「GO NATHAN!!」『RAISING ARIZONA(赤ちゃん泥棒)』徹底解剖14
さて、この映画のキーとなる子守唄『DOWN IN THE WILLOW GARDEN(ROSE CONNELY)』の意味を理解してもらったということで、今回はいよいよラストシーンの謎に迫るよ。
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せやけど驚いたな。あの曲の歌詞は完璧にイエス最後の24時間を表しとった。
やっぱりこの映画は「イースター映画」なんとちゃうか?
僕も最初はそう考えたんだ。だってラストシーンのBGMがこの曲だからね。
でも、コーエン兄弟はそんな「単純なこと」をしなかった。
おそらく20世紀FOXから声がかかった時は「イースター向けのコメディ映画を作れ」って言われたんだろう。
そして自主製作映画『ブラッド・シンプル』で注目されたばかりの新人脚本家&新人監督であるコーエン兄弟には、まだ仕事を選ぶことは出来なかった。
だけど彼らはユダヤ人だ。キリスト教徒のお祭り「イースター」の映画を作ることは、はっきり言って興味なかったと思う。
だから彼らは「パッと見」わからないように様々な細工を仕掛けた。
復活祭の物語に見せかけて「全然違う物語」を映画の中に仕込んだんだね…
それが「創世記」や「出エジプト記」などヘブライ聖書の物語っちゅうことか?
だね。
だからコーエン兄弟は、ユダヤ人(J)ネタやユダヤジョークを映画の中に散りばめた。
それらが「ひとつの壮大な物語」になるようにね…
ひとつの壮大な物語?
その総仕上げがあのラストシーンなんだよ。
あのラストシーンの各描写で、コーエン兄弟は種明かしをしているんだね…
タネ明かし!?
ではシーンを見ていこう。
盗んだ赤ちゃんネイサン・ジュニアをアリゾナ氏に返却し、我が家へ帰ったハイは夢を見る…
ハイの語り:その夜、俺は夢を見た。俺はイーサーのように光り輝き、宙を舞う魂となった。そんな俺の前に、未来の光景が次から次へと現れる。俺の人生に登場した人たちの姿が朧げに見えてきた…。皆それぞれ自分の人生に取り組んでいる姿が…
イーサー?
「ether」だよ。日本語でいうところの「エーテル」だね。かつて光を運ぶ物質だとされていたんだ。
今では「イーサネット」という言葉が普及したから「イーサー」という読み方も知られるようになった。
しかしここでは「イエス」の駄洒落として使われている。イスラム世界ではイエスのことを「イーサー」と呼ぶからね。
どこまでも「イースター映画」を装うんだよね、コーエン兄弟は(笑)
さすが変態!いい意味で!
まず見えてきたのは、脱獄兄弟のその後だ…
ハイの語り:ゲイルとエヴェルが刑務所(prison)に戻ってゆく姿が見えた…。それで良かったんだと思う…。決してあいつらを見下してるわけじゃない。何だかんだ言って、あいつらには憎めないところがある。でもまだこっちの世界に出て来る準備が整っていないんだ…
かわいそう、スノーツ兄弟…
仕方ないね、カインとアベルだから…
これからアダムとイヴと子孫たちが築いてゆく世界に、彼らの居場所は無いんだ…
彼らが去ったことでアダムとイヴは第三子セツ(セト)をもうけ、そこから8代後にノアが生まれ、さらに10代後にアブラハムが生まれる。
穴の左前方にあるコンクリートの台みたいなのは何やろな?トーチカか?
いいところに気付いたね。あれがこの場面の「隠し味」なんだ。
実はあれ…
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