「失われた息子たち」『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖12
さて今回は脱獄兄弟ゲイルとエヴェルについて解説しよう。
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あの脱獄シーンは迫力あったな。富田林署の間抜けな逃走劇とは大違いや。泥の中から現れるんやで。
そんで地上に這い上がって、雨の中、雄叫びをあげる…
全身ドロドロの姿と、おドロドロしい音楽が相まって、すっごくカッコよかった!
そして弟のエヴェルを泥の中から引っこ抜くんだ(笑)
もうタイトルの時点でバレバレやけど、この兄弟のモデルはアダムとイブの息子「カインとアベル」やな。
弟の名前「Evelle」は「Abel(エィベル)」の単純な言い換えやから、まだわかる…
せやけど、なんで兄の名前は「Gale」なんや?
「Cain(ケイン)」と「ei」の発音だけしか合っとらんやんけ!「G」と「L」はどっから来たんや!?
たぶん特撮怪獣映画『サンダ対ガイラ』の「ガイラ」だね。
ゲイルが泥と雨でズブ濡れになるのは、ガイラが海底から出現したことの再現だろう。
ハァ!?
『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』!?なんでコーエン兄弟が!?
この映画、実は日米合作でね…
アメリカでは『WAR OF THE GARGANTUAS(ガルガンチュア兄弟の争い)』というタイトルで公開され、多くのファンがいることで知られるんだよ…
あのブラッド・ピットも「人生で最初に観た映画」として思い出を語っているくらいだ…
あのブラピまでもが…
この映画、日本では「海幸彦と山幸彦」神話がモデルになったとされている。
海で魚を獲って暮らす兄・海幸彦と、山で狩りをして暮らす弟・山幸彦は、ある日お互いの道具を交換し、それがきっかけでトラブルになってしまう。そして最後は弟・山幸彦が兄・海幸彦を打ち負かすというストーリーだね。
勝利した弟・山幸彦の家系は正統となり、彼の孫が初代天皇である神武天皇となるんだ。
ん?兄弟のバトルといえば…
その通り。「カインとアベル」だ。
欧米人にとって『サンダ対ガイラ』とは、「カインとアベル」をベースにした怪獣映画という認識なんだよね。
菜食主義者のサンダは「神に農産物を捧げたカイン」で、肉食主義者のガイラは「神に肉を捧げたアベル」なんだよ。
だから映画のラストは、サンダがガイラを成敗し、そのまま両者が海底火山の噴火に巻き込まれ姿を消すというものになっている。
片方が勝者となる「海幸彦山幸彦」ではなくて、完全に「カインとアベル」の物語だよね。
カインとアベルは共に消えて、その後に生まれた第三子セツの子孫が正統となるんだから…
なるほど、確かにそうだ…
さて、脱獄シーンの次は、いきなり赤いポマードの缶がアップで映し出される。
場所は郊外のガソリンスタンドのトイレだ。
おそらく併設されているコンビニから盗んだんだろうね…
アップで映される物には必ず何か意味があるんやったな。
その通り。
実はね…
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