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「駄洒落魔コーエン兄弟」『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖11

さてアリゾナ家のシーンの解説を続けよう。

前回を未読の人はコチラをどうぞ!

窓から2階に忍び込んだハイと部屋をハイハイしまくる五つ子赤ちゃんたちの物音に、ネイサン・アリゾナ氏は天井を見上げた。

この画にも面白い仕掛けが施されている。

まずは「眼鏡」だね…

メガネ?なんでやねん。

この映画では、わざとらしく登場人物が「何か」を観客に向かって見せるシーンが多いんだ。

そしてそこには必ず何らかの意味が込められている。

前回解説した『スポック博士の育児書』もそうだったよね?

他にもそうゆうものがあるの?

何度も出て来るビールの「バドワイザー」がそうだったでしょ?

あれは創世記で神がアダムに「植物を食料として与える」と何度も言うことを表していた。ビールは麦とホップから作られるし、「バド」には「つぼみ」という意味もある。

そして極めつけが、オムツの「HUGGIES(ハギーズ)」だね。

数ある紙オムツの中で、なぜかハイは「HUGGIES」にこだわる。

警官に追われながらスーパーの中を逃げるシーンでも他のオムツには手を出さず、必死で「HUGGIES」を探すんだ。

そして矢鱈と画面にアップで映される…

パンパースやムーニーじゃダメなの?

残念ながらダメだね…

だってこの映画における「HUGGIES」とは「生贄として屠られた子羊」という意味だから…

ハァ!?

主人公ハイ・マクダノーの「McDUNNOUGH」とはスコットランド系の苗字だ。

そしてスコットランドには「羊の内臓」を使った郷土料理「HAGGIS(ハギス)」がある。

この映画では、音がほぼ同じの「HUGGIES」と「HAGGIS」が掛けられているんだね。

ちなみにハギスは「マズい民族料理」の代表格としてジョークのネタにされることが多かった。

かつてフランスのシラク大統領はロシアのプーチン大統領との会談で「ハギスみたいなマズい料理を喜んで食べる連中は信用できない」とイギリスを揶揄する発言をした。

これにイギリス国民の間で非難の声が上がったんだけど、イギリスのストロー外相は「ハギスに限れば、その通り」とジョークで答えたという逸話がある…

それ、事態をややこしくしとるんとちゃう?

「イングランド人は信用できるけどスコットランド人は信用できない」って言うてるようなもんやんけ…

その後のイングランドとスコットランドがどうなったかは、言うまでもない…

でもなぜスコットランド料理のネタがこの映画に?

ジョエル・コーエンは、スコットランド系の苗字をもつフランシス・マクドーマンドと結婚した。たぶんそれがきっかけでスコットランドの郷土料理ハギスを初めて食べる機会があったんじゃないかな?

そしてオムツのハギーズと名前が似てることを面白いと考えた。「羊の内臓とオムツ?これ、使えるんじゃね?」と…

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