妻が「薔薇」だということは
【スキ御礼】歳時記を旅する50〔薔薇〕前*ことごとく刺す意あらはに薔薇の棘
童話『星の王子さま』で、王子様がいたという星は、家ほどの大きさだった。そこにある一本のバラは、妻のコンスエロ・ド・サン=テグジュペリがモデルになっているという。
ということは、話の中の「家ほどの大きさの星」とは、作者にとって妻のいる家庭が「星のような家」だったということなのだろう。
二人の現実の家庭が一つの星のようだった、ということはコンスエロの言葉にも見て取れる。
著者アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリは、連合軍の偵察部隊のパイロットとして、1944年7月31日、フランス内陸部の写真偵察のため、出撃後帰還せず、消息不明となる。
その一か月前の6月29日の彼の誕生日に、妻のコンスエロがサン=テグジュペリに手紙を書いている。(原文はフランス語)
『星の王子さま』はこの手紙が書かれた前年に出版されている。
この手紙を書く時点で、妻コンスエロは作品『星の王子さま』を知っていると思われる。
手紙の後半、妻コンスエロは、地球上ではないところに、「私の世界」を持っている。夫のサン=テグジュペリは、その世界の中で「植物が土に生えているように」妻に愛されている。
地球上ではないコンスエロの「私の世界」は、きっとどこかの星で、そこには夫サン=テグジュペリが植物のようにそこにいる。
妻コンスエロが美しい薔薇に喩えられたならば、コンスエロの世界、地球ではないどこかの星の中にいる夫サン=テグジュペリは、妻からどんな植物に喩えられるのだろうか、と思う。
二人は今、きっとどこかの星で王子様と王女様となって幸せに暮らしているに違いない。
(岡田 耕)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?