第121話「ポール・サイモンの ONE-TRICK PONY ⑩「Oh, Marion」後篇 『深読み ライフ・オブ・パイ&読みたいことを、書けばいい。』
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2019年9月19日
スナックふかよみ
教官、いよいよ残るは、後回しにしていたサビです。
ポール・サイモンが「マリオン」に泣きごとを言う、問題のサビ…
OK。
それでは「マリオン」の謎に迫ってみよう。
ポール・サイモンは、なぜ、自身が演じる主人公ジョナの妻の名を「マリオン」にしたのか…
「マリオン」という名前に、何か特別な秘密があるの?
そうだよ。
この歌は『Oh, Marion(オー・マリオン)』というタイトルなのに、1番2番3番には「マリオン」という名前が出てこない。
唯一その名前が呼ばれるのは、サビの冒頭だけ。
ちょっと妙だと思わないかい?
普通、タイトルが「人名」だったら、歌の中で何度も名前が繰り返されることが多い。決めフレーズだったりね。
ビートルズの『ヘイ・ジュード』もそうでしょ?
確かにそうかも。
ポール・アンカの『ダイアナ』とか…
あとは…
エディ・フィッシャーの『オー・マイ・マリア』とか…
なんでそんな古い歌ばかりなのよ。
女の人の名前がタイトルで、その名前が連呼されると言ったら、ヨーロッパの『キャリー』に決まってるでしょ。
十分古いと思いますが…
あっ!大事なの忘れてた!
マイケルの『ビリー・ジーン』と、ツヨシの『順子』と…
はいはい。例を挙げたらキリがないわ、人名タイトルの歌は。
話を進めて頂戴な、深読み名探偵さん。
はい。
では、もう一度『オー・マリオン』を聴いてもらいましょう。
Paul Simon『Oh, Marion』
サビは、こう始まります。
Oh, Marion
I think I'm in trouble here
I should have believed you
When I heard you saying it
ああ、マリオン
僕はヤバいことになったようだ
君を信じるべきだった
君のあの言葉を聞いた時に
覆水盆に返らず…
いわゆる「後の祭り」ってやつね。
そして後半では…
「マリオン」が「僕」に言ったとされるセリフが歌われる…
The only time
That love is an easy game
Is when two other people
Are playing it
その時だけなのよ
「愛」が簡単なことに思えるのは…
何の責任もない二人が
恋愛ごっこをしている時だけ…
真理ね。
結婚して子供が出来て「家族」になったら、もう「ただの男と女」じゃない…
そこには、いろんな責任がついてまわる…
そういうことを聞くと、結婚って、いろいろ考えちゃいますね…
付き合い始める時は、ただその人が好きなだけなのに…
だけど、いいものよ、結婚って。
たった一年で出戻ったあたしが言うのも何だけど。
いいことも、悪いことも…
いろいろあったのね、きっと…
だけどもう、ほとんど忘れちゃった。四半世紀も前の話だから(笑)
ちなみに文代さん、ご結婚は?
あたしは…
そういうの、向いてないから…
だけど文代さんって、いっつも凄い恋とかしてそう。
静かだけど、すっごい情熱的なやつ…
地中海を舞台にしたオトナの恋愛小説みたいな…
うふふ。そんな恋、してみたい(笑)
・・・・・
何デレーっとしてんのよ、岡江ッチ!
いったい「マリオン」って女は何者なの?
サッサと深読みして頂戴!
あ、はい…
まずこの映画のストーリーを整理しておきましょう。
ポール・サイモンが物語を考え、脚本を書き、主演をした映画『ワン・トリック・ポニー』に登場する「マリオン」は、主人公ジョナの別れた妻の名前…
「マリオン」は、ジョナが大スターだった頃に結婚し、一人息子マティをもうけた…
その後ジョナは、時代の流れに取り残され、レコードが売れなくなって落ちぶれてしまう…
昔のバンド仲間と一緒に地方のライブハウスを転々とし、昔ヒットした歌ばかり歌う生活…
もちろん不安はあったが、それを直視せず、束の間の快楽で気を紛らわし、未来の見えない日々が続いていた…
その間ずっと「マリオン」は息子マティと二人で暮らしていたが、父親不在で育つことへの悪影響を心配し、ジョナに要求を出す…
「普通の父親らしいことをする」そして「チャート入りするような曲を歌ってスターに戻る」ということ…
ジョナはマティと過ごす時間を増やし、幼い息子にとって良い父親になることを努力する…
そして音楽業界のお偉方の意見に従い、売れっ子プロデューサーのもとでカムバックを飾る新曲を録音…
しかしそれは、ジョナという人間にとって「死」を意味するものだった…
なんだか切ない父と子の物語ですね。
よくある話といえば、それまでなんだけど…
似たような映画あったわよね? 何だっけ?
確か、すっごく有名な映画だと思うんだけど…
かつて世界の頂点に立って、その後は落ちぶれてダメ人間になって、妻とは別れて、息子にとって良い父親になろうと努力して、無理してカムバックしようとして、それによって「死」を迎える...
これって『THE CHAMP(チャンプ)』じゃない?
あっ、そうそう!チャンプよ、チャンプ!
子供の頃、テレビで見て、泣いたわー!
1979年の映画なんですね…
『ワン・トリック・ポニー』が公開された年の前の年だ…
あんたは若いから知らないだろうけど、『チャンプ』ってリメイク作なのよ。
1931年に大ヒットした映画なの。
ストーリーもさることながら、ポスターの雰囲気も似てません?
チャンプとポール・サイモンは…
確かにどっちも頭頂部が赤っぽくてワイルドな表情だけど…
さすがに、たまたまでしょ(笑)
これは偶然ではない…
え?
ポール・サイモンが「音楽版チャンプ」ともいえる脚本を書き…
劇中歌として『オー・マリオン』を書いたのは…
ある人物に、重要なメッセージを伝えたかったからだ…
メッセージ? なにそれ?
ちなみに…
この『チャンプ』という物語を書いた人、誰だか知ってる?
知らないわよ。誰?
「フランシス・マリオン」という女性だ。
Frances Marion(1888-1973)
マリオン!?
この人が『オー・マリオン』の「マリオン」なんですか?
よく見なさいよ。『オー・マリオン』の7年前に亡くなってるじゃん。
それに「マリオン」は苗字。ファーストネームじゃなくて。
いや、彼女のファーストネームは「マリオン」なんだ。
は?
でもアメリカ人の名前は「名・姓」の順番でしょ?
ファーストネームは「フランシス」よ。
彼女の元々の名前は「Marion Benson Owens」という。
ファーストネーム「マリオン」の後に「母方の苗字」と「父方の苗字」が続くものだ。
だけど彼女が10歳の時に両親が離婚し、彼女自身も30歳になる前に結婚と離婚を二度も繰り返したので、苗字がいろいろと鬱陶しくなったんだろう…
それ以降、公私共に「フランシス・マリオン」と名乗るようになった。
じゃあ「フランシス」は何? どこから来たの?
ハリウッドに移るまで暮らしていた故郷サンフランシスコからだろうね。
「聖フランシスコの街から来たマリオン」で「フランシス・マリオン」だ。
あ、そういうことか…
熊本県八代市出身の八代亜紀や、三重県鳥羽市出身の鳥羽一郎みたいなものね。
黒木瞳と瀬戸朝香もそうよ。
厚切りジェイソンも、第二の故郷「厚木」から。
「出身地+名前」の有名人はそれくらいにして…
フランシス・マリオンは、とても重要な人物なのよ…
サンフランシスコからハリウッドに移った最初のうちは、美貌を生かしてモデルや女優として活動していたの…
だけど16歳の頃からサンフランシスコで新聞記者をしていたくらい聡明だった彼女は、女優をしながら映画制作を学び、すぐに脚本家・監督としてデビュー…
そして『ビッグ・ハウス』で第3回アカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞し、『チャンプ』で第5回アカデミー賞の脚本賞を受賞…
もちろん女性では初めてだし、複数回受賞したのは彼女が初…
40歳になる頃には、ハリウッドで最もギャラの高い脚本家となっていたの…
50代からはMGMの制作部門を取り仕切るプロデューサーとなり、脚本家としての活動は終わってしまうけど、生涯で300本の脚本を書き、130本の映画を製作した…
まさにアメリカを代表する偉大なライター、映画人よ。
すごい…
女優からスタートして、脚本家になって制作側に回り、女性でありながら権威ある映画祭で認められ、その国の映画界のトップになるって…
前の曲『How the heart approaches what is yarns』に出て来た『THE BLUE LIGHT(青い光)』のレニ・リーフェンシュタールと似てますね…
ちなみに『チャンプ』は、フランシス・マリオンの実生活から生まれた物語なんだよ。
え?そうなの?
フランシス・マリオンは、1919年に元全米チャンピオンのフレッド・トンプソンと三度目の結婚をした。
元全米チャンピオン? ボクシングの?
トンプソンはあらゆる種目に長けており、大学時代に全米アマチュア・スポーツの「オール・ラウンド・アスリート」年間チャンピオンに三度選ばれたほどの才能の持ち主だった。
しかしアメリカが第一次世界大戦に参戦すると、トンプソンは陸軍に従軍牧師として配属され、基地内で大怪我をして入院することになる。
アスリート生命を絶たれてショックを受けていたトンプソンだったが、たまたま他の入院患者の見舞いに来ていたフランシス・マリオンが彼に一目惚れ…
やがて二人は激しく恋に落ち、終戦後に結婚した。
トンプソンは得意の乗馬術を活かしたアクション映画俳優に転身し、妻マリオンが夫のために脚本を書き、時には監督もするという、文字通りの夫婦二人三脚の生活が始まる。
結婚七年目には、38才という当時ではかなりの高齢出産で念願の子供を授かり、幼少時から波乱万丈だった彼女の人生に、ようやく落ち着いた幸せな生活が訪れようとしていた…
ゴクリ…
しかしその二年後…
トンプソンは、厩舎で馬の世話をしている最中に釘を踏んでしまい…
それが原因で破傷風になって、急死してしまう…
え…
幼い息子を抱えたマリオンは、三年後に旧知の映画監督と再婚…
だけど結婚生活は上手くいかず、すぐに離婚することになってしまう…
それ以降マリオンは再婚することなく、女手一つで息子を育てながら、業界トップの脚本家として活動を続けた…
『チャンプ』の息子ように、マリオンの息子も新しい家庭に馴染めなかったのかしら…
そういえば『チャンプ』でも「馬」は重要な役割だったわね…
チャンプは息子にポニーをプレゼントして、その仔馬は「リトル・チャンプ」と名付けられる…
その通り。
父が子に贈ったポニーの「リトル・チャンプ」とは、イエス・キリストが乗った子ロバのことだから。
『キリストのエルサレム入城』
ジョット・ディ・ボンドーネ
は?
映画『チャンプ』は、脚本家フランシス・マリオンの実生活での出来事と、聖書の物語を融合させて作られている。
主人公チャンプは「神」、息子は「幼子イエス」が投影されたキャラクターだ。
そして最後に息子を託される母は「マリア」、突然の息子の出現に驚いていた彼女の夫は「ヨセフ」だね。
なるほど、言われてみれば確かにそうかも…
なんかそれっぽいシーンも、いくつかあった気がする…
脚本家の実生活での出来事に、聖書が重ねられて出来た物語…
まさにポール・サイモンの『ワン・トリック・ポニー』です…
同じように業界の頂点に立ったライターとして、ポール・サイモンはフランシス・マリオンをリスペクトしていたのでしょう…
だけどさ、フランシス・マリオンは『ワン・トリック・ポニー』の7年前に亡くなってるのよ。
いくらポール・サイモンが『オー・マリオン』なんて歌を歌っても、そのメッセージは伝わらないじゃん。
ポール・サイモンがメッセージを送りたかったのは「マリオン」じゃないんだよ…
「フランシス」の方だ…
は?
1980年当時、ちょっとでも映画に詳しい人なら、『ワン・トリック・ポニー』の物語と「マリオン」という名前を聞けば、誰もが「フランシス・マリオン」の名を思い浮かべたはず…
前年にリメイクされた『チャンプ』が大ヒットして、フランシス・マリオンは再注目されていたからね。
だからポール・サイモンは『オー・マリオン』というタイトルで曲を作り、愛する女に去られてドン底にある男の想いを切々と歌ったんだ…
音信不通になってしまった「フランシス」という女性に、その想いを伝えたくて…
去って行った女が「フランシス」って名前なの?
そう。「フランシス」という名の娘さんだ。
それならダイレクトに『オー・フランシス』ってタイトルにすればいいじゃん。
そのほうがハッキリ伝わるでしょ。
直接名前を出すのが憚れる相手だったんだよ。超がつくほどの有名人だから。
ポール・サイモンは、その子のことを直接口に出して言えなかった。
歌の中にその子の影をチラつかせることは出来なかったんだよ。
そういう事情があったから、ポール・サイモンは「フランシス」を想起させる「マリオン」という名前を使った。
それがこの『Oh, Marion』という歌における最大のトリックだ。
あれ?
当時ポール・サイモンのもとを去っていった女性って…
キャリー・フィッシャーですよね?
そうだよ。
「フランシス」とは、キャリー・フィッシャーのこと。
彼女の本名は「キャリー・フランシス・フィッシャー」という。
Carrie Frances Fisher(1956-2016)
嘘…
嘘なんてつくはずないだろう。
僕の目を見てごらん。これが嘘をついている人の目かい?
絶句です…
なんて手の込んだメッセージなの…
まさに言葉の迷路だわ…
モリアーティ教授も真っ青…
キャリー・フィッシャーがポール・サイモンと交際するようになったのは、まだ彼女が二十歳そこそこの頃だった…
かたやポール・サイモンは、アラフォーでバツイチ子持ちのおじさん…
スターの両親をもつお嬢様で、若くて自由奔放な彼女に振り回されていたことは、想像に難くない…
そういえば、2曲目の『That's why God made the movies』では…
いつも彼女が「ちょっと行って来るね。すぐ戻る」と言って出て行ったまま、しばらく音信不通になってしまうことを嘆いていました…
『ブルース・ブラザーズ』の撮影に出かけたキャリー・フィッシャーが、そのまま帰って来なかったというのも、わからなくはないわ…
意気投合して結婚寸前までいったダン・エイクロイドは、ポール・サイモンより一回りも若いし、元気でハチャメチャ…
ポール・サイモンって、ユーモアセンスは抜群だけど、地味で真面目そうだもんね…
ちょっと重いというか…
世界一有名なプリンセスだし、まだまだ二十代前半だし、突然「ママ」になっちゃうのは、やっぱりちょっと考えちゃう…
『ママはアイドル!』の中山美穂も、いろいろ大変そうだった…
遠く離れたところにいる「マリオン」とは、遠く離れたところに行ってしまった「フランシス」のことだったのね…
「ああマリオン。僕は今かなりヤバいことになっている」っていう泣き言も…
「フランシス」に向けられたメッセージだった…
キャリー・フランシス・フィッシャーに…
そういうこと。
ところでキャリー・フランシス・フィッシャーの「フランシス」は、どこから来たフランシス?
彼女の「フランシス」は、アッシジのフランチェスコこと聖フランシスコから取られたクリスチャンネームね…
祖父レイモンド・フランシス・レイノルズ、そして母のデビー・フランシス・レイノルズと、親子三代にわたって「フランシス」をミドルネームに使っていたの…
親子三代で?
なんか強い思い入れがあるのかしら?
キャリー・フィッシャーの祖父レイモンドは、とても信仰心の強い人で、聖フランシスコの清貧思想を実践していたんだ。
テキサスで手作りの掘立小屋に住み、出来る限り自給自足の生活をしていたらしい。
お腹が空いたら野ウサギを捕まえに行ったりとか…
『北の国から』の吾郎さんみたいな、おじいちゃんだったのね。
そんな家で育った美少女デビー・レイノルズは、さながら蛍ちゃん…
のちに『雨に唄えば』でアイドル的人気を獲得する彼女が、少女時代にそんな暮らしをしていたなんて面白いわよね…
A面最後の曲『Oh, Marion』は、いろんな意味で驚かされる歌でした…
この調子で行ったらB面も相当濃いものになりそう…
じゃあ次の曲に行きましょ。6曲目は『Ace in the Hole』…
待って…
ちょっと、待って…
どしたの?
なんか気になるのよね…
気になるって何が?
アタシたち、これで全員?
・・・・・
は?
みんな揃ってる?
何言ってるの、ケツヤさん。
岡江クン、大林少年君、文代さん、しげしげさん、ジョー、そしてあたし…
みんな、いるわよ。
ひとり… 足りなくない?
・・・・・
急にどうしたのよ。推理小説じゃないんだから…
誰もいなくなってません。
良ちゃんは?
は? 良ちゃんママは出て行ったきり戻って来てないでしょ?
そうなんだけどさ…
何だか、ここにいたような気がするのよね…
気配が残ってるというか…
・・・・・
んもう。やめて頂戴。
生霊みたいなこと言わないでよ。怖くなっちゃうじゃない。
気のせいよ、気のせい!
うん…
そうよね、気のせいよね、きっと…
うふふ。それじゃあ6曲目に行きましょ。
よろしく、深読み名探偵さん。
あ、はい…
@スナックKEMPY!
アタシ、ついにボケてきたのかしら…
スースー... スースー...
確かに良ちゃんを送り出したはずなのに…
それとも良ちゃんが起きた夢をアタシが見てたってこと?
スースー... スースー...
まあ考えても仕方ないわ。目の前にいるんだから。
それにしても今夜は、おかしな夜…
ムニャムニャ… ムニャムニャ…
あら、また寝言…
夢が始まったのね。
ムニャムニャ… ヒロクン…
ヒロクン…
…
.
え? ヒロくん、今なんて言った?
本気でこんなこと言えないでしょう。
たぶんギャグです。
でも、現に書いてあるじゃん!
「自分が読みたいからという理由で書かれた文を、読まされる相手は辛い」って!
しかもレビューのトップだし!
ウケる。
どうにも許されるわけないでしょ!
いいんですよ、あのままで。ネタにもなるし。
どうでもいいなんて思わない!
そもそもヒロくんが、あんなふざけた内容にするから悪いのよ!
いきなり「あなたはゴリラですか?」なんて意味不明の質問から始まって、しかもそこで「YES」を選んだりって、わけわかめ!
昨日来たお客さんも言ってたわよ…
さっそくアマゾンに中古本が1円で売りに出てたって…
噂話ですよ。そんな話は嘘ですから。
みんな家宝にしてるそうです。
んもう!ふざけないで!
嘘つきなのはヒロくんのほうでしょ!
わたしが…
嘘をついてるように見えますか?
実用書を謳ってるくせに、実利的な文章術も書いてないし…
本の結末も、あんなんだし…
ありがたい言葉がぎっしり詰まった本を、最後からめくれるような筈はない…
昔からそう決まっています。だからいいんです。
誤魔化さないで!ズルい!
ヒロくんの嘘つき!
わたしの瞳を見てください。
これが嘘をついてる人の目ですか?
それが嘘つきだって言うの!
いったいヒロくんのどこに瞳があるの?
そんなものはないでしょ!
カッ...
え?
・・・・・
ひ、ヒロくんのそんなマジな目…
初めて見た…
コレデモ… ワタシガ…
もういいって…ヒロくん…
怖いってば…
ウソヲ ツイテルヨウニ...
ミエマスカ...
ひ、ヒロくん…
お願いだから見つめないで…
そんな瞳でアタシを見つめないで!
アノコノコトハ イエナイ…
アノコノカゲハ ミセナイ…
キャーーーーー!
ゴメンナサイ、ヒロクン...
ウタガッテ、ゴメンナサイ...
ユルシテ、ヒロクン...
ヒロクン...
なんか凄い夢見てるみたいね…
これまでにない怯え方だわ…
いったい何があったのかしら?
つづく
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