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人は誰かのためなら前を向ける。それが人間だろうと猫だろうと。

Netflixで「ボブという名の猫」を観た。めちゃくちゃ良かった。泣いた。
猫が出てくるだけの映画じゃなかった。

あらすじはこんな感じ↓

ロンドンでプロのミュージシャンを目指すジェームズは、夢を果たせず、薬物に依存、家族にも見放され、ホームレスとしてどん底の生活を送っていた。そんな彼のもとに迷い込んできた一匹の野良猫。足をケガしていたその猫はボブと命名され、ジェームズはそんなボブを有り金をはたいて看病する。それ以来、いつも一緒に行動をともにするジェームズとボブ。そんな彼らの姿は次第に世間の注目を集めるようになり……。

(引用元:映画.com


最初、ジェームズのどん底っぷりがすさまじく、見るのが辛い。

薬物依存から更生中。家も仕事もない。
路上でギターを弾いて歌を歌っても誰も足を止めない。
お金ではなく、食べかけのサンドイッチを放り込まれる。
食べられそうなものを探してゴミ箱を漁る。
雨が降る。息が白い。傘も、しのぐ場所もない。

つらい。ひたすらにつらい。
比べるなら、ウィルスミスが実の息子と共演した映画『幸せのちから』。
あのどん底部分よりもどん底。どん底オブどん底。

さらに、薬物をやっていた仲間と再会し、一度は断るも結局薬に手を出してしまい昏睡状態になる。

運ばれた先の病院で「今度こそ更生したいんだ」と、更生指導員の女性に泣きつく。
「聞き飽きた」と言いつつも、彼女は彼を見捨てはしなかった。


ジェームズ自身、「ぼくは恵まれていた」と語っていたが、ここからひとつひとつの出会いが更生に繋がっていく。

指導員の女性が、住む家を与えてくれたこと。
猫のボブが、生きる力を与えてくれたこと。
隣に住む女性が、恋する楽しさを与えてくれたこと。
ストリートでの弾き語りを聞きにきた人が、「ボブに贈り物を」と心を寄せてくれたこと。
「恐れ入りますが、写真を撮ってもいいですか?」と声をかけられたこと。

それまでは道を歩けば人に避けられていた。
それが、丁寧に声をかけられるなんて。どれだけ嬉しかったか。
失われていた自尊心にどれだけの光が戻ったか。

ひとは1人では生きられないし、一度どん底まで行ってしまったら余計に、誰かの力がないと這い上がれないんじゃないだろうか。

ひとつひとつの力は小さくとも、それがうまく重なれば、人は這い上がれる。
きっと彼の場合は、それが上手く重なったんだろうなって思う。

そしてそれは、ボブのおかげだ。


もちろん、ジェームズ自身の「更生したい」という強い気持ちがあってこそだけど、ボブがいなかったらどこかで投げやりになっていたかもしれない。

仕事がなくなったとき、家族からつらい言葉を投げられたとき、そして薬を断つとき。

ジェームズが一人だったら「もういいや別に」って、元の中毒者に戻っていたかもしれない。
でも「ボブがいるから」「ボブのために」そうやって、あと一歩、半歩のところで踏みとどまって乗り越えた。

自分のためにがんばるなんて、たかが知れてる。
誰かのため(たとえそれが人間だろうと動物であろうと)だと、頑張れる。
あと少しを頑張る力が出る。もう1日生きよう。そう思える。
ボブの存在が、ジェームズを救ったんだろう。きっと。

私自身、一緒に暮らしている4匹の猫に救われることはたくさんある。
大げさではなく、彼らがいるから死なずに済んだと言える。

もし、猫が一匹もいなかったら。
私は今日ここで生きてるかどうか、分からない。
それぐらい、支えになってくれている。感謝。


映画の最後、全てが報われた瞬間には、涙が止まらなかった。
本当に良かった。
ボブ、ありがとう。
ジェームズ、ありがとう。


そしてエンドロールに登場する、本物のジェームズとボブの写真にさらに涙。

↑本物のジェームズさんとボブ。いつも肩に乗ってるのマジでかわいい。うちも乗せたい。でかくて無理だったけど。


観終わってから知ったんだけど、映画に出てるボブは本物のボブだそう。
めちゃくちゃお利口でかわいい。素敵な茶トラの猫さん。

そして、なんとも悲しいことに、ボブは昨年亡くなったらしい。
すごい使命を果たしたね。ジェームズさんを救うために来たんだろうね。えらかったね。ちゃんと幸せだったかな。


猫が好きだからとなんとなく見たけれど、もっと深い何かを感じることができる映画だった。観て良かった。
でもサブタイトル的な「幸せのハイタッチ」は要らんと思う。

さあ、うちの猫を撫でてこよう。

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