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コーエン兄弟・徹底解剖

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#コメディ

「GO NATHAN!!」『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖14

さて、この映画のキーとなる子守唄『DOWN IN THE WILLOW GARDEN(ROSE CONNELY)』の意味を理解してもらったということで、今回はいよいよラストシーンの謎に迫るよ。 前回を未読の人はコチラをどうぞ! せやけど驚いたな。あの曲の歌詞は完璧にイエス最後の24時間を表しとった。 やっぱりこの映画は「イースター映画」なんとちゃうか? 僕も最初はそう考えたんだ。だってラストシーンのBGMがこの曲だからね。 でも、コーエン兄弟はそんな「単純なこと

「失われた息子たち」『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖12

さて今回は脱獄兄弟ゲイルとエヴェルについて解説しよう。 前回を未読の人はコチラをどうぞ! あの脱獄シーンは迫力あったな。富田林署の間抜けな逃走劇とは大違いや。泥の中から現れるんやで。 そんで地上に這い上がって、雨の中、雄叫びをあげる… 全身ドロドロの姿と、おドロドロしい音楽が相まって、すっごくカッコよかった! そして弟のエヴェルを泥の中から引っこ抜くんだ(笑) もうタイトルの時点でバレバレやけど、この兄弟のモデルはアダムとイブの息子「カインとアベル」やな。

「駄洒落魔コーエン兄弟」『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖11

さてアリゾナ家のシーンの解説を続けよう。 前回を未読の人はコチラをどうぞ! 窓から2階に忍び込んだハイと部屋をハイハイしまくる五つ子赤ちゃんたちの物音に、ネイサン・アリゾナ氏は天井を見上げた。 この画にも面白い仕掛けが施されている。 まずは「眼鏡」だね… メガネ?なんでやねん。 この映画では、わざとらしく登場人物が「何か」を観客に向かって見せるシーンが多いんだ。 そしてそこには必ず何らかの意味が込められている。 前回解説した『スポック博士の育児書』もそうだ

「なぜ乳児連れ去りは4月12日に行われたのか?」『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖10

さて、今回はアリゾナ家の謎を解説しよう。 前回を未読の方はコチラをどうぞ! ネイサン・アリゾナの改名前の名前は、ドイツ系の苗字「ネイサン・ハフハインツ」やった。 そんでアリゾナ家のモデルはドイツ発祥のユダヤ名家「ロスチャイルド家」で、どっちの家も「5人の男兄弟」がおって、ひとりの名前がネイサンや。 ついでに言うとネイサン・ロスチャイルドの嫁の名前は「ハナ」で、ネイサン・アリゾナの嫁は「花」を意味する「フローレンス」やで。 その通り。どうもありがとう。 11分間

「公園兄弟」『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖9

大変だ、もう第9回か。スピードアップしなくちゃね。 まだ映画が始まって7分30秒のところだよ。 こんなマイナー映画をここまで語るのは、世界でオッサンが初とちゃうか? コーエン兄弟に失礼だよ。この映画はれっきとした名作だ。 さて、前回の続きから始めよう。ついにエドとハイの子作りキャンペーンが始まった… エド、かわいい。 これは『創世記』第3章「失楽園」の第16節だね。神はイヴにこう言った。 Your desire will be for your husban

「失楽園」『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖8

さて、引き続き映画冒頭シーンを解説していこう。 前回ハイは、ついにエドへ愛の告白をした… 未読の人はコチラをどうぞ! そしてハイは約1年の刑期を終え、プロポーズするためにエドのところへ向かう。 今回は犯罪者としてではなく、ひとりの男として… エド「右向け右!」 ハイ「今日は自分の足でここまで来たんだ、エド…。何にも束縛されない自由な人間として、君にプロポーズするために…」 ハイの語り:そして、そうなった… 即結婚式(笑) しかも臨時特設会場やったな。

「続々・アダムとイヴ」『赤ちゃん泥棒(RAISING ARIZONA)』徹底解剖7

お待たせしました。いよいよ三度目の投獄だよ。 ムショ入りをワクワクするっちゅうのもオカシナ話やけどな。 前回を未読の人はコチラをどうぞ! 前回出所したハイは、すぐにコンビニ強盗を行う。 それまでの彼の強盗は、ムシャクシャして場当たり的にやってしまうものだったんだけど、今のハイにはコンビニ強盗をする「ちゃんとした理由」があった… ハイの語り:懲役刑には、犯罪者の社会復帰に向けたリハビリ的意味合いと、犯罪者が更生して雪辱を晴らすリベンジ的意味合いがある。こんなことを

「続・アダムとイヴ」『赤ちゃん泥棒(RAISING ARIZONA)』徹底解剖6

さて、映画『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』の冒頭シーンの続きを解説しよう。 ニコラス・ケイジ演じる主人公ハイが一度目の仮釈放を受けた後からだ。 前回はコチラ! せっかく娑婆へ出れたのに、ハイはまたすぐにコンビニ強盗を起こしてしまう。 その言い訳がまた最高だ。 ハイの語り:俺は更生し真っ当な生き方をしようとしたんだが、ホワイトハウスにレーガンがいる時点で、そいつは無理なハナシだった…。俺にはよくわからないが、レーガンはちゃんと仕事をする男だと皆が

「アダムとイヴ」『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖5

では、いよいよ本編の解説に入ろう。 前回を未読の人はコチラをどうぞ! 映画『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』は、11分にもわたる主人公ハイのモノローグ(ひとり語り)シーンから始まる。 受刑者の撮影係エドとの出会い、更生プログラム、刑務所入りを繰り返しながら育まれる二人の愛、結婚、ハイの社会復帰、不妊の発覚、赤ちゃん泥棒の決意… これだけの出来事が、ハイの淡々とした語り口と軽快な音楽にのせて描かれるんだ。 ハッキリ言って、映画史上に残るオープニング

映画のトリセツ:後篇「way-homerって何?」『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖3

さて、「トリセツ」と言いながらズルズルともう第3話になっちゃったんで、今回で「グレンとドット夫妻による訪問シーン」解説をひとまず終わらせよう… 前回を未読の人はコチラをどうぞ! これが問題のシーンや。 前回解説した通り、グレンのジョークでハイは不機嫌になった… 「ローマ法王(ヨハネ・パウロ2世)ジョーク」や「電球とポーランド人ジョーク」が、自分たち夫婦に向けられていると感じたからだ… 劇中では明らかにされないけど、エドの旧姓はポーランド系の苗字なんだよね。 ハ

映画のトリセツ:中編『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖2

さて前回に引き続き、ドット&グレン夫妻の訪問シーンを解説していこう… このシーンは映画『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』を理解するための「トリセツ」的役割になっていて、ストーリーを順を追って解説する前に、まずこちらから説明しておく必要がある… ちなみに前回はコチラ! このシーンの登場人物はこの二組の夫婦や。 動画も見といたほうがエエな。 前回は、寝室での女性陣二人による会話を解説したね… 今回は居間での男性陣の会話だ。子供たちが大暴れしている中

映画のトリセツ前篇 ~『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖1

はぁ… どうしたんや、ため息なんかついて。 はあちゅうとしみけんの結婚にショックでも受けたか? そうじゃなくてね… コーエン兄弟の『RAISING ARIZONA(邦題:赤ちゃん泥棒)』の解説を書こうと思って映画を観たんだけど、あまりの衝撃にショックを受けたんだ… え!?ちょっと待って… 今まで観たことなかったの!? 前に予告編で書いてなかった? あれは、映画のトレーラーとwikiにあった「あらすじ」を見て感じたことを書いただけ… 僕はその時、ニコラス・