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「モネ」がもっと好きになる

昨年、京セラ美術館のグッズコーナーで原田マハさんのこの本が目に止まって購入した。外出や旅行の際には必ず本を一冊持って行く私が、たまたま京都旅行に本を持ってくるのを忘れてそわそわした気持ちになっていたこともあったからだ。東京でも買えるよね?て一瞬思ったけど、買ってよかった。おかげで鴨川で読書ができたし、やはりいつだって本は必要なんだ。

原田マハさんの本はいろんな美術館に置いてあって、美術系のエッセイや小説を書かれている人だとは認識していた。作品を鑑賞するだけではなく、今亡きアーティストの日々に鮮やかに触れられることがとても新鮮で、より美術が身近に感じられて素敵な本だった。もちろん特定の作品への理解も深まる。

クロードモネの人気について、つい先日まで上野の森美術館で「モネ 連作の情景」が開催されていたのだけど、私は最終日にギリギリ滑り込みセーフでかけつけた。しかし、11時頃に到着したらチケットの列で2時間待ち。しかも入場できるのは午後3時以降。私ディズニーランドに来たのかな?と一瞬錯覚をおこした。日曜日と言えど最終日にもかかわらずこの集客ぶり。正直、モネがこんなにも人気だとは知らなかった。恐るべしモネ!と衝撃を受けたため長蛇の列は諦めて、結局鑑賞できずで終わった。

私もモネ好きのひとりとしては睡蓮が好き!とか柔らかな絵のタッチが好き!とか色々あるけど、この本を読んでモネという「人物」が好きになった。「庭をこよなく愛す素敵なおじいちゃん」みたいな印象は元々あったのだけど、パトロンの奥さんと測らずも恋に落ち、その子供たちやもちろん自分の子供たちの為にも、大きな責任を背負って絵を描き続けたこと。複雑な大家族を心から大切にしていたことがとても印象的だった。

山ほどの苦しいこと、涙が涸れるほど泣いたこと、幸せで胸がいっぱいになったこと———が、モネ一家の歴史をペルシャ絨毯のように彩り豊かに織り上げていた。

「ジヴェルニーの食卓」より

私はモネの晩年の過ごし方がとても素敵だと思う。毎日、新鮮な野菜で作られた料理を食べて、自慢の庭を愛でる毎日。幸せの定義は人それぞれだけど、私にとっての理想の過ごし方はこれだ!と思った。袖口にレースがついたシャツに、青の花柄のカフスを合わせるお洒落さも持ち合わせているモネ。私も数十年後は周りにお気に入りの物を揃えて、緑のある穏やかな空間で過ごしたいなと思う。美味しい料理も毎日食べたい。

そしてアーティストならではなのか、どこか気分屋でわがままな一面もある。現に義理娘のブランシュと元大統領のクレマンソーはモネに気を遣い、振り回されている。しかし、それは本人たちが望んでそのようにしている気もした。それはモネが愛されているからこそなのだろうし、できる限りサポートしてあげたいと周りが思うのはモネの暖かさや優しさがそうさせているんだろうな、と思う。

フィクションとノンフィクションの間にあるなんとも不思議な小説だけど、間違いなく私はもっとモネが好きになった。いつの日か、モネ最後の大作である睡蓮の壁画をオランジュリー美術館へ観に行きたい。


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