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歳時記を旅する4〔夜の秋〕前*竹林に風のはなれず夜の秋
土生 重次
(昭和五十八年作、『扉』)
中国の南宋の詩人、楊万里(一一二七~一二〇六)は、『夏夜追涼』で、「夜熱依然午熱同/開門小立月明中/竹深樹密虫鳴処/時有微涼不是風」と詠む。
夜の暑さと言ったらまだまだ昼と同じで、門を出てしばらく佇む、月明かりの中、竹はうっそうと樹は濃く茂り虫が鳴いた。その時ふっと涼しくなった 風も無いのに・・と。
晩夏の夜など、虫の音も聞こえ始めて、秋のように感じることを「夜の秋」として夏の季語と定めたのは、「ホトトギス」雑詠選者の虚子だとされている。
句の竹林では、竹が風に揺すられているのだが、こちらにはいつまで経っても風が吹いてこない。音もなく揺れる竹の林に秋の気配を感じた。
(岡田 耕)
(俳句雑誌『風友』「風の軌跡―重次俳句の系譜」令和二年七月号)
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