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「あめんぼ」に託した白秋の想い
【スキ御礼】「歳時記を旅する16〔水馬〕中*流さるるたびに戻りてあめんぼう」
大正時代の教育界の特徴に芸術教育運動がある。明治期の公教育を批判し、子どもの 個性や創造性、自発性の尊重をめざしたものだった。
文学の分野では、北原白秋は民間人として、その精神を童謡の創作で表した。
童謡集『祭の笛』に「学問のうた」と題される童謡群の「言葉」「五十音」「歌へよ子供」「おうた」「数学」などがそれにあたる。
当時の小学校教育は、入学当初から「ハナ、ハト、マメ、マス」などの文字を教えていた。
白秋は、小学校ではまず、音を教え、言葉を教え、語ること、歌うことを誘導すべきで、文字を教えるのは二学期以降でよいのだと主張した。
綴方は私の「言葉」の如く言葉の一々を鮮美な生物として本質的に知覚させ、「五十音」の如く、音の精神とその一々の個性に就いて、歌ひ乍らに悟らせ、「おうた」「歌へよ子供」の如く児童を自然の詩そのものと合致させ、自由に飛び跳ね歌ひ跳ねさして欲しいのである。
岩波書店1986年(太字は筆者)
童謡「言葉」には、言葉の本質を知覚させようとする試みがある。
言葉
(第二聯)
言葉は跳ねる、
つまめば逃げる、
てんと虫のやうに。
水馬のやうに、
ひィとつひィとつ跳ねる。
童謡「五十音」(通称「あめんぼの歌」)は、音そのものの感覚的本質を伝えようとする試みがある。
五十音
(第一聯)
水馬赤いな。ア、イ、ウ、エ、オ。
浮藻に小蝦もおよいでる。
「言葉」の中で、アメンボは跳ねる言葉の象徴として使われている。
その使命を受けてなのか「五十音」では、ア行の先頭に置かれている。
アメンボが水面をすいすいと自由に飛び跳ねて泳ぐ姿に、目指すべき児童の姿を重ね合わせているようだ。
「五十音」は、今日では白秋の当時の想いが叶ったのかどうか、発音トレーニングに活用されている。
フリーアナウンサー三島澄恵 さんがトレーニングの動画を投稿されています。
ご一緒にどうぞ!
(岡田 耕)
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