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歳時記を旅する26〔竹皮を脱ぐ〕前*竹皮を脱ぐやいよいよ本降りに

土生 重次
(昭和六十三年作、『素足』)

京都の圓光寺の庭の奥に孟宗竹の林がある。
昔、円山応挙がこの竹林によく通っていたらしく、その竹林をモデルにして描いたとされる「雨竹風竹図屏風図」が堂内にある。
 左隻には、四方に広げた葉が風の存在を表し、右隻には、葉がしな垂れて雨を感じさせる。
ただ、一筋の風も一粒の雨も、描かれてはいない。
一本の筆の全体に淡墨、先端の部分に濃墨を含ませて、一筆で濃淡を表現する「付立て」という技法を用いているのだという。
本堂に腰掛けて耳を澄ましていると、風が吹けば竹のさざめきが、庭越しに聞こえてくる。
句は、竹が親竹になりつつある所に、夏の雨が降り注ぐ。
本降りになった雨が、若竹の肌を濡らし始めるところ。
瑞々しくもあり、艶めかしくもある。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和四年五月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」

写真/岡田 耕
   (圓光寺)

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