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歳時記を旅する5〔芋の葉の露〕前*芋の葉の後生大事の露ひとつ

 土生 重次
(昭和五十五年作、『歴巡』)

 里芋は別名「露取草」ともいう。
室町時代の連歌用語辞書の『藻塩草』(宗碩著一五一三年頃)には、「露取り草とは、棚機(たなばた)の歌を書付るに、芋の葉の露にて書也」との記録が見える。

後の『増補俳諧歳時記栞草』(曲亭馬琴編 一八五一年発行 岩波文庫)には「芋の葉の露」が独立した秋の季語として掲載されている。

ここでいう室町時代の棚機とは、宮中の行事として、旧暦七月七日の夜に庭に供え物をして、牽牛・織女の二星を祀り、梶の葉に歌を書いて供えていたというもの。

句の後生大事とは、もとは仏教で来世の安楽を願ってひたすら善行を積んで仏道に励むこという。はかない露であっても大切にされている。棚機のためであればなおのこと。

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和二年八月号「風の軌跡―重次俳句の系譜」)

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