舎から百歩ほど離れたところに、かなり古めかしいけど眺めのいい鉄のベンチがある?

なんか意味あるの?

まさにミルドレッドの家と、おんぼろブランコね…

ああ、そうか!

だからあんなにオンボロだったんだ!

<続きはコチラ!>


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