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歳時記を旅する27〔尺蠖〕後*遠く見るごとくに立ちて尺蠖虫

磯村 光生
(平成八年作、『花扇』)

 シャクトリムシにも各種の方言がある。その中で有名なものに「土瓶割り」がある。
三重県松阪市には、その名の謂れがおばあちゃんの昔話として語り継がれている。
「あれは昔/桑畑/蚕さんを飼うさぁ/桑をさぁ/作るおったん/桑の畑/桑の畑に草取りに行ってな/昔は水筒なんかあらへんだで/土瓶を下げて行って/ほいで適当なええ枝があったもんで/そこへ土瓶掛けるっていうてな/掛けたら尺取り虫やって/ほんで落として土瓶が割れるっちゅうんでな/「土瓶割り」っちゅう名前がついたんやって」(三重県小学校国語教育研究会/編『読みがたり 三重のむかし話』日本標準 2004年)

 句は、「土瓶割り」となって敵の目をくらましている姿。敵である鳥が来ないか、見張っているようでもある。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和四年六月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)


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